第8話 初めての街[アカアシ] ③
町の名前を変えました。
(エグリサ)→アカアシ
気がついたら、空を見ていた。何処までも澄み切った青い空……というのが普通なのかもしれないが、何故か空は紫がかっている気がする。
いつから空を見上げているのか…どうやら目をやられてしまったようだ。
「××××……?」
何処かから声をかけられる。その声は浮世離れした…と言うのが正しいような、何処までも通るような繊細な声…という感じなのか……とにかく不思議な声だ。
やはり夢なのだろうか、一人称視点であるにも関わらず体が勝手に動き、声の主へと向き直る。
どうやらここは何処かの草原のようで、風で草が不規則的に揺らめき、遠くでは海がキラキラと輝いている。
そんな清々しい自然の中に1人、女性が立っていた。
髪は銀色で、髪型はロングヘア。体のラインがしっかり見える白いドレスに身を包み、頭には赤い花飾りをつけている。顔は目の部分だけが白塗りがされた写真のように、見ることができないがほかのところから予想する限り、かなり容姿の整った顔をしていると予想できる。
そんな女性が、こちらを見て不思議そうにこちらを観察している。
女性は、こちらの姿を完全に確認すると、もの珍しそうにこちらに寄ってきた……が、
この女性大っきすぎないか?。まだ5メートル近く離れているのに自分の背丈より二、三倍ほど大きい体格のように見える。
どうやら、俺はそんぐらいの大きさっぽいな……
「xxxx?、xxxxxxxxxx」
そう何か言っているようだが、聞きなれない言葉を発している。
…いや、単語ひとつひとつ聞き取ればいつも聞いている言語だな。しかし、意味がわかる言葉を理解する事が出来ないみたいな?矛盾しているが、それでもそう表すしかない不思議な感じ。
しばらく女性が話していると、不意に体が動き、飛び跳ねながら女性の方へと向かった。
それを確認した女性は、付いてきてほしいといった様子を見せながら何処かへと向かっていく。
そうしてそれに続いて女性についていこうとした瞬間。視界が歪んだ。
そして、何処かから引き抜かれる様にして謎の記憶が途切れた。
先程とは違い、腕や脚の隅々まで神経が行き届いているという感覚がした。
それを確認してから、ゆっくりと目を開く。そして眼に映ったのは知らない天井だった。
少し首を動かして周りを見渡すと、ジャスが近くで座っているのが確認できた。クラスメート達やほかの人たちはいない。
「他のみんなは?」
寝ていた体を起こして呟くと、ジャスは一瞬の間を開けてから言った。
「ん…お、起きた?他の子達はもう中央部に行ったよ。」
もしかして寝てたのか?細目だからわかりにくい。
「分かりました……ジャスさんは?」
「ジャスでいいよ。僕も行くよ、準備ができたら言ってね。」
しばらくかけて、再び武器防具を装備する。
「準備が出来ました。」
「オーケイ。僕たちは遅れてるけど、時間的にはまだ間に合うからね。全速力で行くよ。」
そう言って外に出る、ジャスが言った通り、本気で走ればまだ間に合うかもしれない。
一応[ステータス増強]スキル発動しておくか……効果時間書いていないし大丈夫っしょ。
『いや効果時間無いならずっと使ってれば?。』
『そんな簡単な話だったら良かったんだがな、これ常時フルパワー状態だから加減が出来ん。』
『ああ、そういうこと。』
ステータスの実数値を10とする。実数値が10であれば、1~10までは慣れれば自由に力を加減できる。しかし、ステータス増強を使うと、実数値関係無しに力が20とかに固定されてしまう。そのため加減が難しい以前に出来ないというわけだ。
これはなんか生活してる時になんとなくやってみたら加減出来なくて……って感じで色々実験してみてわかった事である。
しばらく酒場の通りを進み、裏路地に入った。
くねくねとしていて陰気くさく、日光も殆ど届かない細い道。正直陰キャな自分としても嫌いな道だ。
……というかジャスすごいな。ステータスを増強してる俺と同速って……。
