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乙の子  作者: ariya
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序 居候の少女たち

 時は江戸時代はじまりの頃である。


 仙台伊達家家臣片倉小十郎重綱のもとに三人の子供がやってきた。

 小十郎が戦の最中、身よりを失った少女・阿梅の妹たちだ。


「殿には感謝しております。私を引き取ってくれるばかりか、妹たちをここへ呼び寄せてくれて」


 阿梅は妹たちと一緒に小十郎に礼を述べた。


「別に気にすることではない」


 阿梅の妹三人を見る。

 どの子もまだ幼いながら整った顔立ちをしていた。

 類稀な美女阿梅の妹なら当然だろう。


「まだ名前を聞いておらんな」


 阿梅は三人の妹たちを促す。


「お初にお目にかかります。阿菖蒲と申します」

「おかねと申します」


 三人のうち二人が名乗るが一人は困ったように姉を見つめた。

 阿梅は早く挨拶をするようにと目くばせをするが、少女は何も言おうとはしなかった。

 小十郎は少女の前まで出て声をかけた。


「そなたの名は?」


 容姿端麗と言われる小十郎の顔を目の当たりにして名乗ろうとしない少女はかぁっと顔を真っ赤にしてその場にひれ伏してしまった。


「その子はおはつと言うのです。姉妹の中で一番内気なのでどうかお許しを」


 阿梅が代わりに小十郎に名を教えた。


「おはつ殿?」


 小十郎におはつと呼ばれた少女は相変わらず顔を下に向けていた。そのままようやく小さな声で自分の名前を名乗った。


「おはつと申します」

「そう固くならずともよい。確かに私はそなたの父と敵対していた。しかし、私はそなたら姉妹に危害を加えるつもりはない。私はそなたの父・真田殿を尊敬しているのだ」


 おはつは顔をあげて意外そうに小十郎を見つめた。ようやく顔をみせてくれたことに小十郎は安堵した。


「そなたの父に劣るが私を父と思ってくれると嬉しい」

「……どうか、よしなに」


 おはつは顔を真っ赤にして、頭を下げた。

 相変わらず声は小さかった。


 小十郎はにっこり笑って、頷いた。そして他の娘たちにも振り返った。


「そなたらも私を父と思ってくれ」


 恐れ多いといわんばかりに少女たちは頭を下げた。

 小十郎はおはつの声の小ささと遠慮深さは阿梅の言うとおり、内気なのだと思っていた。

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