雷の国Ⅰ
キキーッ! という音と共に汽車が止まった。
それを聞いた眼帯の男……シュウが全体的に白い印象を持つ女と顔を見合わせる。隣で寝ている水色髪の少女が少し揺れた。
「ここで停まるのか? まだ雷の国に入ったばかりだが……」
シュウは白い女……セレナに尋ねる。だが、セレナもよくわからないといった風に首を傾げるだけだ。
「特別急行ですので、まだ停まるはずは……。停車駅もあと二つ程先なはずです」
二人で悩んでいると駅員が個室のドアを開いた。二人の視線が駅員に向けられる。
「申し訳ありません。この汽車はここが終点になります」
駅員が事務的な口調で対応する。
シュウとセレナは再び顔を見合わせた後、駅員に質問した。
「なぜです?」
「……実は本国は土の国との緊張状態にありまして、直通の車両は今はないんです。といっても数日前まではあったんですが……なんでも土に動きがありそうとかで……」
シュウは少し考え、駅員に首都ラインズへの行き方を聞いた。
「ラインズへ向かうために他に方法は?」
「すみませんが、徒歩か馬で駆けて行くしかありませんね……。馬車も通ってないので……」
「国の事情ならば仕方ありません。お気になさらず。ラクアさん、起きてください」
セレナが水色髪の少女を揺すった。ラクアは「ふあ……」と言い、目をこすりながら起き上った。
「今日はすぐ起きたな……まあお昼寝だからか……?」
シュウがすぐ起きたラクアを見て独りごちる。シュウはラクアを起こすのに二度ほど手間取っていたからだ。だが、そんなシュウのつぶやきを気にせずラクアは大きな欠伸をし「おはようございます!」と元気よく挨拶をした。
「もう着いたんですか?」
「いや、まだここはディーン村だよ。雷の国に来たばかりさ」
「え……? どうして……」
「お客様、申し訳ございません。そろそろ降りて頂かないと…」
ラクアがシュウに問いを投げかけたが、駅員が困った様子だったのでシュウ達は汽車を降り、駅から出た。
看板でラインズの方向を確認しながらラクアに事情を説明する。
「……じゃあ歩いて行くんですか?」
「そういうことになりますね……。馬は借りられませんでしたし」
それを聞いてラクアはしょんぼりした。
ストリマの里から汽車に乗るまで半日も掛けて歩いたばかりである。
当然と言えば当然だった。
「このままここでしょんぼりしてもしょうがない。先に進むぞ」
シュウが先陣を切って歩き出しセレナもそれに続く。
その後をラクアがハットを被り直しながら追いかけた。
森の中を進んでいるとラクアが座り込んだ。それを見たセレナが心配をする。
「ラクアさん、大丈夫ですか?」
「ごめんなさい……少し疲れました……」
セレナはシュウを見る。すると、シュウは少し困った表情をした。
「……後少しで次の村につくから先に進みたいんだがな……日も暮れそうだし」
「後少しならば休憩を挟んでも問題ないのでは? 宿で休んだとはいえ、昨日は歩きっぱなしでしたし」
「……そうだな。少し休憩しよう」
「ありがとうございます……ふう」
ラクアが近くにあった石に座り一息つく。
シュウはそんなラクアを見て少し不安になった。
こんな調子で辿り着けるだろうか?
