第10話 初めての街[アカアシ]⑤
先日、この作品を初めて評価してもらいました。
とても嬉しいのでね、早いけど投稿しました。
話に関していろいろ納得いかない点などがあるでしょうが…まぁこれからもゆっくり投稿していくので読んでくださるととても嬉しいです。
ー主人公視点ー
異変が起きたのは中央へと向かっている途中だった。
ゴゴゴゴゴと地面が急に揺れ始めた。
日本では何回か経験したが、これ程の揺れは始めてだった。
多分震度は6弱ぐらいあるのでは無いかという揺れは前震もなく急に起こり俺とジャスの足を止めた。
「やっば…立ってられないんだけど…」
その揺れを始めて経験した俺は体勢を崩して、四つん這いみたいな変な姿になっていた。
後ろから笑い声が聞こえるが無視無視。
「もう何十年も冒険者をやっているけど…流石にこの揺れは初体験だね。」
横でバランスを崩さず立っているジャスが言う。
おぉう…この揺れでバランス崩さないとか体どうなってんだ。
流石…。
しばらくすると…地面から何かが生えてきた。
道路や建物に使われる様な石のレンガを組み合わせて出来ている人の形をした巨人が、中央の方向からゆっくりと生えてきている。
そう表現するしかない。
時を経るごとに少しずつ大きくなる巨人は、上半身まで生えている今でも、この街で一番高いであろう塔と同じぐらいの大きさを誇っている。
「えぇぇ…」
『流石にあれは大きいねぇ。初めて見たよ。』
「あれは…ゴーレムか…。あんな大きいものは初めてだけど。」
「ゴーレム…ってなんですか?」
「体内に核があるから動いたり自律行動とかは可能だけど、命は無い魔物の総称だよ。鉄で出来たのもあれば、木や藁で出来たのもいるよ。」
「藁?。耐久性大丈夫?。」
「その話は一旦置いとこうか。アレ、倒さないと。」
「オーケー。じゃあ急ぎましょう。」
いつのまにか揺れも収まり、あの巨人も二足歩行で歩き出そうとしている。
『よっし、やる気出てるみたいだし本気出すよ。』
『…は?』
直後、目の前の空間が裂ける。その先には亜空間っぽい紫が渦巻く空間が見えた。
その渦巻く空間がやがて、違う空間の視点に切り替わった。
この街の中心部だろうか。蜥蜴みたいな人間の死体や、人間の死体。四肢などが転がっている。
「目の前に[時空のはずみ]が出来るとは…それもこの街の中心部に続いている。運がいいね。」
そう言いながらジャスは時空のはずみとかいう裂け目へと入っていく。
『えぇ…』
『さぁ、行って。折角作ったんだから。それに、早く行かないと閉じるよ。』
『え…作った?。お前が?』
そういやこいつ空間がなんとか言ってたな。
よし行くか。
そう思いながら空間の裂け目へと突っ込む。
潜り抜けると、瞬時に周りの景色が変化し、街の中心部へと移動していた。
『よくわからんが、なんか凄いな。』
『そりゃそうだよ。神の力だし。』
なんかドヤ顔をしている気配がする…。
殴りたい。…おやぁ?。でっかい的があるじゃないかぁ。頭上に。
『あ、無理しない方が…』
少し溜めてジャンプする。直後に俺の体はゴーレムの下半身まで一直線で飛んでいった。
「やばっ。こんぐらい跳ぶのかよ。」
なんとか腰の出っ張りへと着地するとゴーレムの頭を見上げる。
「あそこまで行くのにどんぐらいかかるかね?。」
因みにジャスは乱戦中に気絶した兵士たちに回復魔法をかけている。MPがよく保つなぁ。
他の奴らは…。どうやら散らばって戦っているようだ。
それにしても結城が居ないみたいだが…。
…まぁいいや。
もう一回空高く跳ぶ。
だが、少し飛距離が足りないようで、背中へとたどり着く前に、俺の体は降下を始める。
「あ、やべ…」
このままでは落下してしまい、足首を挫くだけでは済まないであろう事を悟った俺は、状況を打開する為頭をフル回転させる。
巨人の体は目の前にあり、周りに安全に着地出来るような所は無い。
マジックバックの中身は、ポーションと剣。状況を打開出来るものは多分無い。
…こうなるなら最初っからクライミングみたいに登ってれば良かったんだが…
…あ、そうだわ。クライミングすればいいんだよ。
背中にぶつかると同時に腕を食い込ませて、そのまま上に登る。
完璧じゃないか!
