私の転生体験
巷で転生モノが流行っているので(便乗)
ふ~ん。
お役所って仕事遅くて緩いイメージがあったけど結構忙しそうなんだ。
ここはどこに存在しているのかも解からない慌ただしいオフィスの中。3脚8列にも並ぶ長椅子に老若男女問わず人がずらりと座っており、自分の番号が呼ばれるのを待っていた。皆が一様に今から人間ドッグでも受けるかような真っ白の検査服に着替えさせられており、インフルエンザが大流行している年の病院の順番待ちさながらのようだ。
椅子の前には天井から吊り下げられた大型のハイビジョンテレビ。今度の総選挙の速報や、芸能人の誰々が結婚したとか死んだとかをいつものようにニュースキャスターが淡々と報道している。そのテレビをぼ~っと見ている人もいれば、椅子の脇に置いてある週刊誌に目を通す人もいた。皆が思い思いに自分の番が来るまで適当に時間を潰している。
椅子にじっと座ることが出来ずにそこいらを走り回る子供もいた。だがここに彼の親は存在しないようで誰も注意する者はいない。あの子はここがどこだかちゃんと理解しているのだろうか。知ったところで何しようもないけど。
左手の大きな窓の外を見ても、そこに景色と呼べるものは映っておらず、ぼんやりと光る白い靄が広がるばかりである。また一人、案内が終わったようで私は席を一つ左に移す。後ろの方で老人が席の移動に苦労していたようだが、近くの中年男性が親切にそれを補助してあげていた。あの人は元々そういう人なのだろうか。それともこういう場だからあんな風に振舞っているだけなのか。真実を知るのは文字通りお天道様だけだ。
「はい次の方。4103番さーん。4番受付までお願いしまーす」
私は入り口で渡された番号札を持って最前列の椅子から立ち上がり、若い男性が向かい側に座っている受付へと向かう。受付は6つあり、それぞれが木の板で仕切られている。テレビでしか見たこと無いけどハローワークがこんな感じだっただろうか。こんなところにお世話になるとは思っていなかったんだけどなぁ。
受付の男性はいかにもお役所の人といった短髪眼鏡の黒髪で流行りに疎そうな感じだった。私は軽く挨拶をして安物っぽいパイプ椅子に座る。
「お待たせしました。まずはお名前をどうぞ」
「本田千恵です」
「はい、本田千恵さん、ですね。え~っと死因は交通事故、と。道路標識を守らずに突然飛び出してきた車に跳ねられ、搬送先の病院で2時間後に死亡ですか」
「はい」
私は既に死んでいる。というかここの人たちはみんな死んでいる。
ここは死後の世界と言う奴らしい。もっとおどろおどろしい所を想像していたけど、意外と平和そうでちょっと拍子抜けした。そしてここは再び現世に生まれ変わるための手続きを行う所、いわゆる転生案内所といったところらしい。信じようが信じまいが自分にはどうすることもできないので、私は黙ってここの人たちの言う事、人の流れにのっていた。
「転生の手続きを行うにあたりまして何点かお尋ねしますがよろしいでしょうか」
「はい」
受付の男性はボールペンのキャップを外して何やら書類を取り出す。
「生前ご趣味や特技などはありましたか?」
「う~ん趣味は音楽聞いたり、友達とスィーツの食べ歩きやったり… くらいでしょうか。特技… になるかどうか分かりませんけど部活は吹奏楽やってます。あ、いや、やってました」
「いくつの時からですか?」
「小学4年生からです。楽器はトロンボーン。まぁうちの高校はそんなにレベル高くないですけど」
男性はほぉ~、と相槌を打ちながら書類に書き込んでいく。
「音楽が好きなようですね。他に演奏できる楽器などはありますか?」
「ピアノも少し… 友達に教えて貰っただけなのであまり上手くはないですけど」
「なるほど」
「あの~ この趣味とか特技とか聞くのは何か意味があるんですか?」
転生したらそれまでの記憶は全部消えるらしい、と順番待ちの人が言っていた。それは当然のことだと思う。前世の記憶の引き継ぎなんてインチキだ。
