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ヴェンデッタ  作者: 白銀悠一
第二章
9/45

亡国ストリマⅡ

 真っ白な雪山の斜面を滑り降りる一つの塊があった。よく見るとそれは一つではなく二人である。

 シュウはラクアを抱きかかえ、スライディングをするように坂を滑っていた。

「シュウさん! ……お姉ちゃんは……」

「今は後だ! しっかり捕まってろ!」

 シュウはラクアに叫んだ後バランスを取り直した。この坂は端を除いて遊技場のように木がない。

 それはありがたいのと同時に彼らが狙い撃ちされる危険を孕んでいる。

「くそ! 敵がきた!」

 シュウが周りの木々に目を凝らすと白いローブを着んだ集団が見えた。銃を抱えこちらに狙いをつけてくる。

「仮面男が雪山を滑ってるぞ!」

「撃ち抜いてやれ!」

 男達の叫び声が聞こえる。

 ここでやられるわけにはいかない。

 シュウは拳銃を抜き、敵に向かって引き金を引く。滑りながらの射撃のためよく狙えはしないが、敵を怯ませることは出来たようだ。

 「伏せろ!」という声が聞こえてくる。

 だが、彼らはじりじりと追いつめられていた。両端の木々に現れる敵が徐々に増えていく。

「よく狙え! 一斉射撃だ!」

 山のふもとが見えてきたときにシュウは両端から物凄い数の殺気を感じ、咄嗟にラクアを横に突き飛ばした。

 シュウに向かって銃撃が始まる。

「く! うあ!」

「きゃ! シュウさん!」

 シュウは左肩と右足に被弾した。転がるようにふもとに滑り落ちる。

 うつ伏せに倒れたシュウは歯を食いしばって立ち上がり今の状況を確認した。

 ふもとには敵が三十人ほどいた。

 それに加え雪山から何名か降りてくる。シュウ一人ならば切り抜けることも可能だが、足を挫いたのか立ち上がれないラクアを抱えてこの場から逃げるのは不可能に近い。

「抵抗するな!」

「そいつは無理だな」

 シュウは刀を引き抜く。

 拳銃は転がった拍子にどこかへ行ってしまったようだ。

 だが、それがどうした。二人でここを切り抜けるのだ。

 シュウは目の前のローブの男を思いっきり睨み付けた。

「ほう……負傷した体でこの人数を相手にするというのか。……殺せ!」

 敵は剣を片手に突っ込んできた。

 いつものシュウならば、簡単に斬り返せただろう。

 だが、右足をやられ上手く間合いを取れない。

 対集団の構えをとろうにも左肩が負傷している。

 シュウは防戦一方だった。

「ふん! わざわざ接近する必要はない。撃ち殺してしまえ!」

 敵の集団が銃を構える。

 だが、敵は「ダメよ! まだ殺しちゃ!」というアクアの命令を聞き、銃口から閃光が発射されることはなかった。

 坂を見上げると、氷の板のようなもので滑り降りてくるアクアの姿をした者が見えた。

 アクアは、着地を決めると白いローブの集団に混じった。

「は……しかし、あの方のご命令は……」

「わかってるわ。でもどうせなら絶望した顔が見たいじゃない。ふふ……シュウ。あなたにロマン溢れるプレゼントよ……。おいで!」

「何? ……ッ!!」

 シュウは集団の中から現れた一人の男を見て絶句した。

 間違いない。シュウのかけがいのない友人の一人だ。

「ふふふ! そう、その顔よ! その顔をずっと見たかったの! この子の記憶だと……あなたたち親友だったんでしょ!?」

「ラ……ライド……」

 白いローブを着ているが、その男はシュウの親友であるライドであることは確実だった。

 見間違えるものか。アクアと共にこの三年、片時も忘れたことはない。

「ふふ、安心して! 彼は生きてるわよ! 最も、それが幸福かは別だけどね!」

 シュウはライドの瞳を見て悪寒がした。その瞳の中には何の感情も浮かんでいない。

「今のライドはただの操り人形……まあ、何も知らないで利用されるよりただの人形の方がマシよね。そう思わない?」

 シュウはアクアの言うことが……いや、この状況そのものが理解出来ない。

 そもそもシュウは目の前の出来事が現実だと信じたくなかった。

 復讐を誓って三年、修行を積み、敵の正体を掴んだ。

 あとは灰の男を見つけるだけだ。

 だが、これは何なのか。

 復讐の原動力となっているはずの二人が今敵として、シュウを殺そうとしている。

 俺はまたアクアを、ライドを殺さなければならないのか? それとも、あの時見殺しにしてしまった二人の復讐が今果たされようとしているのだろうか。

 シュウは混乱する頭の中でそんなことを考えた。

「ちゃんと聞いてる? ふふ、いい具合に絶望してるわ……。でもね、もう少しボリュームアップしようかしら。ライド、ラクアを殺しなさい。それとシュウ。これ落ちてたわよ?」