そう思いながらも、気にせずジャスに付いていく。足手まといには出来るだけなりたく無いからな。だって足手まといになんかなったら暫くの間一部の奴から変な目で見られるんだぜ?。陰キャだろうと陽キャだろうとそれは嫌だよなぁ?。
そうしてしばらくジャスの後ろを走っていると、急にジャスが横に逸れ、止まった。
俺もそれに続いて横に逸れる。そして次の瞬間。路地に物凄い速さで何かが落ちてきた。
その何かは、着地とともに、周囲に衝撃波を発生させた。爆音と共に路地裏に建つ家々が崩れ落ち、地面が歪み、凹む。
巻き起こる砂煙の中、影が浮かぶ。
そいつは、砂煙の中では俺達が見えないのか動かない。
やがて、砂煙が晴れ、その姿をしっかりと黙認できるようになる。
その姿を簡単に表すとしたら、岩。ゴツゴツとした皮膚や筋肉を持ち、岩なようなずんぐりとした形の異形の怪物。
そいつは砂煙が晴れると、短い手足をこちらに向け、向かってくる。と思ったら足を滑らせて転んだ。そしてそのままこちらに転がってくる。
そのスピードはおよそ5倍。暴走した自動車のようにこちらへと迫って来る。
やばいと思った時にはもう遅かった。俺は咄嗟に上に飛んで避けるが、その時には既に巨体が眼前にあった。
俺は運が良く轢かれずに後方へと吹き飛ばされ、数メートル程飛んだ後壁の瓦礫へと衝突した。
体に今まで受けた事の無いほどの痛みを感じ、咳と共に口から血を吐き出す。
「…まじ…かよ……」
相手の強さに驚きを感じ、つい呟く。相手の質量が大きいのか、ただ転がるだけでも相当のダメージを負ってしまった。
動かない状態でも全身がズキズキと痛む。しかし、痛みのおかげでパニックにはならず、逆に冷静に思考することができた。
改めて周りを見渡す。先ほどの衝撃で出来たクレーターの中央部ではジャスと岩が戦っている。
岩は先ほどの回転攻撃や歩きを巧く使い分けたり、瓦礫の山を台に使い、軌道を湾曲させたりしながらジャスを仕留めようと攻撃を仕掛けている。対するジャスは何処からか取り出した杖を巧く使い、岩の攻撃を更に受け流している。
半分死んだ様な状況でボーッと見ているだけでもわかるような2人の体捌き。自分と比べて圧倒的に高次元的だという事が分かる。
考えてみればしっかりと型などを団長から習ってはいたがいざとなると学んだ技術のカケラさえも扱う事は出来ていなかった。
ジャスはだんだんと追い込まれているかもしれない。今まで習ってきた事を今、生かすしか無い。
そう心では思うが、恐怖からか体が思うように動かない。
よーし、落ち着け。深呼吸。深呼吸だ。
そう心で唱え、体を動かす。体の痛みは大分収まってきたが、いまだに体は重く感じる。
「……よし。」
なんとか体を立たせ、震えを打ち消す。ステータスを確認。大丈夫、体力はまだ残っている。
[ステータス増強]のスキルはまだ効果が続いている。攻撃されても解除はされないみたいだ。
「いくぞ…」
スタートの姿勢を取る。
クラウチングじゃない方。小学校のかけっこのスタート姿勢だ。
両手でバスタードソードを持ち、相手を見据えた。
チャンスは回転を止めた瞬間。主な感覚器官が耳から目に移った瞬間。そしたら多分岩は目の感覚に集中して耳の方が疎かになる…はずだ…多分。
……岩が回転を始める。湾曲した動きをしながら、ジャスへと近づいていく。
そしてしばらく動き、少しずつスピードが遅くなりはじめた。
今だ!突撃!。
俺が一歩を踏み出し加速する度に、相手は遅くなっていく。
やがて相手が止まった。相手は未だにジャスに集中している。
俺はそれを確認し、思い切り空へ跳んだ。
非現実なレベルの高さに跳び上がり、再び相手を見据える。狙うは頭。胴体は太すぎて話にもならん!。
そして空を蹴り、相手の方向へと突っ込み、体勢を変える。するとあら不思議、拙いけど飛び蹴りのフォームの完成。とにかく足の先に力を込めた。
