王子様の華麗なる偏愛
シンデレラは急いで階段を駆け下りましたが、慌てた拍子ににガラスの靴が脱げしまいました。
時計を見ると、十二時まであと五分です。十二時になると魔法が解けてしまいます。
シンデレラは待っていた馬車に飛び乗って家へ帰りました。
シンデレラの後を追って来た王子様は、落ちていたガラスの靴を拾い上げました。
「なんて美しいのだ……私は必ずや探し出してみせる」
次の日から王子様は衛兵をお供に連れて、ガラスの靴を手に国中を駆け回りました。
そのガラスの靴は、魔法使いがシンデレラの為だけに作った物なので、他の娘が履いても大きすぎたり小さすぎたりと、靴に合う娘は一人もいませんでした。
やがて王子様は、シンデレラの家にもやって来ました。
「さあ、このガラスの靴を履いてみて下さい」
王子様に促されて上のお姉さんが、ガラスの靴に足を入れました。
「まぁ、王子様。この靴、私にピッタリですわ」
上のお姉さんが嬉しそうに王子様に言いました。
ところが王子様は、上のお姉さんの足元に座り込み、「ワイズが合ってない。しかも、見た目より甲高だ」と言い、首を振りました。
「わ、わいず? こうだか……ですか?」
「それに、お前の足はエジプト型だ。私が求めているのはギリシャ型。はい、次」
上のお姉さんを押しのけるようにして、次のお姉さんがガラスの靴に足を入れました。
「きゃぁ! 王子様、まるで私の為に作られたようにピッタリですわ」
王子様は床に這い蹲り、舐めるようにして次のお姉さんの足を見つめました。
「違うなぁ。踝の形が、もう少し尖っていないと。それに血管の浮き具合が気に入らない」
「お、王子様……?」
「それに、踵の形が角ばりすぎだしカサカサだ。お前は駄目だ。はい、次ぃ!」
「ひっ、酷い!」
シンデレラはドキドキしながら順番を待っていましたが、途中で聞いた衛兵たちのヒソヒソ話が頭を離れませんでした。
「なぁ、王子様は、どんな美しい娘をお探しなのだろうな?」
「お前、知らないのか? 王子様の足フェチっぷりは半端じゃないぞ」