しっかり[ステータス増強]スキルを発動し、背中へと着地出来るような体勢にしておく。
「ってうぉぉぉぉっ!」
危ねぇ危ねぇ…まさか考えて体勢を整えている内にゴーレムの背中まであとほんの少しの所にいたなんてな。
びっくりはしたが、なんとか腕を食い込ませる事が出来た。
後はこのまま上に登るだけだ。
そうして、レンガの背中を登る事およそ3分。俺は肩まで登る事が出来た。
ここまで登れたのはもちろん驚異的な身体能力と体力のおかげだと言っていいだろう。
「よし、どこ殴ろう…」
肝心な事をまだ考えていなかった。
…それにしても景色がいい。
街の端から端までを見渡せるこの景色は異世界に来てから最高なのでは無いだろうか。
まぁそれはさておき、大きい部分はやめておきたいな…下に落ちたら大変だし。
となるとやっぱ…
「頭殴るか」
しっかりと構えて狙いを定める。狙うのは目にあるだろうセンサーの部分だ。さっき下から見上げた時に見つけた物だ。
…なんか動いている気がするが…落ちる前に殴ればいい。
「…よし」
頭に向かって駆け出した。
しっかりと踏み込んで、目のセンサー部分へと拳を突き出す。
グシャッという音と共にセンサーが潰れ、目から照射されていた赤い光線が途切れた。
…のは良いんだが、センサーが設置されているのは人間で言う目の部分。
顔の前部分であるそこに腕を突っ込んだと言う事は、着地出来る場所が無い所なわけだ。
幸運な事に、ゴーレムに痛覚は無いようで目を抑えたりとか言う事はない。
この巨体であれば別にセンサーが無くなっても周りを一掃できるしな。
『と言うわけでアリスさん。助けて…』
『…だから行ったのに。まぁ仕方ない。ほら、その目から手、離して。』
『え?』
『いいから信じて!』
『お、おう』
アリスに従い、手を離す。当たり前だが、下へと落ちていく。
直後、衝撃と共に、俺はいつの間にか地面へと移動していた。
周りは既にゴーレム以外を倒したらしくゴーレムに対して構えを取っている。
頭が崩れ落ちたのは見えてたらしい。消えたとかどうとか周りで言ってる。
「あの相手じゃ、核壊せないだろう。どうするんだ…?」
騎士の1人から不満が漏れる。核潰せば倒せるのか、あいつ。
だったら背中貫いとけばよかったかもしんない。
『どっちにしろあのゴーレム核自体が移動してるから無理だよ。』
『なんでわかるんだよ…。』
『ついさっき神様としての力が復活してね、空間にあるすべてというか大体を判別できる能力も復活したからね。』
『…あぁ、空間の能力がいつのまにか使えるようになってたのって…』
『そのお陰だよ。しかもこのまま欠けらとの融合係数が高くなったらキヨシも空間操れるようになるね。』
『…どういう事だ?』
『おっと。ゴーレムが動いてるよ。何かしなきゃ。』
そう言われても核潰せば一撃だけど核を潰さなければ倒せないってこれ相当難しいのでは?。
そう考えていると、
「あ、清。いつの間にこっち来てたんだよ。」
と、後ろから声をかけられる。功太だ。
「さっきこっちに来たんだが。あのゴーレム見えてる?。」
「見えてるに決まってんだろうが…。あのゴーレム倒せないだろ絶対。デカいし堅そうだし。」
「…いや、結構いけたぞ。」
「えっ?」
「えっ?」
「結構いけるってお前…。そんな訳ないだろ。」
「いやさっき頭ぶん殴って来たんだって。」
「確かに目のセンサー潰れてっけど。流石にないわー。」
「信じてくれないのか…。まぁいいや。」
「いいのかよ。」
