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第12話 結城のサブ武器決定戦

主人公の仮面ラ●ダー好きという設定はいつ生かされるんだろう?。

少し間が空いてしまって申し訳ないです。

あ、あとこの話ではちょっと主人公が隠キャムーブします。

 まじかよ。結城が来るのかよ…。

 陽キャとは話せない。それは立場的な面ではなく、場数的な面で原因があるのだと思う。

 大体の陽キャというのは大抵の人に分け隔てなく接してくれる。だから色んな人と話すし、その結果話し上手になる。その上、人と仲良くなりやすいから話をする数が多い。

 しかし、隠キャと呼ばれる者たちは、ある一定の距離を取ったりある一定の人物としか殆ど会話をしないため、色んな人と仲良く話す陽キャと比べて話すという事の経験値が少ない。

 それが何故陽キャと話せないに繋がるのか。それは経験値の差が、もろに出てしまい、危険な為である。

 例えば陽キャと話す時。大抵の陽キャはすぐに言葉が出てきて話がどんどんと繋がる。陽キャは大体の相手に対してそれができる。しかし、隠キャというのは経験値が少ないため、直ぐに言葉が出てこない。たとえ出てきたとしても全然関係ない事だったり、相手が知らないような話題しか出すことができない事もある。

 話している人達にそのぐらいの差があると、会話はちぐはぐに思え、会話能力の低さが出てしまう。また、比べる対象が対象なため、実際よりも更に低く見られてしまう可能性もある。低く見られてしまうと、そこを弱点だと思ったりした奴らが精神的に攻撃を開始する場合もあるし、変な奴だと思われてそのまま影に消えてしまう可能性がある。

 隠キャというものは臆病なため、そういう可能性はできるだけ避けたい。


『大丈夫だって。』


 アリスがフォローしてくれるがどう考えても大丈夫では無い。

 陽キャというのはその眩い光で太陽の様に照らしてくれるが、逆にその輝きに焼かれて死ぬ可能性だってあり得る。陽キャというのは色々な意味で危険なんだ。


『いやまぁ、熱弁するのはわさるけどさ…。でもだからって逃げるの?』

『死を恐れない人間が、普通なのか?』

『いやそこまでは言ってないつもりなんだけども。』

『じゃあ…』


 俺は逃げるぞ。と言おうとするが、それを遮る様にアリスが言った。


『これからはもしかしたら陽キャと絡む機会が増えるかもしれないし、ここで結城と少しでも仲良くなって話術の経験値も稼いで、その訳のわからない症候群を治そうとは思わないの?』


 そう指摘されるが、俺の考えは変わらない。


『だが、そもそも…』


 しかしアリスは反論を許さない。


『それに、話すと言ってもここには結城とガスタスと鈴宮の3人しか居ないんだよ?。これはチャンスだよね?。会話能力の低さを確かめようとする下衆な奴なんて居ないんだよ?。それに、話術スキルも簡単に獲得出来るし、もちろんキヨシの経験値乗化スキルの対象となってるよ!。』

