オニをげろらせるたった1つのほうほう
冬の童話祭参加作品です
「ようちえん、いきたくないなあ」
ある、あさのこと。
ゆうちゃんは、しょんぼりしていました。
こころのなかはどんより、あめふりです。
ゆうちゃんは、きのう、おともだちのはるちゃんと、けんかしてしまったのです。
はるちゃんは、なかよしだけれど、ときどき、らんぼう。
ゆうちゃんは、きのうも、たたかれてしまいました。
おとなたちは 「はるちゃんは、じょうずにおはなしできないから、たたいちゃうんだよ」 といいます。
だから、ゆうちゃんは、いつも、たたかれてもゆるしてあげています。
きのうも 「やめて」 とやさしく、いったのです。
なのに、はるちゃんは、おおごえでさけんで、なきだしてしまいました。
まるで、ゆうちゃんがわるいみたいです。
らんぼうは、だめなのに。
どうして、だめなことをしたはるちゃんが、なくのでしょう。
どうして、ゆうちゃんが、はるちゃんをたたいたみたいなきもちに、ならないといけないのでしょう。
「ようちえん、やすみたいなあ」
おかあさんがキッチンから、かおをだしました。
「どうしたの、ゆうちゃん。おねつ?」
「ううん」
「いやなことがあった?」
「ううん」
はるちゃんがたたいた、とおかあさんにいったら。
おかあさんはきっと、はるちゃんとあそばないで、というでしょう。
だけど、ゆうちゃんは、はるちゃんとなかよくしたいだけなのです。
なのに、はるちゃんがたたくから、かなしいのです。
「いきたくないだけ」
「ふーん。じゃあ、どうする?」
「…… いく」
「そっか」
ゆうちゃんとおかあさんは、いえをでます。
ちょうどバスがきました。
「いってきます」 「いってらっしゃい」
ゆうちゃんがバスにのると、はるちゃんが 「おはよ」 と、てをふってくれました。
きのうのことなんてわすれたみたいに、わらっています。
「おはよう」
ゆうちゃんはあいさつをして、すわりました。
はるちゃんはうしろのせきです。
ゆうちゃんは、はるちゃんとおはなししたくないので、したをみて、かばんをあけたりしめたり、していました。
そのときです。
ガタン
バスがおおきくゆれて、とまりました。
なんと、オニが、バスをとめているのです。
きばのはえたかおが、バスとおなじくらいの、おおきなオニです。
「うまそうなこどもが、たくさんいるなあ」
オニのひかるめだまが、バスをのぞきこんできます。
ゆうちゃんは、びっくり、こわくて、からだじゅうがガタガタふるえました。
「どれ。いちばん、きらきらしてるこを、とってやろう。きらきらは、うまいからな」
オニは、ぶつぶつとなにか、となえました。
するとバスのなかのみんなのせが、のびたり、ちぢんだりしはじめました。
いっしょに、みんなのからだが、きらきらとひかりだします。あかに、あおに、みどりに、きんいろ。
いろんないろの、きらきらです。
ゆうちゃんも、すこしせがのびたようでした。でも、きらきらは、ほとんどでていません。
ついさっきまで、くらいところにじっとちぢこまっているような、きぶんだったからでしょうか?
よかった。ぼくは、だいじょうぶだ。
ゆうちゃんは、ほっとしました。
はるちゃんは、どうだろう?
ゆうちゃんは、うしろのせきをみて、びっくりしました。
たいへんです。
はるちゃんは、からだぜんたいから、きんいろやオレンジいろのきらきらが、あふれだしています。
そしてはるちゃんのせは、あかちゃんくらいにちぢんでいました。
どうしよう。
はるちゃんが、とられちゃう。
こんなにちいさくなっちゃったら、どうやったって、にげられないよ。
はるちゃんは、よくわかっていないみたい。
「なに? なに?」 なんて、きいてきます。
ぼくが、はるちゃんをまもらないと。
そうおもったとたん、ゆうちゃんからも、きらきらがでてきてしまいました。
うわっ。どうしよう。
こんなにきらきらがでたら、たべられちゃうかも。
でも、はるちゃんはまもらないと。
ゆうちゃんのあたまのなかで、いろんなかんがえが、かけめぐります。
それといっしょに、あかやぎんいろ、あおいろ。いろんないろのきらきらが、どんどん、でてきます。
「きめたぞ。そこの、ふたりだ。たのしいきらきらは、カレーあじ。ゆうきのきらきらは、とくじょうスパイスだ」
オニのつめが、まどのそとからのびてきて。
ゆうちゃんとはるちゃんは、あっというまに、さらわれてしまいました。
どうしよう。たべられちゃう。
はるちゃんをつれて、にげなきゃ。
でも、どうしよう。
「いただきまあす」
オニのくちは、すぐそこ…… と、おもったら、もう。
なんだかしめったくさのいっぱいはえた、はらっぱのうえ。
オニのべろだ……!
