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匂いフェチ

 エレベーターで5階に上がり、右も左もガラスの長い通路を抜けて、夕食会場だ。


 その少し手前に、お土産屋さんを発見。


「お、ちょっと待った」


 僕は立ち止まるが、稲城は速度を変えないまま、


「先行って席座ってる」


 と言い残して通路の先へと行った。座りたすぎな稲城。疲れてるんだろうな。



 僕はお土産屋さんの中に入ってみる。店員さんはいない。レジのあたりに呼び鈴があるのかな。


 僕の目当てはぬいぐるみ。


 お、さっそく可愛いぬいぐるみを発見。おお、これは、明太子を抱えるカワウソのぬいぐるみだな。可愛すぎて明太子をラッコが食べるのが目に浮かぶ。本当に食べるかは知らないけど。あれ……、これ、手作りか……? 


 僕は、カワウソのぬいぐるみを近づけて、縫い目とかを観察する。


「ねえ、私のぬいぐるみの匂いかがないでくんない、キモいから」


「あ、ごめんなさい……」


 どうやら店員に怒られたようだ。で、見てみれば……店員が若い。中学生くらいかな。大きなぬいぐるみ素材のモフモフの髪留め。


「それ買うつもりあんの?」


「買おうかな……というか、このぬいぐるみ、作ったのって……」


「私だけど。キモい」


「なんでキモいって最後につけ加えた……」


「だって、そのぬいぐるみの匂いと私の匂いを比べたいんでしょ」


「そんなことしたくないけど……」


「じゃあなんで、ぬいぐるみを手に取ってんの? しかも鼻に近づけてさ」


「それは……ぬいぐるみがすきだから」


 僕がそう言うと、店員?の女の子は、


「あ、あ、あ!」


 と三段階でだんだん強くなる「あ」を発した。


「もしかして、ぬいぐるみ部の人?」


「そう、だよ」


 あれ?なんで福岡の人が知ってるんだ? この人ほんとに福岡の人なのかな……博多弁? かなにかを感じないし。


 でも東京の人だってぬいぐるみ部なんて知らないだろう。なんで知ってるんだろう?


「……あら、もしかして、ぬいぐるみ部の方ともうお友達になれたの? よかったじゃない」


と、ここで、店員? と似ている控えめな色の着物を着た女性がお土産やさんに入ってきた。


「お母さん! ちょっとこのキモい……」


「この子ね、ぬいぐるみ部なんて部活に入っている人たちが来るって楽しみにしててね……」


 店員? のお母さん? が上品さと穏やかさの中に嬉しさを混ぜて話す。


「たいしてしてないよ! しかも、ふたを開けたらキモい匂いフェチだった!」


「……」


 なんで匂いフェチだと思っちゃうんだよ……。


 困った。美雨か美濃来て~! さすがに美雨と美濃なら誤解なく友達になれるでしょ。

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