 アクアはライドに指示を出したあとシュウの足元に拳銃を投げた。

 落ちていたのを拾ったのだろう。今のシュウの体ではライドの攻撃をどうにかすることはできない。

 ラクアを殺させないためには、シュウがライドを撃つしか方法はない。

 頭では十分理解していた。だが体が拒絶する。

 ライドがゆっくりと猟銃をラクアに向けた。

 ラクアはおびえた表情をしている。

 彼女を殺させてはだめだ。

 だが、ライドを確実に止めるには拳銃で頭を撃ち抜くしかない。

(だが……しかし……)

 シュウは動けなくなっていた。体の傷のせいではなく、心の傷のせいで。

「さあ、最高な光景をみせましょう! シュウ!」

「同感です」

 アクアは突然聞こえてきた声に驚き慌てて上を見上げた。

 白い女。

 アクアはまずそう思い、神々しく輝く右腕を確認したあと後ろに跳んだ。

 アクアが立っていた場所に右腕が触れた瞬間、眩しい輝きとともに爆発した。

「まさか! なぜここに!?」

「それはこっちのセリフだぜ」

 そう言いながら狙撃銃を乱射しつつ一人の男が現れた。

 狙ってないように見えるが、その閃光は確実に教団の兵士の頭を撃ち抜いている。

「っ! ライド! ラクアを!」

「ワカリマシタ」

 無感情な返事をしライドがラクアに向けて引き金を引こうとする。

 だが、次の瞬間には猟銃はナイフの斬撃によってバラバラになっていた。

「我が弟よ……ここまで来てためらうのか?」

 その声を聞き固まっていたシュウの体が動き出した。

 懐かしい声だ。

「兄さん!?」

「久しぶりだな……だが再会を喜ぶ暇はない」

 シュウとラクアを守るように三人の者が立ちふさがった。

「シュウさんと……その少女は私たちの後ろへ」

「セレナ様。我が弟の傷は既に回復しています。弟も共に……」

「ダメです! 我々だけでやるのです!」

 セレナと呼ばれた女性は、アヴィンに反論するとアクアに向かって拳を構えた。

 すると、アクアに憎々しい目で睨まれる。

 セレナはアクアの眼差しに疑問を抱いた。

「何です? それほどの憎しみを……」

「私はあなたが嫌い! ……気分最低だわ。退きましょう」

「はっ!」

 撤退を命じたアクアは杖を雪山に向けて振りかざした。

 すると山から轟音が響き渡る。

「雪崩です! セレナ様!」

「こちらも退きましょう! アヴィン、レイ!」

「御意」

「はっ!」

 アヴィンとレイと呼ばれた男が返事をし、シュウとラクアを抱え撤退し始めた。

「アクア……ライド……俺は……」

 シュウは轟音が鳴り響く森の中、アヴィンに抱えられながらつぶやいた。



 セレナたちはストリマの里で休息を取ることにした。

 ラクアが足を捻っていたからだ。

 里に入るとラクアは人々に歓声を受けて迎えられたが、彼女の表情は暗いままだった。

 人魚たちに案内された家でシュウたちは黙々と休息を取っている。

「あの」

 休憩しているシュウたちにラクアが話かけた。

 時間が経ち精神的にだいぶ落ち着いてきたシュウが応える。

「何だ? ラクア」

「……お姉ちゃんは……死んだんですか……?」

 ラクアは震える声でシュウに尋ねた。

 シュウはその言葉にショックを受けたが、自分には応える義務がある。

 そう考えて、ラクアに真実を伝えた。

「アクアは……三年前死んだ。……殺された」

「っ! ……そんな……嘘……本当に……」

 ラクアの瞳から涙がこぼれ始めた。

 その光景はシュウの心に重くのしかかる。

 シュウはラクアの泣き顔を見て、こんなところで呆けている場合ではないと思悟った。

 そして、自分たちを助けた者を見る。聞きたいことは山程あった。

「弟よ。外で話そう」

 アヴィンはシュウを促すと外に出て行った。

 シュウと他の二人もそれに倣う。

 シュウはラクアの泣きじゃくる声を聞きながら扉を閉めた。