きづいたときには、ゆうちゃんとはるちゃんは、ものすごいいきおいで、まっくらなトンネルにひっぱりこまれていました。
ぼくたち、たべられちゃったんだ……!
ゆうちゃんは、あたまのなかが、まっしろになりました。
どうしよう。
ぼくたち、このまま、しんじゃうのかな。
いやだよ、こわいよ!
どうしよう!
ところが、そのとき。
すぐそばで、わらいごえがしました。
みると、はるちゃんが、ばんざいしてわらっています。
「はやい! たのしい!」
はるちゃんから、きんいろやオレンジいろのきらきらが、シャワーみたいにたくさんでてきて、あたりをあかるくてらします。
ばかなの?
ちょっとだけ、ゆうちゃんはそうおもいました。
すると、きもちがおちついてきました。
こわがったって、なんにもならないんだ!
よし、ぼくも!
ゆうちゃんも、りょうてをあげてばんざいしました。
ほんとだ! はやい!
ゆうえんちの、おおきなすべりだいみたい!
「はやいね!」 「はやい!」 「たのしいね!」 「たのしい!」
ゆうちゃんとはるちゃんは、きゃあきゃあわらいながら、くらいトンネルをすべりおりていきました。
どれほど、すべったでしょう。
ぽふん ぽふん
ゆうちゃんとはるちゃんは、こけみたいなものがいっぱいはえた、やわらかいところにおっこちました。
あしもとには、みずたまり。
さわると、ぴりっとします。
「はるちゃん、このみずたまり、さわっちゃだめだよ!」
ゆうちゃんは、おおごえでいいました。
さっきまでの、たのしいきもちはきえました。
ゆうちゃんは、また、こわくなってきました。
きっと、ここは、オニのおなかのなかなんだ……!
「どうしよう。ぼくたち、たべられちゃったよ」
ゆうちゃんはひざをかかえて、すわりこみました。
もう、ゆうちゃんからは、きらきらはでてきていません。
かわりに、めから、なみだがぽとぽと、おちました。
「もう、かえれないんだ…… おかあさん」
やっぱり、きょう、ようちえん、やすめばよかった。
なんで、いこうとおもったんだろう。
ゆうちゃんは、ぽたぽた、なきながらかんがえました。
なんで、いこうとおもったかっていうと、それは……
きのうは、ゆうちゃんが、かくれんぼをどうしてもしたくて、はるちゃんがおにごっこをしたがっていたのに、むりやり、かくれんぼにしたのです。
はるちゃんは、それで、ゆうちゃんをたたいたのでした。
そして、せんせいにおこられて、たくさんないて、それから、かくれんぼをしてくれたのです。
けど、そのときどうしてだか、ゆうちゃんは、ちっともたのしくありませんでした。
だから、きょうは、はるちゃんといっしょに、おにごっこをしてあげようとおもったのです。
それで、はるちゃんに 『もうたたかないでね』 と、いおうとおもっていたのです。
けれど、もう、できません。
だって、ゆうちゃんもはるちゃんも、オニにたべられて……
そのときです。
とん、とちいさなてが、ゆうちゃんのかたを、たたきました。はるちゃんです。
ふりかえった、ゆうちゃんのまえで、はるちゃんは、あいかわらず、きんいろやオレンジいろのきらきらを、まきちらしています。
「ゆうちゃん、おに!」
ばかなのかな。
また、ゆうちゃんは、おもいました。
だけど、はるちゃんは、きゃあっとさけびながら、にげていきます。
まるで、ゆうちゃんがぜったいに、おにごっこをしてくれる、としんじてるみたいです。
みているとだんだん、ゆうちゃんはこわがっているのが、ばかばかしくなってきました。
もともときょうは、おにごっこのつもりだったしな。
「よし、つかまえるぞ!」
ゆうちゃんも、はるちゃんのあとをおいかけはじめました。
「たっち! はるちゃん、おに!」
「きゃあ! まって!」
「またないよーだ!」
ゆうちゃんとはるちゃんは、どたどた、走り回ります。
ゆうちゃんのからだからも、いつのまにか、オレンジいろやきんいろのきらきらがでてきています。
きのうは、はるちゃんのわがままなんか、きいてあげたくないとおもっていた、おにごっこ。
いまは、すごくたのしいきがします。
ぴりぴりするみずたまりは……
「ジャンプ!」 「ジャンプ!」
ふたりとも、じょうずに、とんでよけます。
あれ、そういえば、はるちゃんのからだは、ちよっとおおきくなったみたい。
そうして、ゆうちゃんとはるちゃんが、むちゅうで、おいかけたりおいかけられたりしていると……
きゅうに、そらから、おおきなこえが、ふってきました。
「いたっ、いたたた……! はらが、はらがいたい……! きもち、わるい!」
わかった!
