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第9話 初めての街[アカアシ]④

夏頃から始めて…気づけばもうクリスマス。

…全然進んでない。

ま、多少はね。

ー[アカアシ]中央部ー


 中央部では''元''オウルム王国騎士団の本隊と、侵略者である魔族との攻防が既に始まっていた。

 円形に広がる中央広場で、その二つの勢力が乱戦を繰り広げている。

 ある者は分隊を作り少数の団結で魔族に対応し、またある者は乱戦の中を駆け抜けながらヒットアンドアウェイを繰り返している。

 しかし、どのような戦い方をしようが、どう攻撃をしようが魔族の有利は揺るがなかった。

 その1番の点は、今回の戦闘に駆り出されている魔族[リザード族]の特徴にあっただろう。

[リザード族]は、鉄程度の硬度の武器ならば逆に折ってしまう程の堅固な鱗を身に纏った蜥蜴戦士であり、魔物であるリザードマン種とは違い、人間と同程度の思考や行動が出来る。もちろん筋力の水準も人間よりも高い。

 小さい力を合わせ、団結して守るという騎士団とは逆で、個体それぞれの強さで畳み掛けるという強さの[リザード族]。騎士団にとってもちろん強敵だった。

 しかし、リザード族に対し、他よりも圧倒的に有利を進めている師団があった。

 それが元オウルム王国第3師団である。

 彼らは普段から、団結、協力を特に意識した訓練を行い、騎士団の中でも高い戦力をもっていた。

 第3師団は、現在円形に陣を組み、師団長である[ジョセフ]を大将とし、指揮官数人で、ほぼ全方向の魔族へと対応していた。


「師団長っ!3時方向が苦戦中の模様です!。」

「そうか…よし、右翼全体に防御特化の指示を出せ!…次に弓兵、3時方向……撃て!。」


 ジョセフの合図のもと、円形の陣の中央部にいた弓兵が魔力を付与した矢を空へと放った。

 矢は山なりの軌道を描き、次々に魔族の兵を射倒していく。


「ぐぁぁぁぁっ!。」


 それに応じてどんどんと死体は積み上がり、山となり、彼らの視界を覆っていく。

 敵の数は減ったがその分彼らの視界は塞がり、彼らは何処から敵が攻めてくるのかわからない。その恐怖感に襲われるようになった。

 彼らは恐怖を抱き汗をしたたらせながら、周囲を警戒する。どこから来るのか。何処を攻撃するのか。

 その状態のまま、しばらくの間が経ち、それは突然やってきた。

 ある兵士が叫ぶ。


「上だぁぁぁ!」


 全員が上空を見上げ、一瞬唖然とする。

 上空は数百を超える矢で覆われていた。そしてそれが一斉に落ちてくる。その様子はまるで空が落ちてくるようにも見えた。

 彼らはすかさず上空に向けて、魔力でコーティングした盾を上空へと向け、矢から身を守る。

 そして次の瞬間、死体を吹き飛ばし、1体の魔族が迫ってきた。

 矢へと対応していると魔族に対応ができない、魔族に対応しようとすると、矢に射抜かれる。

 どちらにせよ死ぬ。その事を瞬時に直感し第3師団の全員の動きが止まった。

 まるで時が止まったかのように動かない、動けない、しかし焦った表情、恐怖の表情に満ちている騎士達の姿はさながら静かにパニック状態に陥っているようだった。

 そんな事は気にする様子もなく0時方向から迫ってきた魔族は、一際大きく体の2倍近くある斧を軽々と振るう程の腕力を持っていた。


 ブゥン!