「……何から話そうか」

「……最初から全てだ。三年前から」

「私がお話します」

 アヴィンがどう話すか思案していると、セレナが会話を引き取った。

 その顔には三年前に見たときと同じような悲しげな表情が浮かんでいる。

「私とアヴィン、レイはずっと前からある組織と敵対していました。その組織の名は教団。その真意は不明ですが、強力な遺物を集めていることは確かでした。そしておそらく……秘宝を狙っているのでしょう」

「秘宝? 何をバカな」

 シュウは自分がバカにされていると思った。

 秘宝を見た人間はこの世に一人もいない。

「いえ。秘宝は存在します。今まで秘宝が人の手に渡らなかったのは存在する場所に鍵がかかっていたからです」

「……まさかその鍵が遺物だとでも? 有り得ない」

「いや、そのまさかだ」

 レイがセレナの代わりに答えた。

「少なくとも連中と俺たちはそう思っている。とはいえ、なぜその刀を狙ったのかはわからんが」

「……今日は色々ありすぎて訳が分からない。これは本当に現実か?」

「間違いなく現実だ。我々も、アクアとライドも、秘宝もな」

「……あの洞窟で本当は何が起きていたんだ?」

 セレナは間を空けてシュウに真実を話始めた。

「私たちは教団が刀を狙っているということを知り、対策を講じました。目的は分かりませんが、良からぬことを考えていることは明白でしたから。あなたが刀を探しに行く事を知った時、まず同行者に我々の仲間…アルドを加えるようにギルドに根回しをしました」

「あれはやはり仕組まれたことだったか。アルドめ……」

「続けます。敵の中に潜りこんでいたレイがアルドに情報を送り、敵が来る前に遺物を手にしたあなた方と私が合流する……はずでした」

「予定が狂ったんだ。連中の行動が急に素早くなった。まるで我々の計画を察知していたかのように」

 レイがシュウに状況を説明したが彼は黙って話を聞き続けた。

「そのため洞窟で戦闘が起こるという予想外の事態が発生しました。私は出口であなたたちが逃げてくるのを待ち続けましたが……出てきたのはシュウ、あなただけでした」

 シュウは急速に怒りが湧き出てくるのを感じ、セレナに向かって怒鳴った。

「何で洞窟内に救出に来なかった!? その場にいたのならば! それになぜ前以て知らせなかった!?」

「無茶を言うな、弟よ。あそこには強敵がいたのだ。灰色の奴が。それに、下手に接触すればお前は間違いなく人質として捕らわれていただろう」

「……だからと言って!」

「待て……責めるなら二人じゃない。お前が怒るべきは相手は俺だ」

「なぜだ!?」

 シュウは二人を庇ったレイに向かって叫ぶ。

「お前の左目を撃ったのは俺だからだ」

「……っ! 何だと!?」

 シュウはレイに掴みかかった。レイは懺悔するように話し続ける。

「お前を止めようとしてな……他に方法が思いつかなかった……」

「お前!」

「落ち着け。冷静になるんだ。お前だったらわかるだろう?」

 アヴィンに諭されシュウはレイを離した。だが彼の怒りは収まらない。

「兄さんは何をしていたんだ!?」

「俺は、別件でな。その場にいなかった。お前は我々に利用されたと感じているだろう。それは半分正解だが、もう半分は違う」

「……どういうことだ?」

「説得力はないと思いますが……あなたを守りたかったのです」

 シュウは意味が分からない。俺を守る?

「お前は、遠くない未来、教団との戦いに巻き込まれることが確定していた。俺が奴らと戦う限りはな。奴らは手段を選ばない。お前もよく知っているだろう?」

 シュウはレットとシンディ、アクアの姿をした者を思い出した。

 奴らはどんな手でも目的のためなら利用する。

 だが、理解と納得は別だ。

「それでも!」

「そうなる前に自分を守る術を身に着けて欲しかった。だからその刀をお前に託した」

(あの資料は俺の為に?)