ゆうちゃんは、ひらめきました。
ここで、ゆうちゃんとはるちゃんが、はしりまわっていると、オニのおなかがいたくなるのです。
「ねえ、はるちゃん! つぎは、かべキックしようよ!」
「うん! する!」
はるちゃんからは、きらきらがもっと、でてきました。
ゆうちゃんからも、きらきらがでています。
たのしいきもちの、オレンジいろのきらきら。
わくわくするきもちの、きんいろのきらきら。
「よっし! キーック!」 「キーック!」 「ダブルかいてんげり!」 「かいてんげり!」 「とびひざげり!」 「とびひざげり!」
ゆうちゃんとはるちゃんは、きらきらをまきちらしながら、やわらかいかべをけりまくりました。
「いたっ! いたたたっ! きもちわるい!」
ふたりのキックがきまるたびに、オニのひめいがふってきます。
「よし! とどめだ! スーパー・トルネード・スターライト・キィィィィック!」 「キィィィィック!」
「ああっ、いたっ、もうたまらん……! げえええっ」
ゆうちゃんとはるちゃんの、ひっさつキックがさくれつしたとき。
やわらかいかべが、りょうがわからよってきて、ゆうちゃんとはるちゃんをぎゅっとおしてきました。
ゆうちゃんは、またすこしこわくなりました。
でも、ちらっととなりをみると。
「きゃあああ! たのしい!」
はるちゃんはやっぱり、きんいろとオレンジいろのきらきらをいっぱいにだして、わらっています。
「わああああ! たのしい!」
ゆうちゃんも、わらいました。
すると、ゆうちゃんのからだからも、きらきらがいっぱいにでてきました。
「げええええっ…… げええええっ……」
よってきたかべに、おしあげられ。
すごいいきおいで、トンネルのなかにすいこまれていくあいだも。
ゆうちゃんとはるちゃんは、ずっと、きらきらをいっぱいだして、わらっていました。
「げええええっ…… おえっ」
ぽーんっ ぽーんっ
まぶしい!
きづいたら、ゆうちゃんとはるちゃんは、ようちえんのえんていにいました。
バスは、とっくにとうちゃくして、しずかにとまっています。
「ゆうちゃん、はるちゃん! どこにいってたの?」
せんせいが、はしってきました。
「さがしたのよ!」
せんせいは、オニのことは、しらないようです。
ゆうちゃんはまわりをみまわしました。
いっしょにバスにのっていたおともだちも、オニのことなんてなかったみたいに、あそんでいます。
ゆうちゃんはどきどきしました。
なんていおう?
オニにたべられた、なんていっても、うそつかないでって、おこられそう。
そのとき、はるちゃんがいいました。
「ゆうちゃんとはるちゃん、ずっと、おにごっこと、かべキック、してたよ」
「そう? そうだったの?」
「うん!」
ゆうちゃんも、いきおいよくうなずきました。
だって、そのとおりだったのですから。
「えんのそとに、でたりしていない?」
「でてないよ!」 「でてないよ!」
「そうなの? おかしいわねえ」
せんせいはくびをかしげながら、むこうにいってしまいました。
ゆうちゃんとはるちゃんは、かおをみあわせて、にやっとしました。
あれ? はるちゃん、また、おおきくなったかな?
「ねえ、このつぎは、かくれんぼしようよ」
ゆうちゃんがいうと、はるちゃんは 「いいよ」 とうなずきます。
よかった!
きょうは、なかよくあそべそう。
ゆうちゃんは、ほっとして、ききました。
「じゃあ、どっちが、おに?」
「かったほう!」
はるちゃんが、じゃんけんのてをだします。
そのとき。
はるちゃんのからだから、また、きんいろとオレンジいろの、きらきらがあふれたのが、ゆうちゃんにはみえたのでした。
(おしまい)
読んでくださり、ありがとうございました!
今年の冬の童話祭のテーマは 『きらきら』
このテーマを見たとき、まず、子どもたちの感情豊かな表情が思いうかびました。
子どもって笑うにしろ怒るにしろ、きらきらを発してるように見えます。
そんな、きらきらする心のエネルギーを少しでも感じられたら、いくらかでも★をおすそわけいただけると励みになります!
あなたにも、心がきらきらするような良いことがありますように。