相手も俺に気づいたようだが、時既に遅し。俺のキックは見事相手の頭…には流石に命中しなかったが、首辺りに刺さり、貫通。
岩みたいな奴…もうゴロンしてる族さんでいいか。ゴロンな族をぶっ倒した。
『キヨシキヨシ。決め台詞』
なぜそれを要求するのかね?。まぁいいや。決め台詞…決め台詞……。あれがあったな。
「ライダ◯二号を忘れていたな!!」
よし。決まった。
そう思っていると、ジャスがやってきて持っていた杖で俺の頭を叩いた。
「まだまだだね。詰めが甘いよ。」
ゴロンな族を再び見ると、まだ少し動いている。が、それがどうしたのだろうか。
そう思って見ていると、ゴロンな族の傷口から闇が染み出した。
闇は傷口から這い出すと、やがて小さな獣の形をとった。上半身だけの小さな獣だ。
獣は、上半身だけの体にしてはおかしいスピードで、こちらに迫ってきた。同時に
「ウヴォォォォォォ!!」
と獣の咆哮が響き、鼓膜を激しく振動させる。
耳が痛いと、つい手を耳に当ててしまった。
そして次の瞬間。目の前に獣が現れ俺の右腕を抉った。
抉られた部分から恐ろしい程に血が溢れ出るが、不思議と痛みは無かった。
気づくと、俺は反射的に左腕で殴ろうとしたが、避けられた。
逆に獣の攻撃をノーガードで受ける事になってしまった。
獣の腕が再び迫ってくる。足を動かし、回避しようとするが、間に合わない。
そして獣の腕が眼前まで迫った瞬間。獣は右側へと吹き飛ばされた。
驚きながら左側をみるとジャスが杖を向けて獣を睨め付けている。
先ほどの攻撃で獣のヘイトはジャスに向いたようだ。獣はジャスへと一直線で迫り、そして瞬く間にジャスの眼前へと辿り着く。しかし、次の瞬間。ジャスの杖から出た輝きが獣を包み込み、浄化した。
「うぉぉ……すげぇ。」
強いとは思ってたけど。こんなに強いとは……。
そして、獣の浄化が完全に終わると、急に気分が重くなった。またかよ。
『本当になんかネガティブになる。どうすればいいんだろうか。』
『おおっ、遂に解説タイムきた?来た!。』
『そう。よかったね。あはは…』
『……さて、キヨシ。経験値を得るってどういう事か分かる?。』
『わからない。もう何もかも……』
『流石に気分重すぎる気がするけど…。経験値を得るっていうのは、魂の生み出すエネルギーを一部吸収して、自分のエネルギーにすることなんだよ。その魂のエネルギー…タマルギー、は呼びづらいか…SEでいいいや。SEを多く取り込む事で、個体的な格を上げることをレベルアップっていうんだ。また、SEというのを得れば得るほど、上位者としての責任。重責が少しずつ重くなっていくよ。』
『なんだよそのクソ仕様。』
『ノブレス・オブリージュみたいな感じだね。だけど責任的なものが少しずつ重くなっていくとしても、それは1レベルアップ毎の事な訳よ。つまり、低レベルの状態で、沢山の経験値を手に入れたら?。』
『あぁ…なるほど。…一気にその責任みたいな奴が増えるってことか。』
『そうだね。しかもキヨシは経験値が増えるとかいうチートスキルだからね、これぐらいのハンデは許してあげようよ』
『結局異世界に行ってもラノベの主人公みたいにノーリスクで無双とかできないのかよ……。やっぱり人生って糞ゲーか……。』
「おーい、キヨシくん。いくよー。」
不意にジャスから声がかかった。もう、中央部についているようなのですぐに行かなければいけない。
いつのまにか抉られた部分も再生している。ジャスがやってくれたのだろう。ありがたい。
「今行きます。」
そうジャスへと返事を返し、俺たちは急いで中央部へと向かった。
書くことが思いつかなかったので、キャラとか地名の命名解説してみます。
国、鳥の種類を元に。(魔国は、いろいろあって…今度ストーリー内で説明シーン作ります)
町、鳥に関連づけます。
人名。
主人公 草加清 普通っぽい名前。
アリス 空間ってwikiで調べたらアリストテレスって出てきたから。
結城勇気 勇者っぽい。
それ以外。頑張った。
…やっぱり作者はポンコツだった。