だが、水筒を取り出し、水をごくごく飲んでご機嫌なラクアを見ているうちにシュウは自分の考えがバカバカしくなった。
彼女の意志は固い。いまさらそんなことを考えても仕方ない。
「お水、欲しいんですか?」
「いや……おいしそうに飲むなと思っただけさ」
自分を見つめていたシュウが喉を乾いていると思ったのだろうか。
ラクアが水筒を差し出してきたがシュウはそれを断り、少し離れたところに立っているセレナを見た。また漢方を飲んでいるようだ。
「何か?」
「よく飲むなと思ってな。一日に何回飲むんだ?」
「……だいたい三回です。健康のためですから」
セレナはそう言うと一気に瓶を飲み干す。
だが、器官にでも入ったのだろうか、咳き込み始めてしまった。
シュウはセレナに近づき背中を擦った。
「一気に飲むから……」
「あり……ごほっ……とう……ごほっ……ます……」
シュウは久しぶりに女性に気を使ったなと思いつつ、セレナの背中を擦っていた。
そのためか、普段のシュウなら気づくような気配を彼は見落としていた。
「ガルアア!」
「何!?」
正面から狼のような魔物が飛びかかってきた。
シュウはとっさにセレナを横に突き飛ばす。
そのため、シュウは回避をすることが出来なかった。
狼に飛びかかられシュウは狼と取っ組み合いになってしまう。
「ギャオオオ! グアウ!」
「くっ! くそ!」
シュウは、右手で狼の首元を掴み、噛み殺そうとしてくる牙を顔すれすれのところで抑えている。
左手でナイフを抜こうとするがなかなか抜くことが出来ない。
狼の爪に妨害されているからだ。
「「シュウさん!!」」
セレナとラクアの叫び声が聞こえる。
しかし、彼女らが気にするべきことは俺じゃない。
そう思ったシュウは二人に警告を発する。
「俺に構うな! 他にもいるはずだ!」
シュウは叫びながらナイフを抜くことを諦め、左手を狼の首を掴んでる右手に添えた。
そして、思いっきり首を絞める。
しばらく絞めているとゴキッ! という骨が折れる音と「クガッ!」という狼の断末魔が聞こえた。
シュウは狼の死体を蹴飛ばし状況を確認する。
すると、狼の群れに囲まれていることがわかった。
セレナとラクアの周りに三体ずつ。
そして自分の周りにいる二体いる。合計八体に囲まれていた。
「セレナ! ラクア! 大丈夫か!?」
「私は大丈夫です」
「私も……きゃっ!」
悲鳴とともにラクアが石につまずいて転んでしまった。
まずい! シュウは慌ててラクアに駆け寄ろうとしたが、狼に阻まれて進むことが出来ない。
シュウは抜刀し、近くの狼に斬りかかった。
一匹は難なく斬り伏せたが、二体目が素早く動いてなかなか倒すことが出来ずない。
その為シュウの額に冷や汗が流れた。
(くそっ!)
シュウが悪戦苦闘している間に、起き上がろうとしているラクアに狼が忍び寄る。
「ラクアさん! この!」
セレナが狼を殴り殺す。
だが、まだ二体残っている。
セレナは間に合わない。
シュウの頭に昨日の悪夢がよぎった。
「くそ! 邪魔だ!」
シュウは叫びと共に二体目を捉え二つに斬り裂いた。
いける。シュウはそう思いながらラクアを見た。
しかし、彼が見たのは今にもラクアに食いつこうとしている狼だった。
「ラクア!」「ラクアさん!」
「あ……」
ラクアと狼の目があった。ラクアは恐怖で動けなくなっている。
彼女は噛みつかれる瞬間、目をぎゅっと瞑った。
グシャ! という音と共に血が飛び散った。
「え……?」
どさっという死体が倒れる音を聞き思わず疑問の声が出る。
ラクアは何が起こったのかわからなかった。
自分を殺そうとした狼の頭に矢が刺さっている。
「何だ!?」
シュウは慌てて矢が飛んできた方向を見る。
その先には黒いフードを被った少女が木の上からこちらを見下ろしていた。
手には弓を携えている。
謎の少女は背中の矢筒から矢を取り出し、弓を構えて矢を放った。
「ギャガア!」
一発の矢は正確に狼を射抜いた。矢が刺さった狼が絶命する。
少女はただひたすらに正確な射的で黙々と機械のように弓を射た。
狼の残党はあっという間に骸に変わり果てていた。
「ラクアさん! 怪我は?」
「私は大丈夫です……あの人のおかげで」
ラクアは木の上に立つ少女を見上げた。
少女は自分に注目が向いていることに気付くと、木の枝と枝を器用に渡って森の奥へと去って行ってしまった。
だが、踵を返すとき、少しだけ顔が見えた。
黒髪に白い肌を持つ可愛らしい少女だ。
「行ってしまったな……。ラクア、行けるか?」
「はい……ごめんなさい……私の……」
「気にするな。みんな油断していた。悪いが急いで村に向かうぞ。宿で休もう」
シュウの言葉に二人は頷き、三人は早歩きで先の村に向かった。
「……うかつすぎ……。あんな人たちがいるなんて……」
フードの少女は、移動する三人組を見ながら淡々と独り言を言い、呆れた。
宿で休んだシュウ達はいくつかの村を経由して首都ラインズへ急いだ。しかし、適度に休憩を挟まなければいけなかった事に加え、魔物の襲撃が数回あったため、ラインズへ着いたのは三日後だった。
防壁らしき物が先に見えたシュウ達は足早に道を進んだ。堅牢そうな門とその前に並ぶ大勢の人々が見えた三人は疑問を感じつつも列の最後尾に並ぶ。
「この行列は何だ?」
「私には……」
シュウが感じていた疑問を口にするがセレナもよくわからないらしい。
シュウはうんざりした。この国に入ってからこんなことばっかりだ。
シュウが心の中で愚痴を言っていると列に並んでいる人の会話が聞こえてきた。
「まだかかるのかよ。俺はちゃんと税を納めている国民だぞ!」
「まあそういうなよ。密偵が入り込むよりマシさ」
どうやらこれも土の国とのいざこざが原因らしい。シュウはため息をついた。
そんなシュウを見たラクアが励まそうと声を掛けてくる。
「ま、まあここまで着きましたし、後少しですよ!ほら!」
ラクアの励ましを聞いていると列が大きく動いた。
前を見ると、肩を落としながらこちらに向かってくる人が見える。
(何で戻ってくるんだ?)