 と斧が1回振られる度に、騎士の鎧ごと体が両断され上半身が宙を舞う。その度に血が雨の如く降り注ぎ魔族のリザード族特有の美しい鱗が赤黒く染まっていく。

 数回振ったあたりで、矢が地面に刺さっていくが、魔力の通っていない弓ではリザード族の鱗を射抜く事は出来ず、跳ね返されていく。

 矢が完全に降り注ぐと、ようやく騎士達が動き出した。

 少しずつ後退しながら、一度陣形を組み直した。

 先程までの半分程の大きさとなり、恐怖で体が震えながらも、魔族に向かって構えている。

 魔族の歩みが止まり、再び時間が止まる。

 魔族はゆっくりと斧を構え、呼吸をしている。


「弓、構えろ。前方部隊、防御特化状態に移行。奴を迎え撃つ。」


 第3師団もまた、深く構え、呼吸を整える。

 しばらくの静寂の後、魔族の足がギッと動きはじめた。地響きを立てながら、凄まじいスピードで向かってくる。


「…今だっ!放て!」


 合図と共に魔力コーティングをされた矢が魔族に向かって放たれる。

 矢が着弾し、数発の矢が皮膚に刺さり、傷口から緑色の血がドロリと、滲み出る。

 しかし、魔族は止まらない。そして前方部に集まる盾部隊を飛び越え、ジョセフへと、大上段から斧を振り降ろす。

 ジョセフは死を予感し、最後の抵抗として、魔力コーティングをしたサーベルを魔族へと向けた。

 斧の刃が大将を両断し同時に、コーティングされたサーベルが魔族の心臓を貫く……直後。

 斧の側面へ、光を放つ球体が衝突し、爆ぜる。


「大丈夫ですか?。」


 光の球体を飛ばしたと思われる少年達が、すぐに駆け寄り、魔族と対峙する。

 彼らは、[勇者]と呼ばれる。異世界から召喚された人間だった。主な特徴は黒い髪と東洋人に似た顔の形。それ以外は、どう見ても子供である。


「ありがとう、助かった。ユウキ殿。」


 ジョセフは、少し震えながらも勇者へと礼を言う。未だに死ぬ事への恐怖が心に残っていた。

 本当に死ぬかもしれない、というような死地は今までに幾つも重ねて来たジョセフだったが、どんなに数を重ねても歳を取っても、死ぬ恐怖には未だに慣れないままであった。

 震えながらも、勇者へと対峙する大斧の魔族へと目を向ける。

 鎧は既にボロボロであり、何処からどう見ても満身創痍のその姿だったが、よく見ると所々の出血が止まっている。

 いくら魔族の自然回復速度が速かろうと、この速度で出血が止まるのはあり得ない。また、なんらかの魔道具(ここでは、魔力をエネルギーに動く道具のこと)の可能性を視野に入れて考えるが、魔道具として機能するような物は無く、そもそも魔力を持たないリザード族は魔道具を使用できない。

 じろじろと見ているうちに、リザード族が動き出した。

 その動きを見て、駆けつけた数人の勇者達も警戒をしながらゆっくりとリザード族へと向かう。

 ある程度近づいた直後リザード族は、正面に対峙する結城へと斧を振り下ろした。

 予備動作もなしの素早い一撃に、結城は一瞬反応が遅れながらも自らの手から炎の剣を召喚し、その斧を受け止める。


「何っ!?」


 リザード族が驚愕した声を上げる。

 自分の攻撃が受け止められてしまったためだ。

 しかし驚愕しながらも、隙を見せる事はなく、それどころか自分に対抗する強者がいると、喜びを感じながら、さらに力を増している。


「ぐっっ……」


 結城は反応した所までは良いものの、リザード族に対して全ての面で劣っていた。

 このままではまずい、しかし押し勝つ事ができず、少しずつ死が近づいていく。

 直後、リザード族の体へと、光の魔力が着弾し、周囲に飛び散った光が火花の様な軌跡を描いた。

 そしてリザード族の結城への集中(ヘイト)が分散し結城へとかかっていた力が緩まった。

 その直後にリザード族の肩をジョセフのサーベルが貫いた。

 サーベルは深く突き刺さりひび割れた鱗から血が吹き出す。


「グゥオォォォォォォッ!!」


 リザード族が苦痛により咆哮し周囲が揺れ、空間が歪み、周囲にいた結城とジョセフが取り込まれる。

 しばらく響いた轟音の後に、リザード族と結城がいた場所には、空間の歪みによって出来た繭のような何かが残っていた。



ーアカアシ中央部.時計塔ー


「おーっと戦士ザードが、[結界]を発動し、勇者を1人取り込んだー!。これは大きい!大きいぞー!。」


 魔族と人間が交じる混戦の最中、時計塔の上では、リザード族では無い魔族が戦いを実況しながら高みの見物をしていた。烏の様な黒鳥の姿をし、紳士の様な服、モノクルを身につけ、ステッキを携えたその男は何をするでもなく、ただただ笑いながら実況をしていた。

