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85. 2週目

 ここは地球への2回目の光の塔が開通したばかりの惑星ジャイアのとある場所。


 ジャイアの首都イエブより数千km離れたその場所は、現在、現地時刻でいうと真夜中にあたり、周囲には住居エリアや商業エリアなどが存在しないためか、周りは一面漆黒の闇で覆われている。


 その丘の上に、淡いピンク色した一軒のかわいらしい二階建ての建物がぽつんと建っている。そこは、実はかつてのミカの家族の住居であり、現在は惑星ジャイアから遠く離れた惑星に転送するための光の通路を研究・開設するための研究所となっていた。


 そこは首都よりかなり遠方で、まさに僻地といっていい場所であり、また光の塔の膨大なエネルギーを物質転送のエネルギーに変換するという、高度かつ繊細な技術が必要とされる施設にしては、あまりにかわいらしい建物だったが、まさしくその建物が建っている場所こそが、惑星の光の塔のエネルギーの中心点に位置し、その莫大なエネルギーを集約するには最も適した場所だったのである。


 その建物は、今から500年以上前にミカの家族の自宅であった頃から、なぜか通常の住居スペース以外にも研究スペースが設けられていて、光の塔のエネルギーを利用した他惑星への転送技術を確立する初期の基礎研究の段階では、そのスペースを利用するだけでこと足りていた。だが時を追うごとに、目標とする対象の位置が遠くなるにつれ、必要とするエネルギー量もそれに比例して莫大なものになってゆくと、現状のスペースだけでは手狭となり、その度に設備を拡充し、増築に増築を重ねていった結果、次第に住居スペースよりも研究スペースの割合の方が、はるかに多くを占めるようになっていった。


 そして「光の塔物質転送技術総合研究所」と名付けられたその施設の、現在では高校の体育館並の大きさとなった(しかも、並行して現在も大規模な拡張工事を実施中である。)研究所の中は、黒一面になった外の世界とは対照的に、光の通路が開設した影響で、館内で働いている多くの白衣姿の博士ロボットを含め、館内の何もかもをすべて真っ白に照らし出していた。


 そしてその中の一人、たった今4体目の現場ロボットを光の塔を伝って地球へと送ったばかりのクスは、その様子を間近で見ながら、少し満足気な表情を浮かべていた。


 地球にいるミカの位置は、彼女の首元のリボンより、ジャイアにいながらもほぼ正確に捕捉できるので、光の塔はミカから100m―1km以内の範囲で設置可能である。


 それからしばらくすると、現地に派遣した現場ロボットが光の中から首を突っ込んできて、ミカが近くまでやってきた。それに人間――おそらく伝説の五色の魔法子猫――も一緒にいるという報告が入った。


「ふむ。今回は現場ロボットを4体も地球に送り出すことができたぞ。事前の予測では、おそらくは3体が限度だと踏んでいたが……。ふふふ。二回目の実験にしては、十分に満足な結果が得られたといえよう。よし、実験は大成功ということで、後で「G」には報告することにして、今回はこれで撤退することにでもしようか。……いや、それとも、とりあえず現地の現場ロボットどもに、ワンチャン子猫を捕まえさせてみるべきだろうか? ……いやいや、相手はおそらく伝説の五色の魔法子猫だ。現場ロボットが数体集まったところで、到底敵う相手ではない。単に余計な損失を増やすことになるだろう。それに、まだ交渉もしていない段階で、彼女達を下手に刺激するのは得策ではない。まあ、止めておいた方が今回は無難だろうな。」

 クスは一人光の通路を見つめながら、にんまりとした表情を浮かべていた。


「おい!」

 その時、不意にクスの後ろから不遜な声が掛かった。


「……うん?」

 クスが振り向くと、そこには、この場には場違いな純白のドレスを着た、見た感じだとまだ10代の中頃くらいの、長い金髪の小柄で可憐な少女が、不機嫌に両手を腰に当てながら、クスのことをじっと睨んでいた。


「ああ……クリスか。遅かったな。」


 そう。彼女こそが、クスと同列のジャイアの5大長官の一人「科学技術部門」の長官で、この「光の塔物質転送技術総合研究所」のクスとの共同責任者でもあるクリスだった。


(そういえば……今日ここに視察に来るとかなんとか言っていたな。ずっと姿が見えなかったので、直前になって面倒くさくなって来るのを止めたのかと思っていたが……今頃になって来たのか。)


 クスは振り返ってクリスを見ると、誇らしげに両手を広げた。

「ははは。見たまえ。今回は単純作業専用の下級ロボットを、なんと4体も地球へ飛ばすことに成功したぞ。事前の計算だと、おそらく今回は現場ロボット3体までが限度だと踏んでいたが……。まあ、それを考慮しても、今回はかなりの成功と言えよう。」


 クスは満足そうに、今回の成果を自画自賛した。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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