87. 2週目
改めて正面の光の塔に向かって駆け出した4人は、石段を降りてグラウンドに入ると、すぐに光の塔の前まで到着した。
しかし光の塔の側にいる4体のロボット達は、南美達が自分達の目の前までやってきたにも関わらず、――中には南美達の方をちらっと横目で見たロボットもいたが――ミカを捕まえようという気配も感じられず、南美達にはまったく興味なさそうに相変わらずダラダラしていた。
そして、その時のことだった。
光の中から、突然人間みたいなのが飛び出してきた。
「あれ? 何か出てきた。」
南美は、全身光に照らされたその人間を、不思議そうな顔で見つめた。
「あれは……もしかして人間……なのかしら?」
三玖が言うように、たった今光から出てきた人間は、目の前にいる4体のロボットが、剥き出しの合金ボディとシンプルな曲線と直線で構成されたまさにステレオタイプのロボットだというのと対照的に、地球にいる人間と同じような姿形をしていて、それに人間が着ているのと同じような黒いスーツを着用していた。
「でも、ウラニャースには人間はいないはずだよ。」
ミカが、その人間を見つめながら、いぶかしそうな表情を浮かべた。
「あっ! ……でも、よく見たら人間じゃなくてロボットみたいだよ。」
蛍はよく見ると、その人間は人間によく似ているが、その顔の表情や頭髪に至るまで、非常に精巧にできているものの、着ている服以外のすべてが、実は人工的なパーツで構成されていることに気がついた。
「確かに、ヒューマノイドタイプのロボットはいたけど……でも、こんなに人間っぽかったかな?」
ミカは首を傾げながら、その人間そっくりなロボットを不思議そうに眺めた。
そのロボットは、突然光の中から現れたかと思うと、ああ終わったという感じで、しばらくの間、その場で完全停止していた。そして目を開けると、ほっとした表情を浮かべたかと思ったら、突然絶望的な表情になって頭を抱えた。それからしばらくして立ち直ると、今度は不思議そうに辺りをキョロキョロし出したり、せわしなくその表情を変えていった。そして最後に軽快に笑い出した。
「はははは。」
「……あれ? なんか笑ったよ。」
南美は不思議そうに目を大きくして、そのロボットを見つめた。
「あら? 何がおかしいのかしら?」
三玖は、そのロボットが急に笑いだしたのを不審に思うと、そのロボットに直接声を掛けた。
(……うん?)
クスは、自分の左の方から声が聞こえてきたので、声がした方を振り向くと、ミカと3人の魔法子猫達が目の前に立っていて、クスのことをじっと見つめていた。
(……あれ? 魔法子猫が3人……。えっ!? そんな報告、受けてないぞ。……こいつら、ちゃんと報告しろよな。正確な情報の伝達は、業務の基本中の基本だろうが。もし魔法子猫が一人だけだったら、現場ロボット総掛かりで魔法子猫の足止めをして、その間に私がなんとか子猫を捕獲して、とっとと光の中にずらかれればなどワンチャン考えていたが……さすがに魔法子猫が3人も相手だとどうしようもない。彼女達に対して、戦闘を行うなどという愚かな行為だけは絶対にしてはダメだ。)
クスは、3人の魔法子猫達の存在を確認して驚愕の表情を浮かべると、次に正面を向いて、現場ロボット達に対しじとーっとした目を向けた。それから南美達の方に体を向けると、口に手を当ててオッホンと軽く咳払いした。
「やあやあ、地球の皆さん。どうもこんにちは。」
続けてクスは、ははははと軽く笑って余裕のあるところを装ってみせた。
「??」
南美達は、そのロボットの意図がわからなかった。
「……あっ、これは申し遅れました。初めまして地球の皆さん。私はジャイアから来ましたロボットの代表者の一人でクスと申します。」
まるで魔法子猫達に対し一切の敵愾心を感じない、人当たりのよいやわらかな笑顔。クスは、惑星ジャイアで5大長官という非常に高い地位にいながらも、決して威張ったり偉ぶったりすることはない。地位の上下に関係なく、職場でもプライベートでも、接するロボットに対しては常に腰が低く、丁寧で誠実な応対を心がけており、クスと初めて会ったロボットは、クスに対して100%好感を抱くという。ぱっと見でわかるこの感じのよさは、クスが本来から備えている魅力の一つなのである。
「えっ? ジャイアって?」
すると、赤色の魔法子猫が不思議そうな顔をした。
「……あっ、そうでした。これはこれは言い忘れておりました。惑星ウラニャースという星は、現在は名前が変わって、惑星ジャイアという星名になっているんですよ。とはいっても、まあ名前が変わっただけですので、実際にはそんな大した違いはありません。」
少し焦ってしまったが、ははははと軽く笑って、クスは引き続き余裕のあるところを装い続けた。
5大長官という地位にあるクスは、500年以上に渡って、普段から部下に対して偉ぶったりすることもなく、ましてや立場の弱いロボットに対して高圧的な態度をとるということなども決してなかった。ロボットと接するに際し、上下の分け隔てなく、常に公平さを心がけてきた事実は、その場限りの付け焼刃と違ってごまかしようがない。それは、自分よりはるかに年下に見える魔法子猫達を相手にしても決して変わることはない。この長年実践してきた経験則が、こういう土壇場においても存分に発揮されるのである。
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