 シュウは混乱してきた。一度冷静になった方がいいのかもしれない。

「……少し頭を冷やしてくる」

「……シュウさん……」

 シュウはそう言い残してどこかへ行ってしまった。

 その様子を見たセレナが心配する。

「我が弟ならわかってくれます。ご安心を」

「……私、ラクアさんの様子を見てきます」

 セレナが家の中に入って行く。

 アヴィンとレイはセレナが家に入ったことを確認した後、二人で話始めた。

「セレナ様は……」

「大丈夫だ。だがあまり時間はない。急がなければ」

「あの方に連絡は?」

「既にしてある。しかし、全てを話せないというのも辛いものだな」

 レイはアヴィンの言葉に同意するとセレナがいる家を見つめ、つぶやいた。

「セレナ様のためだ。仕方ない」



 シュウは里の中を歩き回りながら状況を整理していた。

「……全ては教団のせい……なのか?」

 最初、シュウはセレナやアヴィン、レイとアルドに対して怒りを隠せなかった。

 だが、冷静になって考えてみると彼らのしたことがわかる気がしてくる。

 

 アヴィンの親族ということで、いずれ教団はシュウを攫いに来ただろう。

 そうなる前にシュウが刀を手にすることが出来れば、少なくともある程度の自衛力はつく。

 レイの行動についても、あの状況でシュウの目以外の部分を撃った場合、シュウは灰の男に突撃するか、足を失って逃げられなくなるかのいずれかだったはずだ。

 あくまでセレナも、死地に向かおうとしたシュウを気絶させただけだ。

「……だが、まだわからないことがある……」

 

 そもそもこの刀についてだ。

 なぜ兄さんはこの刀が俺に使えると知っていた?