「…で動揺とかしてないのはなんで?。デカいのに。」
「動きが遅いから避けやすそうだなーって。大きさ的に見ても腕の効果範囲は幅15Mくらいの線状になるだろうし。鈍いからそう連続攻撃は来ないだろうなって。」
「…あぁまぁ確かに。」
そう話しをしていると、ゴーレムが急に動き始めた。
膝を折り、しゃがむようなポーズを取る。そうしたかと思うと、勢いよく膝を伸ばした。ゴーレムの巨体が宙へと浮かぶ。所謂ジャンプである。
だが流石にあの巨体が着地したら間違いなく街が吹き飛ぶだろう。…まちだけに…。
「逃げろぉぉ!」
騎士たちが叫び撤退を始める。
無理だわ。街の人たち助けられんのかこれ。
『無理だろうけど、大丈夫。』
『え、なんで?』
『さっき心配になって見てきたけど、一足先に避難民と合流していたルーカス小隊がゴーレムが出現を見て避難を開始したみたい。ルーカスっていう人は有能っぽいね。』
『おぉぉ、良かった。……でも魔族の妨害とかは…』
『無かったみたい…。魔族の司令出してる奴がゴーレム出すからって一部の魔族を避難させたんじゃないかな?。魔族も予想よりも大分少ないし。』
『へぇ』
そう話している内に、既にゴーレムは落下を始めている。
「やっべ俺らも逃げなきゃ…」
急いで功太と一緒に逃げる。
「やべぇやべぇやべぇ…」
「やべぇしか言ってねぇじゃねぇか!。」
やべぇを連呼していたら功太から突っ込みが入れられたが、こればっかりは仕方ない。
本当にやばい時はやべぇしか言えないのだ。というかなんであいつは余裕あるんだよ。
しばらく走り、ある程度離れたかと思うと地面が揺れた。その数秒後に何かが爆発したような、凄まじい音が聞こえ、その直後に風が俺を吹き飛ばした。
体が宙へと浮かぶ。
ゴーレムで見た景色は清々しかったが、中途半端に地面に近いこの景色では、いつ地面へと衝突するのかという恐怖しか感じなかった。
「うわっやばっ。」
少しずつ地面に迫っている。
どうにか体勢を立て直さないと、死ぬかもしれない。
『いや死にはしないでしょ』
いや、死にはしないだろうけど死ぬほど痛いって事だよ。
体勢体勢…よし、四つん這いならなんとか……ならないだろ!。多分。
あれこれしている内に俺の体は地面へと叩きつけられた。
「大丈夫か、頭からいったけど。」
功太から声をかけられる。
「大丈夫だ。問題ない。ってかお前吹き飛んでなくね。」
「…はぁぁ。お前さ、大丈夫か?頭怪我してないか?。俺は[原子操作]できるんだぞ。」
「…あぁ!。あったな。そういう能力。」
「…ゴーレム活動停止したけど…どうすんだろうな。放置じゃまずいだろ」
「……繋がった」
「は?」
つい声に出てしまったようだが、繋がった。
ゴーレムの特性。そして功太の[原子操作]これは…いける!。
「脳細胞がトップ「だからいきなり何言ってんだよ…。アホか。」
功太に一撃蹴られるが気しない。それよりも言葉を遮られた事を気にしたい。
せっかくギアが入った風に生きたかったのに。
「真面目に言うわ。あのゴーレム完封出来る。」
「は?」
「だからゴーレム完封出来るって。」
「どうやってだよ。」
俺がその方法を教えようと思ったその時、間に小村が割り込んできた。
「君の[原子操作]能力で、ゴーレムを分解するんだよ。」
「だけど、俺の能力は命がある奴とか無理だぞ?」
「大丈夫大丈夫、ジャスさんによるとあのゴーレム。命が無い自律型人形らしいしね。」
「まじか…。成る程。イケるな。」
やばい、台詞全部取られた。
