表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

親友とバレンタイン(理央)

書きさしだったのを書き上げたけど、バレンタインとか全然関係ない時期になっちゃった……


最後のあたりの加筆をメインに書き上げました。

 「今日は何の日か知ってる?」


 後ろから理央の声が聞こえる。でもなぜか、振り返ることができない。


 だからそのまま返事をする。


 「バレンタインだろ」


 「せいか~い! なら、私があげるプレゼント、わかる?」


 「バレンタインといえばチョコだろ」


 「またまたせいか~い! じゃあ、こっち向いて?」


 その声に引き寄せられるように向くと、そこには首から下をチョコでコーティングされた理央が。


 裸体の上からコーティングしたのか、大きな胸はチョコ色で。


 そしてその先にはチョコ色の出っ張りまで見える。


 そのまま下を向いていくと、つるつるな股間。


 そこもチョコでコーティングされていて。


 さすがに谷は無いけれど、丘があるのがはっきりとわかる。


 ゴクリ。


 そこから目が離せない俺に、理央は耳元でそっとささやいてくる。


 「今日は、私がプレゼント、だよ? 食べて?」


 そんなことを言われては、もう我慢できない。さっそく胸の出っ張りに吸い付き……





 そこで目が覚めた。


 うん、そうだよね夢だよね。


 理央は私なんて言わないし、全体的におかしいなと思ったんだ。


 そもそも俺は理央の裸見たこと無い。


 それなのに想像できる俺エロいな。




 夢の内容を忘れないよう、思い出しつつ脳内に再インプット。


 なんでこんな夢を見ちゃったかなー、いや、嬉しいけれど! と思いつつ現状を確認。


 うん、布団から理央の残り香がする。


 昨日、放課後に用事があって理央を先に帰らしていたんだけど、帰ってきたら理央が俺の布団の中でくるまってたんだよな。




 しかしこの前も寝ていたけれど、驚かそうと隠れているうちに眠っちゃうとかお子様だな!


 そんなわけで理央の残り香が残っていたから、変な、いや素敵な夢が見られたのだろう。


 ならば今度も良い夢が見られるように、理央にはまた俺の布団で寝てもらうか? 


 そうなれば、俺の布団で眠って貰うための方法を考えなきゃいけないな。




 なんて考えていたら。もう登校する時間。


 普段ならもう少し遅くても良いのだけれど、なんせ今日はバレンタインデー。


 小中学校の時は下駄箱にはチョコが一杯で、廊下を歩いていたらどんどん渡されていた思い出がある。


 高校に入ってからは初めてだけれど、何かがあっても良いように今日は早く登校する。


 うぬぼれだと言ってもいい。何も無ければそれに越したことはないのだから。


 それにあったとしたら、つきあえない代わりに気持ちだけでも受け取ってあげたい。


 正直理央から貰えればそれ以外はいらないけれど。




 そんなことを考えつつ学校に行ってみると、案の定というか、下駄箱には一杯のチョコレート。


 それを持参した紙袋に詰めて教室へ向かう。


 教室に向かう途中、何人もの女子生徒からチョコレートを手渡された。


 そして言われる、好きでした、という告白。


 俺には理央がいるから、と断ると、ですよね、理央とお幸せに! と言われる。


 一年近く離れずに一緒に居たから、俺と理央は付き合っていると認識されているらしい。


 まあ実際には付き合っていないけれど。そればかりは理央の気持ち次第。




 なんだかんだで教室にたどり着くころには紙袋が一杯になり。


 そして教室に入ってみれば、俺の机のあるところには、山のような影が。


 ……あれ、もしかして全部チョコ?