 そんな異質な黒鳥に、気づく騎士は誰もいなかった。


「こんなに実況をしても、誰も私には気づかない……ククク。良いものですね、上というものは。」


 そう彼が高い場所を謳歌していると、ふと何者かの視線に気が付いた。

 下を見下ろしてみるが、混戦の最中を探すのは難しい。

 彼はしばらく探した後、自分の勘違いか…と安心して時計塔の屋根へと座り込んだ。

 その直後、彼のすぐ上を一本の矢が風を切りながら飛んできた。


「ウヒッ!?」


 彼は思わず悲鳴をあげ、すぐさま周りを見渡すと、時計塔のそばにある家の上に数人の人影が確認出来た。

 目を凝らして見てみると、その数人はこちらをしっかりと認識し見ている事に気づく。

 その数人の纏う異質な気迫から、すぐにその数人が勇者と呼ばれる悪魔であると理解する。


「…これは。まずい。」


 自分がここで殺されてしまえば、今回の混戦の勝利の鍵である[あれ]を使用出来ないと、彼は心底焦りながらどう切り抜けるかを考える。

 しばらく考えた後、彼は素早く逃げる事を選んだ。素早く屋根を蹴り、時計塔の内部へと駆け入る。

 彼は時計塔の内部の陰に隠れながら、懐からいくつかの魔道具を取り出し装備した。装備した魔道具はこれでもかという程に煌びやかな装飾がされており、かなり目立っていた。

 だからなのか、隠れていても場所がばれており彼が隠れているすぐそばに矢がどんどんと刺さっていた。


「クッ…何故場所が…?。」


 圧倒的に感じる勇者の力に思わず息を飲む。

 勇者が思わぬ行動をした為に彼は再び思考し選択する。

 その攻撃は、彼を既に見つけている様だが、彼がよく音を聞いてみると刺さっているものや刺さらずに落ちる矢がある事に気づいた。

 どうやらこちらを見つける力はあった様だがこちらを倒す手段は無いらしいと考えた彼は懐から小型の筒を取り出した。

 数十センチメートルの細長い筒に持ち手やうちがねがついた機械的な武器、所謂銃と呼ばれるものである。

 それは、彼がある時商人から買った掘り出し物であり、数十回使用しその使い方を熟知している遠距離武器であった。


「これなら…」


 彼はゆっくりと時計塔の窓へと顔を出し、勇者の居場所を確認する。

 そして弾を込め、窓から銃を構え勇者の1人へと照準を合わせた。



 その姿を見て彼と対峙していた、勇者達は危機感を募らせる。

 自分の居場所が特定され、攻撃もなされている最中にこちらへ反撃を開始するという事は、自分達に対して有効打がある。という事なのだ。


「何が来るか分かりません。皆さん警戒してください。」


 勇者の一員である眼鏡村が冷や汗をかきながら言う。

 それに呼応する形で全員が、より警戒を強めた。

 この勇者達の分隊は、特にグループを作らないような数人の生徒で構成されている。

[完全看破]というシンプルだが強い力を持った眼鏡村。

[音]という曖昧な力を持った伊藤。

[竜化]という暴走する危険のある力を持った星井。

[腐敗]という命の無いものを腐らせてしまう力を持った藤村。

[平凡]という場に応じて自分の力が変化する山田。

 彼らは、それぞれの力を使い、黒鳥の様な敵へと対峙していた。


 強烈な破裂音と共に、黒鳥から弾が打ち出された。

 標的は眼鏡村。眼鏡村めがけて風を弾きながら球体の弾丸が進む。


「眼鏡村!」


 音を利用したソナーで銃弾の位置や方向を一瞬で割り出した伊藤が叫ぶ。

 その時には既に銃弾、黒鳥についても完全に看破していたが、黒鳥の役割を知り驚愕してしまった為に眼鏡村は反応が遅れてしまった。眼鏡村は慌てて持っていた盾でガードしようとするが、その時には黒鳥の撃ち出した弾が眼鏡村の腹部を貫いていた。