「はい、趣味や特技なら引き継ぎは可能ですよ。もちろん程度は前世の年齢相応の物となりますけど」
「小さい頃からいきなり凄い能力ってのはないんですね?」
「はい。転生先でもこれまでと同じように人生を歩めば今のあなたの能力と同程度になります。親や周りの環境で大きく変動はしますけどね」
となると巷の天才少年少女は別にここでズルしてたってわけじゃないんだ。結局は本人の努力次第。親の力も大きいんだろうけど。
「生まれ変わった先で別の才能に目覚めたりとかは無いんですか?」
「それも転生先の環境次第です。そのままの引き継ぎならば楽器の演奏も何となく好き、何となく得意という感じで頭に残るとは思いますが、もし転生先で楽器に触れなかった場合はその才能も埋もれたままになりますので注意してください」
う~ん。スポーツが得意とか結構憧れていたんだけどな。色々あり過ぎるし。音楽の事を削って才能を回して、もしそれが目覚めなかったら… いよいよ私には何も残らない。
「じゃあ、そこはそのままで。下手に弄るとなんか後が怖そうだし」
「それが賢い選択だと思いますよ。よく来世では理想の自分になりたいという方がいらっしゃいますが、その大半が無理な注文をつけてくるんですよ。その理想についての記憶は引き継がれないのに。好みとしては残りますがね。で、死んでまたここに来て同じような注文をつける、と」
新しく生まれ変わって理想の自分になった私。これで来世は死ぬまでハッピー なーんていうほど人生は甘くない、と。
「後、転生先の性別はどうなされますか?」
「男にもなれるんですか?」
「なれますよ」
生理とかが無い男に憧れなくも無いけど… 男は男で面倒くさそうだな。父親は大変そうだった。母親も大変そうだったけど。
「うーん、やっぱりまた女でお願いします」
「わかりました。まだ17歳で人生これからでしたからね」
男になるの考えるのは女としての一生を終えてからでいいかもしれない。おばあちゃんになって死んだ私はどんな選択をするのだろう。
「それでは転生先についてですが… まずはご希望の国籍はありますか? といっても日本人の方はそのまま日本を希望するケースがほとんどですけどね。なにせ生活レベルがかなり高いので」
そんなことも決められるのか。ヨーロッパの人とか憧れるなぁー
「あなたは日本人の中流家庭生まれで… 生前の生活態度も特に問題なし。死亡区分も第三級ですから、一応大抵の国の人には転生できますよ」
「…死亡区分って何ですか?」
「詳しくはこちらの一覧を。不慮の事故や一般的な病死、老衰などは第三級です。特に転生先に何の影響もありません。第二級は過失のある事故死や、自殺、滅多にありませんが個人の過失による病死などです。第一級はその人の刑や罰則が不完全な状態での死亡や自殺です。第二級および第一級は転生先にペナルティがつけられます。もちろん生前の行いを加味していますがね」
地獄の閻魔さまは法の下の罰則という形で存在するようだ。あとは… 殺人などによる死亡も第三級なんだ。これはちょっと気の毒だなぁ。
「フランスとかイタリアとか… 憧れるなぁ…」
「そうでもないですよ。向こうの方で日本人希望も結構いますから。最近の方はよくスローライフを望まれますが、結局それも御本人の行動力次第なんです」
「…じゃあやっぱり日本人で」
「地域はどうされますか?」
地域かぁ。
私は東京で生まれ育ったけど、お盆とかで帰省した時に田舎に憧れたものだ。
そういえばお祖父ちゃんどうしてるだろう。とにかく可愛がってくれて帰省した時はいつもお小遣いをくれた。私の結婚式を見るまでは絶対死なないぞ、とか張り切っていたな。先に死んじゃってごめんなさい。ほんとうに。
お祖父ちゃんだけじゃない。両親や友達… どうしているかな。何の言葉を交わすことなく永遠の別れを迎えてしまっていた。死んだら幽霊になってそこらを彷徨えるなんていうのも当然なかった。
