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第一話(2) オレは何も悪くない

「あー。っもう、鬱だ。死にたい」

まだ1限が終わっただけなのに、辛すぎる……。

トントン。

誰だ? もうかまわないでほすぃ。

トントントン。

寝たふりをしているれば諦めてくれるだろう。

トントントントントントントン。

トトントントトトントン。

「うっせー! 誰だ!? ノリノリで8ビート刻むなよ!」

「あっ、やっと起きた」

「え、え、あっ、その……」

「もう、休み時間だからって寝ちゃだめでしょ? 次の時間の準備はしたの?」

俺の目の前には怪訝そうに腕を組む人物が。

「いいい、いん、委員長しゃん?! どど、どないしたん?」

「噛みすぎ……てか伊達君、関西人だったの?」

「い、いえ、滅相もございません。 群馬と埼玉のハーフです」

「あら、そうなの?」

うぅ、この人は苦手だ。 

なーんか高圧的というか、テンプレ通りのキャラというか。

「伊達君。朝からお疲れ様。大変だったでしょう?」

「!! そんなことはです、よ」

俺の前にいるこの女子生徒はクラスの委員長である。

オレを気遣ってくれるなんで、天使や!

名前は確か……し、しの? 篠崎?

「それは置いておいて、伊達君? 君、どうしてまだ冬服なの?」

「うっ……まだそれを掘り返しますか?」

天使の笑顔から悪魔の嘲笑へと打って変わったな……

「先生は触れなかったけど、クラスの風紀を乱す様なことはやめて頂戴。それに先生に対してのあの言葉遣いはよくないと思うな?」

「……はい」

「今回の件だけじゃなく、先生も仰っていたけど、君の普段の言動は少々見るに堪えないことが多すぎよ。おかげで委員長としての私の立場が……」

ぺちゃくちゃよく喋る人だ。

よく聞きゃあ、結局自分のことしか考えてないのかよ。

「……すみません」

「うん。……別に君のことを攻めているわけじゃないの?」

委員長は少し声を押えて話しかけてくる。

「ただクラスに馴染めてない伊達君の事が心配になってね」

アンタやっぱ天使や。篠崎さん!

「クラス委員長としては問題児を更生させ楽しいクラスにしたいし私、東雲あいな(しののめ あいな)としてはやっぱりクラスメイトとは仲良くしたいの」

「しのざ……東雲さん」

うん。これから名前覚えますんで。


「ほら、10年後とか同窓会で『あの時は~』と皆でお酒を交わすなんておもしろそうじゃない?」

「オレ、同窓会に呼ばれるのか?」

「何言ってんの?! もちろんじゃない」

「本当! 本当に!」

「顔が近いよ……伊達君」

「ご、ご、ご、ごめんなしゃい」

思わず動揺してしまった。

おいおい、オレにそんなリア充の明るい未来が待ってんのかよ。

「しょうがない、委員長の為にこの糞クラスにも馴染んでやるか?」

「うんうん。ちょっと言い方が気に食わないけど、その意気よ!」

「じゃあ、まず手始めに夏服になろうか?」

「いや、だから忘れてきて……」

「? 別にその学ランを脱げばいい話でしょ? 中のワイシャツは長袖でも校則上は問題ないよ?」

「え、そうなんですか?」

よく見りゃ長袖の奴もちらほらいる。

てか、前にいる龍一だって、ワイシャツを腕まくりしていた。

「そんなんでいいのかよ……」

「大丈夫だ、問題ない」

「イラッ☆」

ドヤ顔で龍一が振り返ってきた。

「ん。だから、伊達君も脱いじゃおうか?」

「なんか、委員長やらしい言い方だな」

「何言ってんの? 甲斐君。セクハラよ」

「お~、厳しい。てなわけで、澪? お前も一緒に腕まくろうや」

「お前も『なぁ、スケベしようや……』みたな感じで言うなよ。それにオレはこのままでいい」

「や、そんな汗だくで言われても……」

窓側で日差しがもろに当たって、あっつぃ。

「ダーメ。伊達君がよくても私が許しません」

「あ、え、そ、その」

「どうしたの?」

(やっべぇ、今日に限って、ワイシャツ着てない)

学ランを脱いだら裸。

ランボーみたいな恰好で授業を受けるはめになるわ! ひぃぃ。

「おーい。どした? 急に『アカンアカン』って言って震えだして」

「そ、そうだ! 学ランを腕まくりすればOKですよね?」

「伊達君は私のこと馬鹿にしているの?」

委員長の冷たい視線が痛い。

でも、脱げば究極クールビズであって……裸にネクタイでヤッホーって。

「怒らないから正直に話して? ね?」

「しののののさん……」

委員長はオレの手を握りって心配そうに見つめる。

「その……ワイシャツ着てない。それどころか何も着てない。」

「はぁ?」

「何してんの! 校則違反よ!」

「お、お、怒らないって言ったじゃないか!」

「どうせ、伊達君の事だからアニメのTシャツを着てるから恥ずかしいとかかと思ったけど、何も着てない!? T.○.revolutionですら紐くらい着てるわよ!」

「あれ、紐なのか? 例えわかりにくいなぁ」

「うぅ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

はぁ、オレの悪くないのになんでこんな謝ってんだ。

「あー。もう、私も驚きすぎてカッとなっちゃたし、ごめんね」

委員長も申し訳なさそうに謝罪する。

「いや……」

「でも、校則は守ってもらうから」

「どうすれば?」

「ちょっと待ってね……ハイっ」

委員長はそういって、男の制服を自分のカバンから差し出してきた。

「おいおい、委員長どうしてそんなの持ってんだよ? まさか、彼氏のとか」

!! 昨日の夜はムフフでしたね? とかいう展開かよ! 氏ね!リア充。

「そんなわけないじゃない。これは兄のよ」

「なんだそういうことか? つか、なんで?」

「兄はよく生徒会室に泊まり込みで仕事してるから、私がよく荷物とか持って行ってるの、私は彼氏なんていないし、別に伊達君の為とかじゃなからね」

「まったく」と呆れているが、あちこち面倒見のいい人だ。

「というわけだから、これを貸すから着なさい。もう、こんな時間、私はそろそろ自分の席に行くね」

「あ、ああああ」

「?」

きちんと言わなきゃ。 オレにここまでしてくれる東雲さんに。

「ありがとう」

言えた。

「……うん!」

つい見とれてしまった。

(この人こんな綺麗な笑顔を浮かべる人なんだ……)

委員長は嬉しそうに自分の席に着きノートを開き予習をし始めた。

「澪?」

「……なんだよ?」

「よかったな」

「うるせー」

いつの間にか、鬱な気持ちは晴れていた。

オレは孤独な教室で優しさに触れ、心が温まる感覚を覚えた。


やっとヒロインの一人が登場です。

前回は野郎オンリーでしたからね…ちょっと、急ぎで投稿しました。

一応、ギャルゲーテイストの話ですからね。

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