シュウは不思議に思ったが、その問いは図らずもその人の怒りに満ちた独り言で解決した。
「何だよ! 通行証なんて聞いてないぞ!」
ラクアが「通行証……?」とつぶやきながらセレナを見る。
だが、セレナは首を横に振った。
シュウは嫌な予感がし、それは見事に的中した。
「通行証を呈示せよ! さもなければここは通れん!」
門番らしき男が威圧的な口調で列に向かって叫ぶ。人々は門を通る前に門番に紙を見せ通過していた。
次はシュウ達の番だ。
「通行証を呈示せよ!」
シュウ達は門番に命令されたが、そんな物は持っていない。
シュウは門番に事情を話した。
「すまないが、最近この国に来たばかりでそんな物はないんだ」
シュウの話を聞いた門番は面倒くさそうな顔をして、シュウ達を追い払おうとする。
「ないなら通れん! 大人しく帰るんだな!」
「そこをなんとかなりませんか?」
セレナが門番に頼むが門番の言葉は変わらない。
「帰れ!」と大声で言われラクアはびっくりしたように首を引っ込める。
シュウ達がどうしたものかと困っていると門の向こう側から一人の、長身の男がやってきた。
「ちょっといいかな?」
「何だ貴様! 邪魔をするな!」
「まあ、そういうなよ。そいつらは俺の知り合いなんだ。通らせてはくれないか?」
長身の男、アルドは門番を説得する。
アルドを見たシュウは驚いたが、アルドと門番の交渉が終わるまで黙って事の成り行きを見守った。
「出来るはずが! ……これは?」
アルドが門番の手に金貨を数枚握らせ口元に指を当てた。門番の耳元でそっと囁く。
「金に困っているんだろ? 受け取れ」
門番は金貨をポケットにしまった後、「通れ!」という声と共にシュウ達を通した。
シュウ達はにやけ顔をしている門番を後目にボルティの首都ラインズへ入った。
正方形の形の防壁に囲まれた街は、雷の色である黄色を基調とした美しい街であったが、殺伐とした空気が折角の街並みを台無しにしていた。
あちこちに兵士が配置され、目を光らせている。
イグナイトも騎士や討伐者がたくさんいたが、ここまで殺気だってはいなかった。
「ようこそ、ボルティへ。といっても俺この街好きじゃないけどな」
「アルド……。お前は」
「アルド。よくやってくれました。おかげで門を通ることが出来ました」
シュウがアルドに文句を言おうとしたがセレナの称賛により遮られる。
シュウが罰の悪そうな顔をしているとラクアに背中をポンポンと叩かれたため、ラクアへ振り向いた。
ラクアは好奇心旺盛な目をしてあちこちに指を指し、子どものようにはしゃぎ声を上げている。
「すごい、すごいです! これがボルティですか!?」
ラクアは豪華な邸宅、店、装飾品を見て目をきらきらさせている。
そういえば彼女はストリマの外へ出たことがないんだったか。
シュウが少し困った様子でラクアを見ているとアルドが声を掛けた。
「おっ、お嬢さん。こんなにここが珍しいのかい?」
「え、は、はい。えっと……」
「アルドだよ。ここでこんなに喜べるならゼファー辺りなら興奮して夜も眠れないだろうな。いい店を知ってるから、案内しようか?」
「ホントですか!? あっ……でも……」
ラクアはシュウとセレナを見る。
シュウはすぐにOKを出した。
「行ってきていいぞ。少しやることがあるしな」
「やること? でしたら……」
「セレナもラクアと行ってくれ。正直俺はまだアルドに不信感がある。それに……」
シュウは再びはしゃぎ始めたラクアと楽しそうに談笑しているアルドを見る。シュウは妙な心配をしていた。
「それに?」
「あの男の女の趣味が……いやなんでもない。行ってくれ」
不思議そうな顔をするセレナを送りだしシュウは街の中を歩きだした。
武具店を探さなければならない。
