タワー
「結局近いところに来てんじゃないかよ」
僕がそう呟いている間に、美濃と美雨は双眼鏡のところへ行っていた。
稲城はどこかに消えた。エレベーターに一緒に乗ったかも怪しい。
僕たちは、福岡タワーに来ていた。
高さは234メートルらしい。東京スカイツリーより低いし東京タワーよりも低いけど、海辺にあるから、眺めは抜群だった。
天気がいいのですごい海が綺麗だ。高いところから砂浜を見下ろせるので、カモメにでもなった気分だ。
しかし人が多かったので、僕はしばらく景色を眺めたあと、窓際から退散した。
椅子が置いてあるところの近くをぶらぶらしていると、なんか色々割引券が付いているものを発見。とりあえずもらっておくか。
「ねえ、写真撮ってください。美雨ちゃんと優くん二人の写真も撮ってあげますから」
チラシをポケットにしまっていると、いつの間に美濃が来ていた。
「ああ……いいよ」
僕は美濃からスマホを受け取り、パスワード未解除でカメラを立ち上げる。
「はい……」
カシャカシャカシャカシャ。
「あ、連写しちゃった」
「いきなりとる上に連写とかないですね。私は少しでも背が高くて胸が大きく見えるポーズをとるので、その準備が終わるまで待っててください優くん」
「……」
どうせ頑張ったって美雨よりも圧倒的に小さいし、写真撮るのに手間取ってると周りの人に迷惑なんだけどな……。
仕方がないので少し待つ。
そして、すごく威張ってる感じの美濃と、普通に立っている美雨を撮る。
ほら、時間かかったから、さすがにこのあと僕と美雨で撮るとかできない雰囲気じゃん。
まあ……まだ色々行く予定だし、いいや。僕は笑顔で画面に収まった美雨と美濃を眺めて、そう思った。
美濃にスマホを返した直後に気づいた。稲城がいないのなんとかしないと。
僕は稲城にメッセージを送ってみた。
『どこいる?』
『かなり大きいぞこの図書館』
『?』
タワーの中に図書館があるのか? 謎多きタワーすぎてわからない。
『タワーから南に歩くとあるぞ。福岡市総合図書館』
『おい、タワーの外出てんじゃないかよ』
『羽有たちと一緒に登って、それから景色も見たからな。すぐ降りただけだ』
稲城、修学旅行をすっぽかして図書室にいるということはなかったものの、来たって結局図書館に行くのなら変わらないじゃんかよ。
『しょうがないな。お昼はタワー下のレストランで多分食べるから、ぼちぼち戻って来て』
僕はそう送って、改めて海を眺めた。
この景色から早々におさらばして図書館に行く稲城の気持ちは、ほんとよくわからないな。