ここ、悲しむべき場面なんだよね。でも目は潤みすらしない。いつもの私ならぐすぐす言ってそうなものなのに。どうもこの建物の中に入ってから感情の起伏が小さくなっているようだ。
「…静岡で。出来れば田舎のほうの…地図とかあります?」
男性はすぐに机の下から旅行とかにも使える拡大地図を取り出して広げて見せる。
出来るだけ祖父の家に近い場所を指定した。
「この辺りですね。わかりました。御希望の地域に完全に添うことが出来るかどうかは分かりませんが、こちらで新生児の検索をしておきますね」
「転生ってすぐに行われるんですね」
「はい。こんなこと言うのもなんですけど、いつまでもここに居座られるとこっちとしても迷惑で… それに生まれる時代を選べたら不公平でしょ?」
自分の中に僅かに残っているノスタルジーで何となく決めちゃったけど、もしかしたら生きているうちに祖父と再開できるかもしれない。といっても自分の記憶は無いんだろうし、お互い完全に他人同士なのだろうけど。
「あの… 両親は選べたり出来ないんですか?」
「そういうお問い合わせも多いんですが、それも公平でないので不可能なんです。皆さまの生前を考慮して、こちらで判断して決めさせてもらいます。大丈夫ですよ、あなたを路頭に迷わせるような親には決して当たりませんから」
さっきから不公平は無いって言ってるけど本当に大丈夫かなぁ。結局は人の判断に委ねるわけだし。現に現実世界だって色々不公平が生じている。
「他に何か御希望や御質問はありますか?」
「容姿とかどうなりますか?」
「もちろんそれも今のあなたを考慮してこちらで決定させていただきます。さらに美人に転生したいときは他の能力や転生先の環境が少し下がりますが…」
「…そのままでいいです」
結局、私は自分自身をほとんど変えるようなことはしなかった。今までの自分が好きだったかというとそれも微妙だが、何よりその将来を見ることが出来ないまま死んだという未練があったのだ。
…さっきから右隣の女性が大きな声で好き勝手言っているのが聞こえる。
文武両道な才女に生まれ変わって独立して起業したいだとか。かつイケメンの方から寄ってくるほどの美女にしてくれだとか。他人の人生に口を挟むつもりはないけど…
私は体を後ろに倒して仕切りの後ろからその女性を除いてみる。
…顔は見えなかったけど多分3、40代。まん丸と太った女性だった。
「色々な方がいらっしゃるんですよ」
苦笑いしながらぼそりと目の前の職員は小声で言った。
「大変そうですね」
私も小声で彼を軽く労った。
「まぁもう長いことやっているので慣れましたけどね。これで手続きは終わりです。あとは転生先が確定するまで隣の部屋でお待ちください。ジュースとかも好きに飲んでいいですからね。その他に聞きたいことはありませんか?」
「う~んと… 特に無いです」
本当はそもそもここの職員の人たちが何者なのか聞きたかったが… まぁいいや。
後ろに沢山の人が並んでいるのでこれ以上待たせるのも申し訳なかった。
「転生先の決定後は変更は利きません。詳細も御本人に知らせることが出来ない規則になっています。ご了承ください」
「わかりました」
ここらへんはお役所仕事なんだなぁ。私は別に構わないけど、文句も多そうだ。
「お疲れさまでした。それではよい来世を!」
よい来世を、か。
とりあえず次は交通事故で死にませんように。
そして新しい両親よりも長生き出来ますように。
…あとお祖父ちゃんに会えますように。
『来世ではちゃんと働けるようにしてください。顔ももっとまともに… あとコミュ力も欲しいです』
『あなたの能力ですと… 生活レベルを結構落とす必要がありますね。両親の年収にしますと… 共働きでも200万ほど落ちますがよろしいですか? 大学に通うのも難しくなりますが… 日本以外で転生するのも一つの手ですよ?』