『…この小村って子について教えて欲しいんだけども…』
『ん?どうしてだ?。それに俺詳しく無いし。』
『いいからいいから。』
『…あぁ…わかった。』
どうやら小村と功太は既にゴーレムの方へと向かったようで姿は無い。
そろそろ疲れてきたし休憩しながら説明するか…。
『…小村だよな…。フルネームは小村七海で、見た通り性別は女。容姿はなかなか。趣味はゲームで腕前も一流レベル。見た感じ、基本的にクラスへと分け隔て無く接しているが、主だった集団を作ったり入ったりはしない感じかね。こっちにきてからもそれは変わらない感じ。スキルは確か……』
『スキルは必ず思い出して。』
『えぇ…スキル…えぇっと。…あそうだ。[シューティングスター]だ。確か星を生成して操作するスキルって聞いたな。』
『ふむ…[シューティングスター]…か』
『何か気になる事があるのかよ。』
『あの子、ジャスに聞いたって言ってたけど、ジャスと話したことは一度も無かったよ。』
『…それは怪しいな』
『それに、あの子が割り込むのは私にも感知出来なかった。』
『…空間の神様の癖して…』
そう呆れていると、遠くでゴーレムがゆっくりと崩れているのが確認出来た。
空は赤く焼けていて、なんらかの司令が出たのか騎士たちもゆっくりと撤退を開始している。
「もう今日も終わりだな…」
長かったアカアシの街での戦いも終わろうとしている。
…めっちゃ被害が出てるけども…。
『いやまだ終わって無いよ。あの結城って子が閉鎖空間に閉じ込められてる。あと第3師団の団長もね。』
なんだと…。助けに行かないとやばい奴ら2人じゃ無いですかやだー。
よし早速行くがその前に俺のステータスを確認しよう。
久し振りにステータスを確認する。
草加 清(16)
Lv-67
筋力…2139
頭脳…2145
速度…3663
技能…9612
魔力濃度…B 魔力強度…A
魔力量…3654/3654
体力…4671/4671
スキル
[経験値乗化Lv_4] ([ステータス増強Lv_3]) [勇者Lv6] [自然神の力1/8]
色々言いたいことはあるがまぁまず一言。
『レベル上がりすぎだろ…』
スキルが少ないのは大体のスキルが勇者に統合されているからだと納得できるが、レベルに関してはどうにも納得がいかねぇ。
『そりゃ経験値を乗化してる訳だし、レベル4ってことは4乗って事だからね。』
『それにレベルが一気に上がり過ぎたのか重い気持ちとかほぼないし』
『でもから笑いとか増えてる気がするけどねぇ。それより、はやく結城とやらのところ行かないと!。』
『大丈夫だ。勇者スキルが上がったからか知らんが俺にはわかる。』
『何がだよ。』
『結城が生きてるって事だよ。』
『…ほんとだ。閉鎖空間から出てきてる。』
やったぜ。感が当たって良かった良かった。
「さーて帰るか。功太は…いいや。あし疲れたし無駄に歩きたくねぇ。」
こうして、長いのか短いのかよくわからないアカアシの戦いは終わったのだった。
小村という存在への謎を俺とアリスに残して。
一応の能力解説コーナー
[シューティングスター]
文字通り星を飛ばすスキル。
威力は込めた魔力量によって変化し、発射した星は何かにぶつかるまで威力減衰無しで飛んでいく。
込めた魔力を少し消費する事で、軌道を変化させたりでき、自由に形を変化させられる。
また、基本は無属性だが、様々な属性に変化させる事も可能。
正直小村さんがいれば黒い鳥さんなんてほんの数行でカタがついた。
しかし、いない時はいないので仕方ない。