 ……うん、全部チョコだった。


 俺が登校したことにに気付いたクラスメイト達は、モテモテだねーなんて囃してくるが、俺が欲しいのはただ一つだけ。


 それを伝えると、わかってはいるけど羨ましい! なんて言われてしまう。


 「全部は食べられないし、放課後にみんなで一緒に食べないか? 中学校の時は一欠片ずつ貰って残りは男女の隔てなく分けてたんだ」と伝えると、喜んで! という返事。


 まあ、女の子の中には顔をしかめている子も居るけれど。


 気持ちはわかるけど、こんなに食べたら糖尿病まっしぐら。


 だから分けるのは許してほしい。




 授業中にこんな山があっても困るし、机の上のチョコも新しい紙袋に入れていく。


 入れる。入れる。どんどん入れる。


 ……おいおい、空だった袋が一瞬で一杯になるとか。


 どれだけ机の上に積んでたんだ。


 それでも紙袋に入れきることができて、ほっとしていると。


 「おはよう!」


 今一番聞きたい声の持ち主の、元気な挨拶が背後から聞こえてきた。


 振り返ると目の前に理央の顔。不意打ちにドキっとしてしまう。


 そんな俺の気持ちに気づくことなんてなく、


 「あれ、それは?」


 なんて無邪気に聞いてくる理央。


 「これ? 教室に来るまでに渡されたチョコだよ」


 ドキドキを気づかれないようにと考えるあまり、ついぶっきらぼうに返事してしまう。けれど、理央は


 「いよっ! モテモテ!」


 なんて言ってきた。


 嫉妬されなくて良かったけれど。でも嫉妬されないのもそれはそれで気にくわない感じがしてしまうね。


 それはさておき、やっぱり一番欲しいのは好きな子からのチョコ。


 好きな子からなら本命じゃ無くたって良い。


 いや、本命であってほしいけれど、せめて友チョコでも良いから欲しい。


 くれ! という気持ちを込めてチラチラと理央の様子をうかがっていたけれど、理央は俺の視線をスルーし、いつものような無駄話をすることも無くそそくさと自分の席へと歩いて行った。


 ま、まあ理央だし、女子になって初のバレンタインだから、チョコのことなんて忘れてたんだろう。悲しくなんか無いもんね!




 昼休み。いつものように里央と食べる。昼休みは二人で食べることが多く、今日も二人で食べていた。


 さて、今は二人だから、チョコを渡すなら今だぞ! 購買にだってチョコは売っている。手作りなんて贅沢言わないから、購買のチョコでいいからくれ!


 そう願いながら一緒に食べたのだけれど、いつもと同じような感じで時間は過ぎ、チョコなんてもらうことはなかった。


 、 


 理央から貰えなかったことが思った以上に残念で落ち込んでいたのか。気がついたら、もう放課後。


 周りにクラスメイトが集まっていた。


 そういえばチョコをみんなで食べようって言ったっけ。




 「名前を控えてから一欠片ずつ貰っていくから、残りは皆で分けてくれ」


 と、名前を控えては一欠片ずつ食べていっていたんだけれど、いつの間にか名前を控える人、包装を外す人、チョコをつまむ俺、チョコを配っていく人といつの間にか役割分担が出来ていた。


 さすが一年を過ごしたクラスメイト。話し合わずとも、あうんの呼吸で行動できている。


 チョコレートは、下駄箱や机にあったものにはもちろん、直接渡されたものにも名前が書かれていた。


 直接渡されたものはできるだけ覚えているつもりではあるけれど、名前を書いてくれているとわかりやすくてありがたい。 


 できるだけ顔を思い出しつつ食べていった。




 「食べ切れました。お疲れ様! そして手伝ってくれてありがとう!」と締めの言葉を発して、さて理央と帰ろう、と周りを見回すも、理央は見当たらない。


 「理央を知らないか?」


 と包装を外してくれていた娘に聞いてみると、


 「理央ちゃんなら、放課後になったとたん、急いで帰っていったよ。悲愴な顔してた気もする。まあ彼氏さんがチョコを食べている所なんて見たくないだろうし仕方ないかなって……」


 悲愴な顔という言葉に愕然として、それ以降のことは耳に入ってこなかった。




 なんということだ、そういえば朝からアイツの様子はいつもと違っていた。


 昼休みも理央と一緒に食べたけれど、俺はもしかしたらお昼にチャンスがあるのかも! と勝手にドキドキしており、そんな理央の様子を気遣ってやれなかった。そんなことはなかったので、午後も勝手に落ち込んでいたし、放課後に勝手に帰っていたのさえ気がつかなかった。



 なんということだ。理央のことを大事に思っておきながら、チョコを貰える貰えないと些細なことで理央のことを見落としてしまうなんて。



 それも悲愴な顔をしてただって!?


  そりゃ今まで一緒に付き添ってくれていた親友が見知らぬ他人のチョコにうつつを抜かして自分のことを見捨ててたりしたら、そんな顔もするだろうさ!



 俺が見捨てるなんてことは無いけれど、受け取り手がどう思うかは別。



 絶望して早まった行為になんか出るなよ! と願いつつ、かばんなど荷物になりそうなものは席に残して、とにかく理央の家へと走った。






 


 この時間だと理央の親は居ない。


 何年も親友として交流していたし、お互いの家を行き来していた仲だ。それくらいは知っている。


 玄関に飛び込み、「理央!」と叫ぶが返事は無い。


 くそ、遅かったか!?