『……ごもっともです』


 アリスの言葉に反論する事が出来ない。

 渋々、俺は考えを改め、結城から逃げないという道を選んだのであった。

 そんな事をしている内に、結構近くまで来てしまっていたみたいで、どうやらこちらを発見したようだ。


「あ、草加君と鈴宮君。君たちもガスタスさんに武器を作って貰いに来たの?。」

「いや、鈴宮に槍を作って貰ったんだ。」


 少し声が震えてしまった。今までの生活で積み重ねてきた隠キャの力が、体を震わしているのだ。


『ファイト〜。一応話術スキルはゲット出来てるよ。』


 アリスからエールを貰う。順調に話術スキルはゲット出来てるようだ。あとは経験値のゴリ押しでレベルを上げるだけだ。てか何気に初エールな気がする。多分。

 多分、多分…。

 あれ?数週間程の記憶でさえ思い出せない。

 そのまま頭の中を探る。……なんかが掴めそうな気が…。

 その何かを掴んだ途端、今までの記憶がフラッシュバックした…気がした。


『なんか記憶スキルもゲットしてるけど…?』


 あぁ、記憶スキルをゲットしたのか…。なんか色んな事が瞬時にとはいかないが素早く思い出せる。


『…あれ?。そういえばお前、ここに陣地を置いた日に『空間操れるぜ(ドヤァ)』みたいなこと言ってなかったか?』

『…確かに言ったよ。』

『でもさぁ、アカアシでの戦いの日に『ついさっき神様の力が復活(以下略』とかなんとか言ってなかった?言ってたよね?。』

『……えーと、それはね?別に私がその時権能使えなかったとかだった訳では無くてね?。ただただ安心感を与えようとしただけというですね。えーと…』

『あ、はい。確かに虚勢張りたいですもんね。』

『そういう事じゃ無いでございますよ。空間がを操る力を使って体が分離するマジックを今ここで披露しようか?。』

  『それはやめて、怖いから。』


 さて、そんな話をしている中、あちらでは無言の間が発生している。

 どちらもどう話かければいいかが分からず、機会を待っている感じがする。

 そうされるとこちら側も機会を伺わ無ければいけない。

 さーて、どうしよ。

 そうして困っていると、準備を終えたのか、ガスタスがやって来た。


「で、ユウキ…だったか。どんな武器種がいいんだ?。」

「えーっと…それが、決まって無いんです。」

「はぁ…。…まぁわかった。お前のサブ武器を決めるのも含めてのオーダーだな?。じゃあ出来るだけ希望する特徴を。」

「出来るだけ小さめで、取り扱いやすいものでお願いします。」

「あいわかった。ほら、お前ら暇だろう?。どんな武器にするかの意見出しでも手伝え。」


 やっぱり手伝う事になった。断る理由とかも特に無いので承諾しておく。鈴宮も同じように承諾していた。

 4人で集まって意見出しをする。


「サブ武装といったらやっぱり短剣だと思うんだけど。」

「確かにそうだと思うけど、サブ武装なら剣とかそういうものでは無いものとかがいいかもしれない。例えば、盾だな。押し出す武器から、殴る武器。そして防御にも使える優れものだぞ。」