『ど、どうしよう。日本人が一番いいけど…』
『あなたの死因は第二級扱いになりますので、転生後は前世よりも苦労するが多いと思いますが… どうなさいますか?』
『男に裏切られないような人生なら何でもいいです… うう…』
『この建物の中でも泣けるというのは相当なショックだったんですね。事情は把握しているので自殺した気持ちは分かりますが、区分については規則となっておりますので…』
『貧乏でもブスになっても構いません… 次の人生はもっとマシな男に… いや、私が男になってもいいわ!』
『あなたを裏切った男性は第一級扱いになる可能性が高いので… まずは落ち着いて…』
『私の区分が第一級だということはどういうことだ!』
『あなたが45歳のころ会社の金を億単位で横領していましたね。そうしておきながらその後不景気になった時に社員50人を容赦なくリストラして路頭に迷わせたと』
『いや、それは… 何の証拠があって!』
『生前の客観的な情報はこちらで大体は把握しております。法に触れるものは特に』
『ふざけるな! 言いがかりも甚だしい!』
『なにぶん規則ですので… 特に生前に償えきれていない罪状はこちらで厳しく裁量させて頂いてます』
『お前では話にならん! 責任者を呼んで来い!』
色々な人がいる。何が正しい人生かは分からないが、少なくとも真っ当には生きよう。ここはそう考えさせてくれる場所だ。どうせそんな記憶も消えるのだろうけど。
というより、そこのところを何とかしたほうがいいんじゃないだろうか。う~ん、でもやっぱり人間を信じてのことなのかな。今の私にはよく分からない。
隣の部屋には受付とはうって変わり、広々とした座り心地が良さそうなリクライニングシートがずらりと並んでいた。そして私と同様に新しい人生を待っている人たち。漫画も沢山置いてあってまるでネットカフェさながらだ。自販機も異様に充実している。お菓子やソフトクリームマシンまであるんだ。何だかすごい待遇。
私は自販機で好物だったミルクティーを選ぶ。本は… 何読もう。…あ! これは私が死ぬ前に買おうとした小説の最新刊! 今になって思い出したけど、これを買いに行く途中で私は車に轢かれたのだ。よかった、生まれ変わる前にこれを読むことが出来て。
私は思わぬ僥倖につい上機嫌になり、鼻歌を口ずさみながらお気に入りの小説を持って適当な椅子に座る。ふーん、マッサージ機能までついているんだ。次の人生ではこれにお世話になるような年まで生きられますようにっと。
そこからはただ心地よい時間が流れていった。時計が無いから分からないけど数時間は経ったかも。時たま転生先が決まった人の名を呼ぶアナウンスが聞こえるが、私の番は一向に来ない。随分と待たせるけど、今は気にならないからいいや。じっくり小説も読めるし。なんかこの部屋に入ってからは随分と気分がいい。部屋の環境だけではなく、新しい人生への希望があるからなのだろうか。さらに私は調子に乗って大好きなチーズケーキを半ホールも食べた。いつもは太るから絶対にやらないけどもう今更だ。
なんだか死後の世界って思ってたよりもいいところじゃん。来世の事があるからまたすぐに来たいとは思わないけど。でもこれじゃあ死ぬことに対して抵抗が無くなっちゃうよ。いいのかなぁ、こんなんで。
頭の底で僅かに葛藤しつつも夢の様な時間が過ぎ、ついにその時がやって来た。
ぽんぽんぽんぽーん
『本田千恵さーん。転生の準備が整いましたので奥の部屋までどうぞ』
ぴったり! ジャストタイミングで私は小説の後書きまで読み終わる。まるで私のこの世の未練が無くなるのを待っていたかのようだ。…正直言うと小説の続きが気になるけど。生まれ変わってもこの小説に出会えることを期待しよう。
私は受付の部屋へ続くドアのちょうど真向かいにある扉を開ける。その先は明るいけど人二人がようやく通れる殺風景な細い通路が続いていた。そこを進んで行くとさらにまたドアがあった。ドアの上のプレートには『転生室』とだけ書かれてある。