 それに秘宝についてもだ。


「……ラミレスは秘宝など存在しないって言ってたな……」

 シュウは修行時代にラミレスに秘宝について聞いたことがあった。

 しかし、ラミレスは秘宝という単語を聞くや否や物凄い剣幕で怒鳴った。

「秘宝などありはしない! そのようなものに憧れを抱いてはならん!」

 普段は温厚な彼らしからぬ行動だったためシュウはよく覚えていた。

「……今度は冷静に話を聞こう」

 シュウは独り言をつぶやいた後、セレナたちが居る家に戻った。



 扉を開けシュウが家に入ると、セレナが何か液体の入った瓶を飲んでいた。

「何を飲んでいるんだ?」

「……これは……漢方です。体にいいので」

 健康意識が高いのだろうか。

 シュウは、とても美味しそうに見えない液体を飲むセレナを見てそんなことを思った。

 だが、聞くべきことはそんなことではない。

 セレナが、漢方を飲み終わるのを確認したあと、シュウは秘宝について訊いた。

「単刀直入に聞く。秘宝とは何なんだ?」

「……願いを叶えてくれる不思議な物、と私は聞いています」

「……伝承とあまり変わらないな……。一つだけ何でも願いを叶えてくれる不思議な球か?」

 セレナはその言葉を即座に否定した。

「いえ。……願いは三つ叶えることができます」

「……それは……本当ならすごいことだな」

 シュウは、正直反応に困っていた。

 未だに秘宝の存在が信じられないのだ。

 だが、泣き止んで呆けていたラクアは違った。

「何でも……お姉ちゃんも……?」

「……ラクア……。セレナは何で秘宝を?」

「……私は聖王セントの命令で秘宝を手にするために行動しています。……目的は世界の平和です。聖王は約束してくださいました。この世から悲しみを無くすと」

 シュウは最初セレナが冗談を言っていると思った。

 だが、セレナの眼差しは真剣だ。

 秘宝が存在するかはともかく、セレナは本気で世界を救いたいと思っているようだ。

 シュウは、セフィロからセレナが親と妹を亡くしたという話を聞いたことを思い出した。

 その事と何か関係があるのかもしれない。

「……世界の平和か。確かに悪くないな」

「……ええ。そのためなら私は……」

 セレナはシュウが考えているより重い決意を固めているようだ。

 シュウはセレナに興味を持ち始めた。

 ラミレスには怒られるだろうが、秘宝についてもっと詳しく調べたほうがいいかもしれない。

「鍵となる遺物は……七大国の国宝か?」

「はい。そのため教団は各国に手を回しています。ゼファーでセフィロ様が暗殺されかかったのはよくご存じでしょう?」

「正確には一度暗殺されてしまったがな……。そうか! レイにはガンショップで一度すれ違ったのか」

「やっと気づいたな。セルンを狙撃したのも俺だ」

 セルンに当たった弾はやはり流れ弾などではなかったようだ。

 シュウは自分の旅が見守られていたことに気付いた。

「ずっと俺を監視してたのか?」

「ずっとではない。お前は十分強いからな」

 アヴィンはシュウを珍しくほめた。

 兄が人を、ましてや自分を褒めることはめったにない。

「だが、覚悟が足りん。お前は優しいシュウのままだ。……しかしそれでいいのかもしれんな」

「否定はしない。ラクアが危うく殺されるところだった……」

 シュウは復讐のために覚悟を決めたつもりだったが、ラミレスやアヴィンの言う通り昔の自分のままだ。

 シュウは今回の件で初めて自覚した。

「……そのままでいいと思うぜ。下手に変わろうとするとロクなことにならない……」

 レイは遠い目をした。何か思い当たる節があるのだろうか。

 シュウがそんなことを考えていると、ラクアがこちらを見つめてきた。

「どうした? ラクア」

「……お姉ちゃんは殺されたんですよね? その犯人が教団……って組織にいるってことでいいんですか?」

「……そうなるな」

 ラクアはシュウの返事を聞くと一人で考え込んでしまった。

 無理もないことだ。肉親が殺されたのだ。

「……ところで一つ聞かせてくれ。兄さんは何であの刀が俺に使えると思ったんだ?」

「……知り合いに聞いたのだ。サムライの子孫なら扱える刀があるとな」

 アヴィンはあまり言いたくなさそうに答えた。

 引っかかる点はあるが、もう十分だろう。

 ラクアをかろうじて救出し杖も無事だった。

 休息も十分取った。旅に戻る時間だ。

 シュウはそう思い、皆に旅に戻ることを伝えた。

「敵の目的はわかった。俺は旅を続ける。色々教えてくれて助かった」

「待ってください。あなたは雷の国に行くのでしょう?」

「……そのつもりだが」

 シュウが訝しげにセレナを見る。

「ならば私も同行します。雷は今土の国と緊張状態です。土の同盟国として聖王に諫めに行くよう申し付かっています」

 シュウが目を見開いた。

 セレナはついてくるつもりらしい。

 しかし、それはいいことなのだろうか。

 シュウが悩んでいるともう一つ、悩みの種が増えた。

「わ、私も行かせてください!」

 今までずっと考え込んでいたラクアが声を出した。

 シュウは今度はラクアを見つめ、その決意を固めた表情を見てため息をついた。

「兄さん……レイ。いいのか?」

「……構わない。その方が安全だろう」

「俺もだ。変な気は起こすなよ?」

 仕方ない。女が固めた決意は簡単には覆せない。

 シュウが学生時代にアクアから学んだ事だ。

「わかった。兄さんたちは?」

「我々は敵の動きを探る。くれぐれも油断するな」

「……じゃあ、俺たちは雷の国ボルティに向かう」

 シュウはアヴィンにそう言い旅支度を始めた。

 一つ気になる点はラクアの杖だ。また暴走してしまう可能性がある。

 シュウは、ラクアから目を離さないことを決め準備を整えた。

「アヴィン、レイ。何かあったらすぐ私へ」

「わかっています。お気をつけて」

 セレナはアヴィンとレイに別れを告げ先に出て行った。

 シュウはラクアを再び見つめた。

「ラクア。本当にいいんだな?」

「はい。私はお姉ちゃんをあんな風にした人たちを許せません」

「……秘宝で姉を生き返らせるつもりか?」

 シュウがそう問うとラクアは目を瞑った。

 そして、シュウの問いに答える。

「分かりません。でも秘宝を探すとしたら、ロマンのためです」

「ロマン……」

 アクアは何かあるたびにロマンを求めた。

 そして、アクアが追っていた最大のロマンは秘宝だ。

「わかった。共に行こう」

「はい!」

 ラクアが元気よく返事をする。シュウはラクアと共に扉の外へ出た。

「我が弟よ……セレナ様を頼む」

 アヴィンは弟が出て行った扉を見つめてつぶやいた。




分かりづらい表現や誤字脱字などあるかもしれませんがご了承ください。

この話は分割された亡国ストリマⅠの続きです。

読んで下さった方ありがとうございました。

やっとセレナが出せた…。しかし話分かりづらいかな…

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