「盾を武器とかいう人正直初めて見た。」

「確かに盾は武器として使えるな。しかし、プラスでギミックを付けた方が良い。」

「ガスタスさんも肯定するか…。盾は武器なのかよ。あ、なら普通に籠手とかどうだ?。結構良い考えでは?。」

「確かに盾に慣れるまではそっちの方が使いやすいだろうな。だが、受け流しとかは盾の方がやり易いかもしれないな。」

「…全然話についていけない。」

「結城は今までの話でどんなのが良いと思ったんだ?。」

「僕はやっぱり使い慣れてる棒状の物とかが良いと思ったんだけども。」

「やっぱり短剣か…?」

「いや、普通に棒という選択もありだな。」

「棒をそのまま使うのか?」

「中に物を入れたりギミックを仕掛ければ使えるきもするけど、そもそも仕掛けるのってどうやんの?」


 そういう風に話が進んで行って、アイデアが出きると、サンプルを作ってくると言って鈴宮とガスタスさんが工房の奥へと向かう。

 そのため、俺と結城の2人が残った状態になった。

 殆ど音がしない静寂な空間が出来上がった。

 さて、どうするか…。


『いや、話しかけなよ。何の為の脱隠キャなの?。何の為の話術スキルなの?』


 話術スキルのレベルは一応2まで上がっている。

 でも、無理。

 体が再び震えてきた。何故だ?。


『はぁ…』


 アリスが呆れるのは分かる。分かっているが…それでも。何故か。何故か体が震えてくるんだ。


『…隠キャのスキルを習得してそ…う』

『どうした?、なんかなんか様子がおかしいぞ?。』

『…嘘…!?隠キャスキルが…ある!。』

『オワタ』

『…仕方ない。色々な弊害が出るけど…隠キャスキル、消去っと』

『そんな簡単に出来んの?』


 とはいえ体の震えが治まってきた。

 隠キャスキルとか恐ろしいわ。


『消去するのって結構大変なんで…そこんとこ、宜しく頼みますよ…』


 フッとアリスの気配?なんかそんな感じが消えた。回線がブチって切られた。そんな感じだった。

 1人か…。

 スキル消去がどんぐらいの負荷が掛かるかは解らないが、苦労もさせてしまったようですし、せめて話せないというのを解消させないと…。


「あぁ、そういえばさ。結城って聖剣持ってんじゃん。なんでサブ武装を作ろうと思ったの?」


 あたりさわりの無い質問である。少し声が震えたかもしれん。大丈夫かな?変な奴って思われてないかな?。

 結城は少し考えてから話した。


「この前の戦いでね、聖剣が手から離れちゃって少しだけピンチちなっちゃったんだ。だから、手から離れても使えるようなせめて時間を稼げるような武器が欲しかったんだ。」

「へぇ。大変だったんだな。」

「因みに清くんは何でここに居たんだい?。」


 逆に聞かれてしまった。特に理由などは無く、ノリだけだったのだが…。

 少し考えて返す。


「鈴宮が原子を操るスキルを持っているのは知っているだろ?。」

「うん」

「で、何と無く違う武器が使いたくて、鈴宮に頼んだんだ。」

「へぇー。鈴宮君って凄いんだね。」

「あぁ、そうだな。」


 なんか変な話口調になってる気がするけど気にしないキニシナイ。

 さて、そろそろ話すネタも無くなってしまったぞ。どうしようか。

 と、困っていると、どうやら一通りサンプルを作ってみたのか2人が戻ってきた。

 …良かった。しかし、3つ程の武器をそれぞれの鉱石でつくるには早い気がするんだが。


「結構早かったな。」

「あぁ、全部俺の原子操作でやったかんな。」

「サンプルを作っただけでそんな誇らしくできるって才能だと思うぞ。」

「原子操作つおい。」


 さて、4人で協力し、持ってきたサンプルの武器を順番に並べた。

 サンプルとは言え、金属で出来ているから重いし硬いのがいくつかあった。


 まずは短剣。

 サンプルとして用意されたのは、4つ。

 それぞれ見分けがつきにくいが、少しずつ刀身の輝きが違った。


「じゃあ1つ目から。ケイコウ鉱石の合金だ。」


 結城が手に持ち、感触などを確かめる。


「結構軽いね。あ、刀身は…曲がった?。」

「合金とはいえケイコウ鉱石を使っているからな。魔力を通してみろ。」

「うわ、刀身が元に戻った。しかも硬い…。魔力を通すと形が元に戻って硬くなるんだ。」

「それがケイコウ鉱石の合金の特徴だ。」

「凄いギミックですね。」

「まぁいちいち魔力を通さないと使えないのが最大の弱点だ。」

「じゃあ、次お願いします。」

「あいよ」


 ガスタスさんが他の短剣を渡した。


「そりゃあ、コルバルト鉱石で出来てる。コルバルト鉱石は、全ての性能が高く、弱点なし特徴無しの鉱石だ。魔力伝導率がそこそこ高い上に強度があるから、魔法を使う奴らに好まれてる。」

「なるほど、汎用性の高い素材。確かに使いやすそうです。」


 そうして武器選定は進む。

 次に渡された武器はゴーレムの素材で出来た武器だったが、どうやら結城には重すぎたらしく、「合わなそうです」と言っていた。

 最後の短剣が、結城に渡される。

 さっきの俺の武器作りには使われていない素材でできた銀色に光る短剣だった。


「なにこの素材。」


 一瞬銀かとも思ったが、銀は比較的柔らかいという話を思い出し、一応聞いてみる。


「鉄銀という素材でな。因みに鉄と銀の合金では無く、天然の鉱石だ。鉄の硬さを持ちながら、銀の輝きや聖なる力を受け継いでいるという性能の良い素材だ。但し、値は張るがな。」


 なんで俺の時には無かったのかというのは考えるまでも無く、ただ単に鈴宮が持っていなかったのだろう。

 値が張る、ということはその分レア度が高いという事だし、持っていなくても不思議ではない。

 結城は既に短剣を手に取っている。武器を持って重さなどを確かめながら、目を輝かせていた。


「凄いですね。とても硬いですし。軽いですし。これで聖属性が付いているっていうのが更に強さを感じさせてます。」


 感想がなんか、すげぇな(語彙力)