…ちょっと緊張するな。
軽くノックすると、女性の明るい声が聞こえて来たので私は少し安心して中へ入る。
「…………………え?」
薄暗い部屋の中には何やら訳のわからない機械が並んでいた。だが私の本能がその異様な雰囲気を感じ取り、浮ついた心が一気に地に叩きつけられる。
「本田さん、服はここで全部脱いでその籠に入れてください。あ、女性スタッフしかいないので安心してくださいね」
白衣を着た女医の様な格好の女性はにこやかに話しかけるが、私は急に肌寒くなり、一瞬服を脱ぐをためらった。でも、他にどうしようもないし…
私の顔は先程までとは打って変って強張ってしまう。
「そんなに怖がらないで。他の方もこの機会を見ると凄く緊張なさるんですけど」
「な、何の機械なんですか?」
「これは魂にくっついている肉体情報や今までの記憶を取り除く装置です。これを使って純粋な魂にしないと、転生が出来ないんですよ」
「何で部屋が薄暗いんですか?」
「この機械は光に弱いんですよ。だから電気はあまり明るく出来ないんです」
もう一人の看護師のような服装の女性はこの様な質問はもう慣れっこと言った感じであった。私は服を脱ぎ看護師の女性に言われるがままに機械の中に入る。心電図を図る時の聴診器のようなものを全身につけられ、入口が閉められる。
いよいよ正真正銘、今までの私との別れ。
未練は無いことも無いけど… 新しく生まれ変わるならいいと思っていた。
でも… 何だろう。凄く不安。未来じゃなくて、今、この状況が。
「本田さん、聞こえますか?」
機械のどこかについているスピーカーから女医の女性の声が聞こえてくる。
「は、はい」
「今から魂にこびりついている余計な情報を引き剥がしますから、」
こびりつく? 引き剥がす? え、物騒な…
「かなり痛いと思いますけど我慢してくださいねー」
「ちょっと待って! 『かなり痛い』って何!? 少しじゃないの!?」
私の喚き声を聞いてか聞かないでか、女医は「よい来世を」と言いながら半笑いで手元の機械のスイッチを押す。
そして、私の体に電流が流れる。
痛い。
痛い―
………
……
「痛い!痛いっ!!痛いっい!!!痛い!!!いたぁっ!いたいっっ!いたいーっっぅ!あぅえごぉぉぅぅあっ!!げうぅぐぁぅぇえぇぃぃぎっぎっ!!ぃぃあぁあぐぇごっぅがぁ!!うぎぃっぁぁぁぁっぃたぁっ!!ひゃぅえあぁぁがぁぁぁっぁっ!!!!!」
それは既に激痛と呼べる言葉で表現出来るものでは無かった。
この世では絶対に味わえない辛苦。
それも長時間。
まさしく地獄。
これこそ煉獄。
生きることそのものの罪に対する裁き。
人は何で死を恐れるのだろう?
この痛みを味わいたくないからじゃないの?
肉が、目が、舌が、内臓が、脳が、骨が―
べりべり、びちゃびちゃ、ばきゃばきゃ、ぶちゅ。
引き延ばされ、引き裂かれ、細切れになって、掻き回され―
魂の表面をしゃぶりつくすかのように電流が駆け巡る。
痛みが薄れるまでどれだけの時が経ったのだろう。
思考が消えかかる最中、私は次の人生は絶対に長生きしてやろうと魂に誓った。
し、死にたくない。もう、こ、こんなのいやだ。
生きてやる。一分一秒でも長く生きてやる。
ああ、でもどの道長くても100年後にはまたこの痛みが…
そんなの… 考えたく… ない… よぉ…
………
………
― その日、新たな命がこの世に産声を上げた。
◇ ◇ ◇
「園間先生、次は第一級の方みたいですね」
「あら、楽しみねぇ。悪い膿はじーっくり剥がさないと」
「…先生も好きですねー」
「もう、やる前からゾクゾクキちゃう♪」
長々とした話ですが、ここまで目を通してくださってありがとうございました。
たとえ転生というものが実在するとしても、まずは今の自分の命を大切にしてあげてください。
もちろん他の命への感謝も忘れずに。