シュウは煙幕と乱射したせいであまり力が残ってない火鉱石を補充しなければならなかった。
店を探しながら人の往来が多い道を歩いていると男の懇願の声が聞こえた。
シュウは声のした方に進む。右の路地、裏道だ。
少し進むと黄色の鎧を着た兵士に男が土下座をしている。
シュウは聴き耳を立て、会話を聞いた。
「頼む! 後少し待ってくれ! そうすれば金が……」
「無理だ。もう期限は過ぎた。大人しく徴兵命令を受け入れるんだな」
「そんな! 最近子どもが生まれたばかりで……」
「うるさい! 素直に言う事を聞け!」
兵士に男が蹴られる音を聞き、シュウは仮面を取り出した。
どんな事情があろうと無抵抗の国民を兵士が蹴飛ばしていい道理はない。
シュウは背後からそっと兵士に近づき、首を絞めて気絶させた。
「ひっ! な、何が!?」
「落ち着け。危害を加える気はない。何があった?」
男は突然現れた仮面の男を警戒していたが、シュウの言葉を聞き事情を話始めた。
「実は……税が納められなくなって……徴兵させられそうになっていたんだ」
「なぜだ?」
「急に税が引きあがったんだ……同じような奴が何人も徴兵された……」
「それは土の国との緊張状態のせいか?」
すると、男は大声を上げてシュウの質問に答えた。
「そうだよ! 最近の税の引き上げも首都まで汽車が来ないのも、みんなそのせいだ! 土が密偵を送りこんだとかで……」
「密偵?」
「誰か! 応援を!」
シュウが詳しく話を聞こうとした時、足元で気絶していた兵士が大声を上げた。
どうやら目を覚ましたらしい。
シュウは兵士の頭を踏みつけ再び眠りにつかせた後、路地に入ってきた兵士が見えたため逃げ出した。
「待て! あの男、密偵だ! 本部に連絡を!」
「くそ!」
シュウは毒づきながら走る。
俺が密偵だと? 冗談もいい加減にしてくれ。
逃げ込んだ先に兵士の集団が見えたためシュウは方向転換を余儀なくされた。正方形の街に効率よく配置された兵士達の効果は抜群だ。
目標を間違えさえしなければ。
走っても走っても兵士に鉢合わせたシュウは一度屋根に上ることにした。
狭い路地で壁を蹴り家の屋根に上る。
シュウが居た場所に的確にやってきた兵士達は戸惑いの声を上げた。
「いないぞ!」
「バカな! あのルートではここを通るはず……」
兵士達は困惑の叫びをあげしばらく辺りを見回していたが「別の道を探すぞ!」という隊長の一言で移動していった。
シュウは屋上で安堵する。
「さて……。ばれなきゃいいがな」
シュウは仮面を外して路地に降り、知らぬ存ぜぬといった風に大通りに入った。
シュウの姿を見た兵士が疑惑の視線を向けたが、仲間と少し会話してどこかへと去って行く。
シュウは一息つき、見つけた武具店に入って目的の品物を買い、セレナ達を探す。
彼女達は最初に別れた広場にいた。
「シュウさん! 大丈夫でしたか?」
セレナが心配した様子で話しかけてくる。ラクアもシュウを見て安堵したようだ。
「何もないが。なぜだ?」
「侵入者があったとかで……。でも無事のようですね」
セレナがふうと息を吐き出す。そんな様子を見たシュウはセレナに真実を言いづらくなり、後回しにした。
アルドだけが全てを理解したような顔をしている。
「……まあ、今日は騒がしいようだし、宿に行かないか?」
「そうですね。城に向かうのは明日にしましょう」
シュウの提案にセレナが同意しラクアも頷く。
アルドが既に手配していた宿屋へと案内した。
部屋は二部屋取ってあり、シュウとアルド、セレナとラクアに別れた。
シュウが部屋の椅子に座って一息つくと、アルドが話しかけてきた。
「随分と派手にやらかしたな。こんな時に」
「わざとじゃない」
「だとしてもだ。セレナ様が城に向かうのが難しくなったぞ」
「……政治には興味がない」
シュウがそう言うとアルドはため息をついた。
