意外とつくまで長い
「え~まだ京都ですか? これいつ博多につくんですか? 新幹線ちょこちょこ止まりすぎじゃないですか?」
美濃は、新幹線の小さな窓から停車中のホームを見て言った。
はじめはもう静岡県~とか言ってたくせに。
でも確かに予想以上に博多は遠いみたいだ。気が付けば、美雨は背もたれにほっぺを押し付けて少し口を開けて寝ていた。新幹線で超リラックス美雨……これは結構かわいい。できたら座席の隙間からじゃなくて隣で見たかった。開いた口にポッキー入れてみたい。
美濃は
「優くんにこんなかわいい寝顔見られたって知ったらあとで恥ずかしがりそうですね美雨」
と言いながらスマホでゲームを始めた。
「何やってるとこ?」
「オセロです。このコンピューター強すぎて負けてばっかりなので優くんやりませんか?」
「いいよ」
結局大富豪では、美濃に大きく負け越したからな。振り返れば美濃、毎回革命とか2三枚とか、すごい事ばっかりしてたからな。カード運が良すぎ。
しかし、オセロは運要素はほぼなし。
それに、僕はオセロが……強いかもしれない。この前やまねに負けたけど……結構本気でやって。まあ美濃も小学生みたいなもんだし、いける。
「先手どうぞ」
美濃からスマホを渡される。
「ありがと」
正直オセロは先手が有利なのか不利なのかよくわからない。まあいい。はじめの方は特に考えることもないだろ。僕はぽちっと押して美濃にスマホを返した。
美濃も同じことを考えてるのか、美濃もすぐに僕にスマホを渡してくる。
お互い速いテンポでゲームは進み、なんとなく両者に違いが見えてきた。美濃は端をどんどんとっていく派で、僕は自分が置けるところを多く残せるよう頑張る派? あんまりよくわからないが、相手に角を取られないことがオセロでは大事だしな。
「……はい」
美濃が僕に渡してきた。今まで無言だったのに今わざわざ「はい」って言ってきたってことは……。
やはりか。美濃を見ると勝ち誇ったような、珍しく自分より胸の小さな人を見つけたような顔をしていた。まあ、そりゃあ、たぶん、美濃より僕の方が胸は小さいと思うけど、オセロの勝敗はどうかな……?
僕は美濃のスマホの画面を見てみる。
……あれ? どこに置いても、美濃に角を取られる。
「……」
「優くん早くしてください」
「く、美濃うまいな」
「はい、角ゲットです」
美濃が角をぽちっと押してすぐ僕に返す。まだわからない。角を取られたからって負けるわけじゃないからな。
結果、僕の惨敗だった。10個と54個。ぱっと見大体白……。
「圧勝でしたね!」
ご機嫌になった美濃はカバンからお菓子を出して食べ始める。
と、その時、わずかに、美雨が動き……。
「私にも、半分ちょうだい……」
目は閉じているのにそんなことを言ってきた。寝てるのにお菓子の匂いに気づく美雨。空港の探知犬か何かかな?
お読みいただきありがとうございます。
小学生三人の話の方は今割とキリがいいので、よろしければ読んでみてください。
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