 強烈な衝撃に眼鏡村が仰け反り、同時にその傷口から血が溢れ出した。

 眼鏡村に意識は無く、気絶しているようだった。


「田中っ!眼鏡村を頼んだよ!。」

「あいわかった!」


 すかさず田中がフォローに入り、眼鏡村を担ぎ素早く走った。

 場の平均の力を常に持つ田中なら眼鏡村を担いで逃げる事は簡単だった。

 田中達が場から抜けたのを横目で確認してから、直ぐに黒鳥へと目を戻す。


「……!?」


 先程まで居た場所は既にもぬけの殻。どうやら黒鳥は逃げたようだ。

 直ぐさま伊藤は[音]の力を使い、追跡を開始する。


「……」

「伊藤さん?」


 無言で佇む伊藤に対して声をかける。本来なら既に敵の位置を特定する事は出来ている筈だ。


「……範囲内に居るけど、凄い速さで動いてる。空を飛んでるみたい。」

「まずい…こっちからの有効打が無いよ。」

「なんとかして近くに誘えれば弓の射程に入るけど…。」


 3人は、防御を固められていても有効打が無く、受け身になってしまう事に恐れを抱いた。


「もういっそ近づかない?」

「近づいたら当たるけど…」

「空飛んで銃撃ってる方が強いよね多分。」


 黒鳥は様子を見ているのか、侮っているのかこちらを攻撃してくる気配は無い。

 その間、周囲を警戒しながら3人は打開策を探ろうとするが、何も得る事が出来ず、時が過ぎる。

 そうして10分が過ぎた時、先に動き出したのは勇者側だった。

 素早く家の屋根から屋根へと飛び移り、大通りを素早く通り抜けて街の中心の時計塔へと辿り着く。


「げっ階段…。」

「仕方ないでしょ。勇者として強化されてるしきっとすぐよ。」


 扉を開けた先にあったのは、勇者の力を持つ今でも長く険しい螺旋階段だった。

 罰ゲームの様に辛い登りに、音を上げつつも3人は螺旋階段を登り始めた。


 登り始めて1分ほど経った頃、時計塔の螺旋階段に空いた窓から黒い球体が転がり込んできた。

 深い緑色に染まったその球体は、まるで勇者の居た地球で言う[手榴弾]の形をしていた。

 それが爆弾であるといち早く気づいた星井は、


「危ないっ!」


 と叫びながら2人を突き飛ばす。

 その直後、丸い球体が爆発し閃光を放つ。

 爆炎と爆風が周囲の全てを吹き飛ばし、時計塔に大きな穴が空いた。


「…これじゃ…」


 間一髪で助かった星井が嘆く。

 上に登る為の階段はボロボロに崩れていた。


「まさか爆弾まで持ってるなんて…」

「武装が違いすぎるわね…」


 藤村が窓からそっと外を覗いた。

 黒鳥はこちらが優位だと油断しているのか、少しずつこちらに近づいている様だ。


「あいつ近づいてきてる…どうする?。」

「チャンスかもしれないわね。…ゆっくりと狙いをつけてはいられないし。」

「そうだなー囮を使ってみるとか?」

「そんなんで?」

「鳥だし、油断してるし、なんかバカっぽかったし。いけそうな気がする」

「でもどうやって…」

「私がここに残ってあいつを狙う。2人はそれぞれ上と下へ向かって。」


 伊藤の作戦に対して、星井が賛成するかを考える。

 その作戦の成功確率が低いのは明らかだったが、これ以外に考えが出ていないのも確かであり、他の方法を模索する時間も無かった。

 数十秒ほど考え結論をだした。


「わかった。伊藤に乗る。早速作戦開始だ。」


 3人の作戦が開始した。

 星井は素早く階段を駆け上がり、爆発により崩れた部分を飛び越え、上層へと向かう。

 藤村も遅れて走り出し、崩れた部分から飛び降り下層へ向かった。

 伊藤は見つからない様にそっと窓から黒鳥を捉えた。

 黒鳥は何故か狼狽え、上と下を交互に見やっている。

 しばらく迷った後、爆発により時計塔に空いた風穴へと風を切り裂く速さで向かって来た。

 それを察知した伊藤は開いた風穴の外側を狙いを定め、弓の弦を引いた。

 一瞬の内に黒鳥は風穴へと到着し、上層へ向かう階段へと着地した。

 高所へと追い詰める事でまず、星井を始末しようとしている様だ。

 直後、その黒い翼を鋭い矢が貫いた。

 黒鳥の翼から血が吹き出て階段を紅黒い色に汚す。

 黒鳥は勢いよく振り向き、伊藤を睨みつけた。

 その殺気のこもった眼に、思わず体が竦む。

 黒鳥が伊藤へと体を向けゆっくりと伊藤へと近づいていく。

 手には既に銃の姿は無く、謎のステッキを持っている。

 崩れた階段を隔ててはいるが、逃げる事の出来る距離では無かった。

 実況している時とは違う目で伊藤を見るその姿はまるで別人かと疑うほどに形相が変化しており、その顔は怒りに染まっていた。


