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家出

199X年

彼は理容学校に通うのが嫌で家出を決意した。


とはいっても

彼にとっては家出などは特別な事でもなかった。


彼には逃避癖があった。



彼が初めて家出をしたのは小学4年生の時だった。

忘れ物をして担任の教師に殴られるのが嫌で、学校を飛び出した事があった。


その時はそのまま

大阪北摂のS市から奈良県の県境あたりまで2日ほど歩いたが

国道沿いの路上でパトロール中の警察官に見つかり、そのまま補導されてしまった。


結局

その後両親に叱られ

担任と教頭には袋叩きにされてしまった。


その時に鼻を骨折して鼻血が出やすくなってしまった事が

後の彼の人生をやや狂わせる事になるが、仕方のないだった。



その後も幾度となく学校から逃げたり家を出たりしては補導され

ことごとく連れ戻された。


だが今度は違う

もう学校にも通っていないし

なんとしてでも理容学校に通うのを避けたかった。


すぐにでも家を出るのは簡単

だが、それでは今までと同じ事の繰り返しになるだろう。


理容学校に通うといってもまだしばらく先の話のようだし


だからしばらく実家で働いて

家出のための資金を貯める事にした。



そして12月になったばかりの月曜日。

早朝に家出を決行した。


隣の部屋で寝ていた父を起こさないように

静かに部屋の襖を開けて

部屋を出た。


別れ際

ほんの数秒間

彼は父親の寝顔を目つめた。


もう会うこともないだろう

そういうつもりで。



1990年代

その頃は彼にとって 最低最悪のシーズンだった。


彼は臆病で軟弱で不器用で、小さい頃から周囲の人達にバカにされて生きてきた。


家族さえ彼を嫌っていた

友達はいないわけではなかったが、そいつらも同類。

だからウマは合った。


それでも

彼は誰も信じない

愛する人もいなければ

愛してくれる人もいない


寂しい、苦しい、辛い

逃げたい消え去りたい。


どこかのアニメの主人公は「逃げちゃだめだ」って、自分自身に言い聞かせていたけど、その少年は勇敢だと思う。


彼もその少年みたいに

少しでも立ち向かう勇気があったら、少しはマシな人生だったかな。


でも時間は戻らない

彼はただひたすら時間が過ぎていくのを待っただけ。


ゲームしたり

アニメ観たり

漫画やエロ本読んだり


そうやって

ただただ過ごした。


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