 まずは行き慣れた理央の部屋から覗いてみる。


 いた。でもベッドで倒れている。


 先ほどの大声に返事が無かったわけだし、不安が心の中に広がる。


 「おい、大丈夫か!」


 そう呼び掛け、ゆさゆさと揺する。


 大丈夫だ、まだ温かい。そして呼吸音もする。


 しかし、俺が焦っているからそう感じるだけなのだろうか、呼吸がずいぶんゆっくりに感じる。


 それに焦ってしまい、つい大声が出てしまう。


 「おい、返事しろよ!」




 と、その声に反応したのか、


 「何だよ……」


 という声とともに理央の目が開いた。よかった、生きてた。


 目を開けた理央は動こうとして手を滑らせたのか、ベッドから落ちてしまった。


 あたた…… なんて言いつつこちらを見た理央は、


 「ど、どうしたんだよ、そんな顔して」


 なんて言ってきたけれど、自分がどんな顔しているのなんてわからない。


 しかしベッドから落ちちゃうなんて、からだが動かしにくくなる何かがあったのかもしれない。


 先ほど呼吸がゆっくりだった気がするし、睡眠薬を大量摂取したとかじゃないだろうな!?


 昔、美少女になったばかりの頃は不安から睡眠薬を処方して貰っていたらしいし、それがまだ残っててもおかしくない。


 最近の睡眠薬は大量に飲んだところで死にはしないらしいが、何らかの影響があってもおかしくない。


 そんなことを考えていたので、


 「大丈夫か? 睡眠薬か何か飲んだのか? 何かあったらオレに頼ってくれよ!」


 と必死に訴えた。


 だが理央はきょとんとしており、俺の言っていることが理解できてないらしい。


 あれか!? 睡眠薬の影響か!?


 自分で自分が制御できず半狂乱に。


 気がついたら俺は理央に抱きついていて、頭を撫でられていた。


 「どうしたのさ? 何があったか教えてくれない?」


 なんて今まで見たことの無いような優しい微笑みで言われ、朝からの今までのことを主観を交えつつ話すのだった。





 「バカだなあ、オレが自殺なんてするわけないじゃん。拓人に助けられたんだからさ。拓人に心配かけるようなことはしないよ」


 そんな風にケラケラ笑う里央。ちくしょう、俺は本当に心配したんだぞ!


 それに今朝の様子とか、わりと不審だったぞ?


 そんなことを真剣に問い詰めたんだけれど。


 「えーっと、まあ、なんでもないよ」


 なんて、目をそらして曖昧な返事をしてくる始末。


 でも、思うところあってこちらを見れないと言うより、何か気になるモノがあるって感じで机の上の箱ををチラチラ見ている。うーむ、あれが原因か?


 「これが何か関係あるのか?」


 なんて言いつつ、箱に手を伸ばす。


 「そ、それは何も関係ないから!」


 なんて必死な声で言ってくる。いやいや、それは関係あるって言ってるようなものだろ。


 「そんな必死な声で言うとは、怪しいなあ。なんなんだい? これは」


 取り返そうとする里央を交わしつつ、原因であろう箱を取り上げる。


 なになに、なにか文字が書いてあるな。


 「えーっと、拓人へ? つまり俺宛なのか」


 こ、これはまさか、今日一日中望み欲していた、里央からのチョコレート?


 期待に胸を膨らませつつ開封する。


 箱の中には、ちょっといびつなハート型。


 こんないびつなのが市販品なわけがない。


 つまり、これは夢にまで見た手作りチョコ……!?


 俺が嬉しさのあまりどうしていいかわからずに固まっていると、 


 「なんだよ! 一つもチョコ貰えないなんて寂しいだろうと思って作ってやっただけだよ! いくつも貰っているんだから良いだろ! 返せよ!」


 なんて言って取り返そうとしてきたので、返してはならぬと里央の手が届かないよう、頭の上に持ち上げる。身長差あるからジャンプしようと届かないぞ。


 「手作りってことは本命?」


 ちょっと期待しつつ、聞いてみる。


 と、ぴょんぴょんしていた里央が固まり、顔がみるみる赤くなっている。


 「そ、そんなつもりで作ったんじゃ無いし! 友チョコのつもりだったし!」


 赤い顔でそう言ってくるので、


 「それでも手作りしようかなってくらいには大事に思ってくれたんだ」


 と嬉しさのあまり発言したところ。


 「そうだよ大事に思ってるから手作りしたんだよ! わかったら帰れよ!」


 真っ赤な顔で追い出された。




 追い出されたので、素直に家へ帰る。


 「ただいまー」なんてあいさつもそこそこに、部屋に飛び込み、チョコを眺める。


 いびつな形といい、不均一な厚さといい、手作り感がすごい。


 これを好きな子が作ってくれたというのだから、感慨もひとしお。


 正直神棚に飾っていたいけれど、食べないのはそれはそれで失礼だし……


 一時間ほど悩んだ結果、数日にわけて食べることにした。


 とはいえ、縦に割ったら失恋みたいでよろしくない。


 なので、横に4つくらいに割って、4日間駆けて食べることにした。


 まずはハートの先端部分。


 手作りとはいえ、普通のチョコの味。


 でも、込められた思いは感じることができて、嬉しさで涙が出てきた。


 そのまま晩ご飯で呼ばれるまで、感慨に浸っていたのだった。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