7. 誕生パーティの魔法少女
2026年1月1日連載スタートしました。
毎日朝8:00投稿予定しております。
「……へ、へー。」
耀司の突然の告白に、ひばりはなんともいえない微妙な顔で応えた。
「いや、決してウソなんかじゃないんだぞ。我々支子家に代々口頭で伝わる伝承にはこう云ってある。魔法少女になる支子家の一族の女性は、生まれながらにして体のどこかに六芒星のアザがあって、16歳を迎えたその日をもって正式に魔法少女になるという。その証拠に……あるだろう? ひばりには六芒星のアザが。」
「ロク、ボーセー?」
「そう、六芒星だ。三角形を二つ、上下を逆さにしてくっつけた六角形の星のことだ。」
「――もしかして、これのことかな?」
ひばりはそんなアザにまったく心当たりがなかったが、少しして何か思い出したようにシャツを腹の上の方までめくると、六芒星と言われるとそう見えなくもない小さなアザが、へその横辺りに確かにあった。
(でも……これって、小学生の時にすべり台から落ちた時についたキズじゃなかったっけ?)
「ほら、やっぱりあるだろ。だからひばりは4月2日から正式に魔法少女になった、ということになるんだ。」
「よかったね、ひばり。小さい頃からずっと魔法少女になりたかったもんね。これであなたも晴れて魔法少女の仲間入りよ。」
耀司が得意満面に言うと、洋子が余計な補足をつけ加えた。
両親の発言を最初は我慢して聞いていたひばりだったが、下を向いてしばらく黙ってプルプルすると、もうこれ以上は我慢ならずといった感じでテーブルにバンと手をついて勢いよく立ち上がった。
「おい! 何が魔法少女になってよかったね、だ! ……私、自分でもわかってんだよ。自分の5色の魔法少女への愛が異常なこと、そんなことくらいは! ……それで自分が大きくなっていくたびに、周りから徐々に距離をとられたり、離れていったり、そんなのみんな気づいてんだよ!……でも、そんなことぜんぜん気にならないくらい、好きなものは好きなんだからしょうがないじゃない! ……確かに、私も大人になれば、自分の5色の魔法少女への熱い想いが、もしかすると、徐々に消えてていくんじゃじゃないかなと、そう思った時期もあるにはあったよ。……でも、その情熱は消えるどころか、むしろいまだに増え続けてるくらいなんだよ! ……でも、まさか……まさかのまさかだよ。自分の誕生パーティーの後に、こんなサプライズな仕打ちを用意してくるだなんて。……身内にまで自分の魔法少女好きをネタにされるなんて……そんなのぜんぜん思わなかったー!」
ひばりはわーんと号泣すると、二階の自分の部屋へ向かって走り出した。
その時、親子の様子を横でケーキを食べながら冷静に観察していた万智も、ひばりと同意見だった。パパもママも、高校生になったら姉の異常な5色の魔法少女好きもさすがに少しは収まってくれるのかと期待していたものの、特に何もないまま1年が終了し、このままだと姉は本当に一生イタイままになってしまうんじゃないか、そう心配した両親が危機を感じ、今日の一番ダメージがでかいタイミングを狙って、禁断ともいえる姉の魔法少女好きをネタにするという強硬手段に打って出たのだと思った。
「待ちなさい! ひばり、まだ話の途中だぞ。」
「そうよ。人の話はよく聞きなさい。」
その時、耀司が階段に向かって走っていったひばりに向かって、少し語気を強めて叱ると、洋子も耀司に同調し、いつものマイペースでひばりを諭した。
ひばりは、パパやママに叱られてる時なんか、自分が思いっきり逆ギレすると、どちらかが、いつもだと面倒くさくなって、それ以上話すのをやめてしまうのに、なぜか今回に限って、なおも強硬な姿勢を崩さない両親のことを解せぬと思いながら、しぶしぶ席に着いた。
両親の頑なな態度を見て、さすがのひばりも、今回は本気なんだな。ならば、パパとママは、もしかすると私の5色の魔法少女好きを本当にやめさせるために、今回はネバーギブアップの精神で挑んでいるのかもしれないと思った。
(……どうしよう? そんなことになったら、これから始まる『子猫の魔法少女マジカルキティ』の第1話が観れないかもしれない。そんな……『5色の魔法少女』は、物心がついた頃から放送を一回も見逃したことないのに……。)
(まあ……実は録画してるんだけど。)
そう思いながら、ひばりはこれから色々言ってくるであろう両親に対して、どう徹底抗戦しようかと身構えていた。
だが両親の話は、ひばりの予想に反して、ひばりの5色の魔法少女好きをやめさせようとか、そういった内容の話ではなかった。
耀司は、ひばりがなぜ不満そうな態度を示してるのか、そんなことはまったく気にならない様子で、
「ひばり。これは本当に冗談なんかじゃないんだ。パパも真剣に話すから、ひばりも最後まで真剣に聞いてくれないか?」
「そう。それに聞いたからって、特に何か変わるってわけでもないんだから。」
耀司はひばりに念を押すと、洋子は耀司の言葉にいちいち余計な補足をつけ加えた。
「――わかった。」
ひばりは憮然としながらも、両親の話を一応聞くだけはすることにした。
(あっ!)
その時、万智はひばりと両親の会話と自分はまったく関係がないのに、ひと足早く自分の部屋に戻るタイミングを完全に逸してしまったことに気がついた。
「そういえば……どこまで話したっけ? ……あーそうそう、我々支子家が代々魔法少女の一族で、ひばりが魔法少女に選ばれたっていうところまでだったな。」
「その通りよ、パパ。」
「そうか。……うんそうそう、実は我々支子家が魔法少女の一族だというのは本当の話なんだ。我々支子家は代々魔法少女の家系で、なぜかはわからないが、そのことが長年に渡って、口頭で我々一族の間で伝承され続けているんだ。それに……えっと、なんだったっけ? ……あっ! そうだ。ママ、例のものを。」
耀司に促され、洋子は手元に持っていた茶封筒を耀司に手渡した。
「その証拠に……ふふふ、実はこの封筒の中に、私達支子家が魔法少女であることを指し示す伝説の魔法の石が入ってるんだ。ほら、ひばりも覚えてるだろ? はとこの鳩子ちゃん。ほら、ひばりが小さい頃にパパの実家に行った時、一回会ったことがあるだろ? そう。あの娘だよ、あの娘。それで、あの娘が実はこの前まで魔法少女だったんだよ。」
そう言って、耀司は茶封筒の中をゴソゴソとあさると、何か石みたいなものを取り出した。
(鳩子ちゃんなんて知らないよ。そんな小さい頃に一回っきりしか会ってない子のことなんていちいち覚えてるわけないだろ。それに……だいたいなんで伝説の魔法の石とかいうやつの伝達手段が普通郵便なんだよ。)
ひばりは、もし万が一自分が魔法少女に選ばれたとしても、こんな事務作業的な感じじゃなくて、もっとドラマチックな展開があるはずだろうとまったく納得がいかなかった。そして耀司からその魔法の石とかいうのを渋々受け取ると、その石を確認した。
その石は、ひばりがよく知る5色の魔法少女がもっているプレシャスストーン(PS)にそっくりだった。ひばりも、もちろん5色の魔法少女好きとして、何個もプレシャスストーン(PS)のグッズを所持しているが、今手元にある石は、なぜか今まで見たどのプレシャスストーン(PS)よりも本物のプレシャスストーン(PS)のように見えた。しかし、その石の色がひばりには大問題だった。
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