修学旅行前日
修学旅行前日。ぬいぐるみ部と、小学生三人は、音楽室楽器置き場裏に集合していた。
「いってらっしゃいー、みんな」
「うゆゆとみうみうとみつばちといなぎんとしずくちゃんがいない間は、私たちがぬいぐるみ劇をやるからね〜」
りすが自信たっぷりに、自分たちの作ったぬいぐるみを見せる。
僕たちがいない間、児童館でのぬいぐるみ劇は小学生三人がやってくれることになった。だいたいいつもお客さんは小一か小二なので、小三でもお姉さんなのだ。
ぬいぐるみ劇の話は修学旅行から帰ってきてからにでもしよう。
ちなみに、渚ヶ丘学園では、この時期に全学年が同時に旅行に行く。
つまり大野さんも行くわけだ。
大野さんたち中二は京都に行く。
一方僕たち高二は……福岡のあたり。
「もしかしたらどこかの観光名所で会うかもしれませんね、ゆー先輩」
と言っている大野さんは中国地方の存在を忘れてる気がするけど、中学受験をしてるはずだし多分大丈夫なはず。
「みんなにお土産買ってくるからね」
僕は小学生三人に言った。
「楽しみだなー」
「めんたいこかな」
「なんだろうね」
そう言って喜んでくれる三人にも、もうすぐなぎさこどもまつりというイベントがやってくる。いやこれ言うの二度目だと思うけど行きたかったな……。
「で……私たちは同じ班な訳だから。優とか突然ぬいぐるみを抱えた女の子追いかけてはぐれたりしないようにね」
美雨がそう言った。美雨の言う通り、美雨と美濃と稲城と僕で行動班のできあがり。
どうしてこうなったのかといえば、クラスで班を作りましょうってなったときに、ぬいぐるみ作りをして隅っこにいた僕たちが固められたからだ。ああ、稲城はいなかったから流れで僕たちの班になった。
ちなみに、部屋の方は稲城とあと変人しかいない。正直つらそう。
しかし、かなり楽しみである。そもそも僕は九州初上陸だし。
中学の時の修学旅行は、部屋でぬいぐるみを作っていたら終わった気がするので、今回はもっといい思い出が作れたらいいな。
僕は、修学旅行前の最後の部活の時間を、そんなことを考えながらぬいぐるみを作って過ごした。