「お前がやらかすと俺の仕事が増えるんだよ。デートに行けなくなっちまう」
その言葉を聞いたシュウは声を上げた。
「平気で嘘をつく男に言われたくないな。少なくとも、イグナイトで正体をばらせただろう」
「……まあそれはそうだが、教団のお嬢さん……シンディがいたろ? リスクは避けたかった」
「……ふん」
シュウは納得はしないが理解は出来ている。
シュウは冷静になり、城へ入る方法をアルドに聞いた。
「城へはどうやって? これだけの警備だ。城へも簡単には入れないだろう?」
「そのためのセレナ様だったんだがな……。今は下手に城に入ると密偵と間違われちまう。だから……」
アルドは用紙を取り出し、シュウに渡した。
光の国シュトナの文書だ。和解案らしきものが書かれている。
「俺が代わりに届けろと?」
「そういうことだな。お前なら……」
「密偵と間違われても問題ない、か?」
シュウは皮肉を言った。
それを聞いたアルドがにやりと笑い、その問いに答えた。
「そういうことだ。まあ、さすがに公式の文書を持ったお前を捕まえたりはしないはずさ。あくまで念のため、セレナ様の安全のためだ」
「まあ、いいだろう」
シュウは納得し文書を懐にしまった。
元より教団という脅威に対しての警告を王にしなければならない。
それに今回の騒ぎはシュウの責任だ。自分のせいで彼女に危害が及ぶのは避けたい。
「セレナ様とラクアのお嬢さんには俺から説明しておく。しかし、あのラクアって子、本当に18歳か?子どもみたいにはしゃいでたが」
「……姉に似たのさ……」
シュウはそうつぶやくと装備を片隅に置き、早めに床に入った。
セレナとラクアはシュウが城に向かうと知ったらついてくるに違いない。
彼女達が行動を始める前に城へ向かわなければ。
アルドはシュウがベットに横になったのを確認すると札を持って外に向かった。
親友に連絡と報告をするためだ。外の空気を吸いながら札に印を書き込み耳に当てた。
「アヴィン。俺はセレナ様と合流した。……ああ、お前の弟もいっしょだ。ただ、予定が少し変わった。シュウが一人で王と謁見することになりそうだ。……わかっている。……あの件はまだだ……それもわかっている。大丈夫だ。セレナ様もな。特に変わった様子はない。……ああ。全てはあの方の計画通りだ…っと」
アルドは札を耳元から離した。
セレナが後ろに来たからだ。
アルドはセレナに会釈し、札を彼女に渡す。
「代わりました。アヴィン。そちらの様子は? ……そうですか。……何か分かったら連絡をください。……そう。灰色の男と水色の…アクアという女性。この二人を特に。……お願いします。アルド、お返しします」
セレナはアルドに札を渡し部屋に戻って行った。
アルドは恐らく同じ気持ちになっているであろう親友に話かける。
「セレナ様は恐らく……。……ああ、同感だ。あの人は優しすぎる。シュウに対しての罪滅ぼしのつもりだろうな。……ああ。そこは抜かりない。俺は嘘は付くが約束は守る。お前のもな……それじゃあな。……あの方によろしく」
アルドは札をしまうと部屋に戻って行った。
家の屋根の上から黄色が基調の豪華な城を見つめる一人の少女がいた。
黒いフードを被り、背中に装飾が施された弓を背負う少女は城を見つめ、一瞬悲しげな表情をし、すぐに可愛らしい顔に冷酷な表情を浮かべた。
「……仕方ない……これもみんなのため……でも……」
少女は、冷酷な顔にわずかな戸惑いを浮かべつつ暗闇の中に消えた。
分かりづらい表現や誤字脱字などがあるかもしれませんがご了承ください。
話が長くなりそうなので分割します。
最初に比べて読みやすくなったかなと思っています。あくまで主観ですが…
読んで下さった方ありがとうございました。
キャラの掛け合いが大変だあ…




