表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/46

JS名探偵のえりか


「私、わかるよ。その女の子の気持ち」


「え?」


 放課後。JS名探偵が誕生した? かもしれない。


 えりかがそう言ったのだ。


 大野さんから話を聞いた、美雨と美濃、そしてりすとやまねも、なぜぬいぐるみを受け取ってもらえなかったのか、不思議に思っている感じだった。


 でも、えりかはわかったみたいだった。


「なんか、すこし、探偵になった気分だよ」


「えりかちゃんすごいー」


「虫めがねがあれば雰囲気出たね〜高校にも理科室にあるのかな〜?」


「虫めがねはあるか微妙だな……」


「あの、それでえりかちゃん、謎解きを」


 美雨がすごい聞きたそうに言う。ちなみに、今日はそこまでJSを呼んだことについてはぐちぐち言われなかった。


「謎解きって言うほどでもないよ。私も同じことを思ったことがあるだけ。うゆゆの、ランドセルを背負ったうみがめさんのぬいぐるみをもらった時」


「え? でもあれは、えりかが大切にしてくれていて……」


「うん。今は大切だよ。でも、初めはちょっと嫌だった。だって羨ましいから。ピンクのランドセルを背負ってて」


 えりかが大切にしてくれているぬいぐるみの中に、ランドセルを背負ったうみがめがある。それは去年の文化祭で、えりかのお母さんが入院中のえりかに買ったものだ。


 えりかが、初めはそのぬいぐるみに、そんな感情を抱いていたなんて、初めて知った。


「自分が学校に行けないのに、ランドセルを背負ったぬいぐるみを見ると、羨ましくなって嫌になっちゃう。でも、いつか、ぬいぐるみみたいにランドセルを背負いたいとも思ったよ」


「……」


 僕の中で答えが見えてきた。みんなもそうだと思う。どうして大野さんのぬいぐるみは受け取ってもらえなかったのか。それは、謎でもないし、えりかの言う通り謎解きをしないと分からないことでもない。


「……ベッドから起き上がれないその女の子はきっと、そのうさぎさんたちがずるいと思ったんだと思う。自分は外で遊べないのに、青空の下で元気にうさぎさんたちは、じゃれあっているから」


 えりかが静かに答えを言い、狭い音楽室楽器置き場裏は、お互いの距離は近いのに、静かな空間になる。


 そうだ。二匹のうさぎがじゃれあっている。きっと青空の下で。目が青くなるのは青い空が瞳に映っているからだ。きっと、その女の子はそう考えたんだ。


 僕の趣味はぬいぐるみ作りだ。たくさんの人の宝物になるようなぬいぐるみを作るのが目標だ。


 だから……僕は今日、ぬいぐるみを作る上で大切なことを知ったと思う。


 相手はそのぬいぐるみを見てどんなことを考えるか。


 それを考えないといけない。


 そうしないと、自分が心を込めていても、いくらぬいぐるみコンクールで入賞するようなクオリティでも。


 ぬいぐるみのこめた想いは伝わらないことがある。


「……今度、また病院にボランティアに行くんです。私そのとき、その女の子と一緒に、ぬいぐるみを作ろうと思います。その女の子が作りたいぬいぐるみを一緒に作るんです」


 大野さんは真面目な顔で言った。本当に真面目だった。今日は縞パンは、見えなかった。


お読みいただきありがとうございます。


もう少しで話がひと段落します。


その後の話については、今のところ、修学旅行について書く予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