「…死ね」


 ただそれだけを口にすると、黒鳥はステッキの先を伊藤へと向けた。

 その直後、一瞬してステッキの先に魔力エネルギーの矢が形成され、ステッキから放たれた。

 矢は伊藤の左腕を貫き、時計塔の壁へと刺さった。


「うぅっ…ぐぅぅっ……。」


 魔力矢は拡散せずにその場に留まり、伊藤の左腕を壁へ固定しながら、伊藤の腕を焼き焦がす。

 もう打つ手は無い。能力の[音]は直接攻撃が出来るほど成長はしていないし、矢は届かない位置にある。

 短剣もあるにはあるが、恐らくこのままでは生かす前に殺されるだろう。


「さぁーてどう殺して差し上げましょうかね?」


 ステッキで床を軽く小突きながら黒鳥は呟く。

 クククと薄気味悪い笑みを浮かべながら再びゆっくりと歩み詰める。

 そうして階段の崩れた部分へと辿り着くと


「おっと…。そちらに行くのも少々面倒ですね。」


 と言いながら靴へと魔力を通し、効力を発揮させた。

 そして再び歩き出すと、崩れた階段部分の空間に何かがあるかのように空中を優雅に進む。


「何…それ。」


 思わず伊藤が言葉を漏らす。

 その言葉を黒鳥は聞いていなかったようで何も反応せずに未だこちらへと歩みを進めている。


「さて…どういう風に死にたいですか?」


 黒鳥がねっとりとした声質で伊藤に聞くが、伊藤は何も言わず、自分は殺されないという意思を示した。


「ククク…強情ですなぁ。ではこういうのはどうでしょうか?」


 そう言って黒鳥は懐からナイフを取り出した。


「これは[不殺(ころさず)のナイフといいましてね。どんなにこれで攻撃しても殺すことは無いというアイテムです。ただ、痛みはしっかりあるらしいですよ。」


 そういいながら銀色に輝くナイフを伊藤の腹に突き立てた。


「グゥゥッ!!」


 血が勢いよく吹き出し、周囲が赤黒く染まる。

 苦痛の表示を見せながらも、伊藤は右手をナイフへと近づけ、引き抜こうとする。

 が、その腕を黒鳥が掴み、捻った。


「ぐあぁぁぁぁぁ!」


 伊藤が叫ぶ。


「抵抗しようとしても無駄です、既に貴女は私の玩具だ。」

「それは…どうかな」

「こんな状況でよく強気な発言が出来ますね。」


 そう言った直後、


「ウォラァァッ!!」


 という声が聞こえるのと同時に、黒鳥の腹が槍に貫かれる。槍が引き抜かれると、


「は……へ?」


 と言いながら、不思議そうに腹に空いた空間に指をグルグルと円を描く。

 そうしてやっと自らの腹に穴が空いた事を確認し、理解すると狂ったように動き出した。


「クククククククククククククククククククク」


 と薄気味悪く笑いながら、自分を貫いた星井をステッキで打ち、吹き飛ばす。


「人間メェ、ヨクモ…ヨクモヨクモヨクモッ!」


 壊れたCDの様に同じ言葉を何回も吐き出し、黒鳥は懐から機械を取り出しを取り出し、スイッチに手をかけた。


「何をするつも…キャァ!」

 

 全てを聞き終わる前に機械が作動し、光を放ったかと思うとその直後に地面が揺れる。


「コレデ…コレデコレデェェッ!全テガ、スベテガスベテ…ホロビロホロビロホロビロォォッ!ククク…ク………」


 黒鳥がゆっくりと地面に倒れ伏すが、揺れは収まることはなく、逆に強くなっていく。

 そうして揺れが収まると同時に、地面から巨大なゴーレムが出現した。

はい遅れて申し訳ございませんでした。

「言い訳していいわけ?」とか言われそうですが…言い訳します。

Vtuberハマってました。許して下さい。


…とまぁ、茶番は置いといて。


今回主人公出てきて無かったのは、勇者勢全員活躍させたいからです。

一応能力載せますよ。


伊藤ポピー 能力[音]

音に関係することだったら大体できる。


眼鏡村小太郎 能力[完全看破]

全ての事を看破出来る。尚主人公のスキルは色々あって見えていない模様。

別にタイトル詐欺とか言われたくないからという理由ではない。


山田太郎 能力[平凡]

どんな場でも能力がその場の平均となる。

一対一ではかなり強い。


藤村英理 能力[腐敗]

自分の周囲の物を腐らせる。範囲指定とか出来る。

普通腐女子が手に入れるべきスキルだが、藤村はそんなに興味ない。


星井竜子 能力[竜化]

制御不能の竜へとその身を変貌させる。

本編では未使用だけど今度使う。

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