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プロローグ
その国は平和であった。
国を治める王が賢明であり、国を守る礎たる戦力ーーー騎士団もまた強かったためである。
魔族・魔物が存在し、時折国へその脅威が近づくこともあったが、その度に騎士たちの手によって、国は守り通されたのだ。
建国から数百年が経った時、一大事が起きた。
当時、魔族の頂点に立つ魔王が、国へ攻めてきたのである。
この時の戦いでは、国と魔族の両方に夥しい犠牲者が出た。長い長い戦の果てに、ついに魔王封印に成功したのだ。
ーーーこれが、ただのお伽話であれば、「こうして国は平和を取り戻した」という文句で締めくくられただろう。しかし、そうはいかなかった。
封印の直前、魔王は自らを封印する者たちに、告げた。
「数百年後、余は復活し国を滅ぼす。そして、その時貴様らの中から我の僕となるものが現われて、我に仕えるだろう」と。
封印後、国は確かに平和を取り戻した。しかし、魔王の予言に対する恐れまでは払拭することができなかった。
ーーーそして、封印から500年が経った。