 しかし、途端に結城の顔が変化する。どうやらどれを選ぼうか悩んでいるようだ。


「結城、悩むのはまだ早い。まだ他の武器種が残っているぞ。」


 残った武器は籠手、そして小弓である。

 数はゴーレムを除いて残り4個。

 まだ先は長い。

 そう思ったのだが、何故か籠手の確認は直ぐに終わった。

 というのもそれぞれの鉱石の特徴を結城が既に知っていたからだ。

 短剣の時とは違い、鉱石の特徴を既に知っているという事は、確認する事は減る…という事だと思う。

 そうして最後の小弓の番となったのである。


「ほい、小弓だ。弓はしなりが大事だからな。ケイコウ鉱石の合金で作ってある。」


 結城に渡されたのは、ケイコウ鉱石の合金でつくられた、折りたたみができる小さな弓だった。

 言われて結城が弦を引く。

 弓のしなりは良く、硬過ぎず曲がり過ぎずといった感じだが、ケイコウ鉱石で出来ていることもあり、すこし柔らかい様に感じられた。


「ちなみにその小弓だが、魔力を流すことでとてつもないスピードで矢を射る事ができる。ケイコウ鉱石の合金の特徴でもある魔力による形状記憶の効果を上手く使うことが出来た。」


 成る程、形状記憶の元に戻ろうとする力を利用する感じか。

 ケイコウ鉱石の使い道ってこういう感じか。


「…ちょっとこれ撃ってみたいんですけど。」


 結城が今までに無く真面目な顔でガスタスさんに聞く。


「あぁ、勿論だ。このテントを出てすこし行った先に修練場がある。矢は……っと。これだな。」


 そう言って矢を幾つか渡しながら承諾した。

 テントを出て修練場へと向かう。

 いつのまにか、空は朱く染まってきていて、それほど長い時間俺はあのテントにいたのだと感じさせられた。

 修練場には沢山の騎士たちがそれぞれの方法で鍛錬したり、話し合ったりしている。

 その中にはクラスメートもちらほら見えた。

 少し開けていて、人がいない場所に陣取り、4人で手分けして的を置いた。


「よし。準備は万端。行くよ。」


 まずは一発。普通に引いて射る。

 矢は真っ直ぐな軌道を描いて飛び、的の数センチ横の地面へと刺さった。


「あれぇ…。もう一回!。」


 もう一度結城はチャレンジする。

 今回も矢は同じような軌道を描いて空を切り裂き、今度は見事、的へと刺さった。


「結構難しい…けど。」


 今度は、魔力を使って弓で射る。

 矢は、先程迄とは比べものにならない程のスピードで、音すらも切り裂き、的へと着弾し、貫通。そのまま地面を深くへと刺さる。矢の着弾地点には摩擦熱が発生したのか、ちょっとした煙が上がっている。


「怖い。凄いとかやばいとか通り越して怖い。畏怖だわ畏怖。」

「その言い方酷いと思うんだけど。」

「ごめん。」


 結城と少しは話せるようになった気がする。

 まぁそれは置いといて、結城の顔を見ると清々しい顔をしていた。

 恐らくもう、選ぶ武器は決まっているのだろう。


「…よし。サブ武器決めた!。」


 そう言って結城は走り出した。

 急いで追いかける。

 ガスタスさんのテントに着く頃には空は紫色へと変化していた。

 全速力で走り、疲れたのか結城は肩を上下させながら呼吸をしている。


「おう、戻ってきたか。それで、決まったのか?」


 ガスタスさんがニヤリとしながら聞いてくる。


「決まりました。僕は、この弓にします。」

「おう。じゃあこれから調整だ。と言いたいところだが、今日はもう遅い。続きは明日になるな。」

「はい。今日はありがとうございました。」


 そう礼を言いながら結城がテントから出る。

 俺たちも、それについていきながら。


「じゃーな。ガスタス爺さん。」

「さようなら。ガスタスさん。」


 と言いながらテントを出る。

 テントを出ると、既に遠くの方に結城はいた。どうやら先にみんなのところに戻るのだろう。


「…あ、そういえば。」

「どうした清。」

「いや、俺せっかく槍作ったし、修練場行ったのに槍をまだ使ってないなって。」

「そんなこと明日やればいいだろ。それより腹が減ったわ。」

「…確かにな。走るか?」

「いいや?走らない。走ったら余計腹減るし。」

「あぁ、そう。だが俺は走るぞ。」

「っておま、それ俺も走らなきゃいけないパターンじゃねぇか!。」


 色々ありながら、こうして平和なひと時の内の1日が終わったのだった。

結城の武器はちゃんと活かされます。

清の武器も…活かします。

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