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84. 2週目

「えーっと……なんなんだろう?」

 その何かは、南美達の方に徐々に近づいてきてはいるのだが、意外と小さかったので、遠くからだと何かよくわからなかった。だが、徐々にその輪郭がはっきりしてくると、それはふっくらと、四足歩行で歩いているのがわかった。


(もしかして……また猫型ロボットとか? まさか! またミカのパパ? それとも、今度はママ?)

 南美は、その猫みたいなのが誰なのかよく見ようと目を凝らした。


 すると、横で南美と同様にその猫みたいなのを観察していたミカがつぶやいた。

「うーん……誰なんだろうね?」


(あっ……ミカのパパとママじゃないんだ。)

 南美は、それを聞いて少しほっとした。ミカには、ロボットになってしまった彼女のパパとママには極力会わせたくなかった。


「ええ……あれは犬ね。」

 その時、南美の横にいた三玖が、はっきりとそう断言した。


「……えっ? 犬!?」

 南美は、三玖の予期せぬ一言に驚いた。三玖に言われて改めてその猫みたいなのを観察してみると、確かに、あれは猫……というより犬に見える。


(でも……なんで犬が?)

 南美の頭の中に、たくさんの?マークが浮かんだ。


 その犬は、引き続き南美達の方に向かってゆっくりと歩いてきた。


 そして南美達は、とうとうその犬と目の前――石段の上と下のグラウンドを挟んだ形――で対峙した。


「……ポメ?」

 その時、蛍はその犬を見つめると、不思議そうな顔で小さくつぶやいた。


「……ポメ?」

 南美は、(えっ、ポメって何?)と思って、その犬をじーっと観察した。


(ポメ、ポメ、ポメ……うーん……あっ、ポメ! そうだ。ポメだ! ……確かにあれはポメラニアンだ。)


 ポメラニアン。ドイツ原産の小型犬。小さいながらも丈夫な犬種で、粗く豊富な被毛と長い飾り毛のついた巻毛をもつ。首と背はひだ飾りのような、臀部は羽飾りのようなトップコートが密毛している。(※Wikipedia参照)

 そのポメラニアンは、鮮やかなオレンジ・セーブルの被毛をもつ、まだ生後2,3か月くらいの子犬で、年頃は多分ミカと同いくらいだろうか? そのポメラニアンの左耳には、小さなピンクのリボンが飾りとして付けられていた。おそらくそのポメラニアンの飼い主が付けたのだと思われる。その外見的特徴は、まさに地球にいるポメラニアンそのもので、ぱっと見た限りだと、地球のアメリカンショートヘアと比べ、2倍以上の長い尻尾をもつウラニャースショートヘアのミカのような、明確な違いはどこにも見当たらない。至って普通のポメラニアンだった。


(やっぱりこのポメも、どこか宇宙から来たのだろうか? ……でも、一体なんのため?)

 南美達は意味がわからず、しばらくの間、子犬のことをただポカンとした表情で見つめていた。


 すると子犬の方は、南美達を一瞥すると、がっかりしたようにふぅーとため息をついた。

 ……いや、もしかしたら南美達にはそう見えただけなのかもしれない。


 それから子犬は蛍を睨みつけると、ウーと唸りながら、石段の上とグラウンドの地面の下に顔を交互に動かした。


「……あっ!」

 すると蛍は、子犬の意図に気づくと、急いでグラウンドに下りて、子犬を持ち上げて石段の上まで運んであげた。


 子犬は、蛍に地面に降ろされると、そうされるのがさも当然といった感じで、ぶすっとしていて、なぜか南美達は、「気が利かない奴らだ。むしろ早く気づけよ。」と子犬に思われているような気がした。それから子犬は、南美達の方を一切振り返ることなく、そのまま校舎の方に向かってスタスタと歩いていった。


「あら、なんか可愛げのない小犬ね。」

 校舎の方へ去っていく子犬を眺めながら、三玖が遠慮なく感想を言った。


(…………。)

 南美も、その愛らしい見た目に反して、なぜかその子犬にはかわいさのようなものをまったく感じなかった。そういう意味では、南美も三玖とある種同意見だったが、南美の方はそれをあえて口には出さず、ただ苦笑いを浮かべていた。


「で、でも……すごくキレイな毛並みで、かわいらしい子犬だったよ。」

 蛍の方は、なんとか子犬にフォローを入れてあげようと、必死にその子犬の外観的特徴に対して賞賛の言葉を並べた。


「確かに……見た目だけだったらチャンピオンクラスなのにね。」

 三玖も、――皮肉にも聞こえるが――蛍のその意見にだけは賛成のようだ。


「えーっと……ミカはあの子犬がどこから来たのかわかる?」

 南美は、もう一つの光の塔から現れた謎の子犬の正体について、ミカに確認した。


「うーん……ウラニャースには犬類自体が存在しなかったから……少なくともウラニャースから来た犬じゃないね。でも、コンピュータで分析した限りだと、犬種も地球にいるポメラニアンそのものだったよ。」


「えっ? そうなんだ。……でも、地球のポメがなんで光の塔を通って来たんだろう?」

 南美は、子犬の行動がまったくの謎だった。


「そうね。まったく意味不明ね。」

 三玖も、難しい顔をして腕を組みながら、首を傾げた。


「それにあの子犬……どこかに行っちゃったけど、一人にして大丈夫かな?」


「うーん……あの子犬、なんで光の塔から出てきたのか、まったく謎だけど……なんにせよ地球にいるポメラニアンみたいだし……耳にリボンが付けてあったから、多分飼い主の元にでも行ったんじゃないのかしら? でも……まああの子犬だったら、心配しなくても、別に大丈夫なんじゃない?」


 三玖は、南美の問いに根拠なく単に感じたままを言っただけだったが、他の3人も、特に理由はないが、なぜかあの子犬だったら絶対に大丈夫だろうという気がした。


「よし! なんか色々あったけど……それじゃ改めまして、正面の光の塔に向かおう!」


 南美が力強く言うと、4人は再び、なぜかロボット達がいまだだらだらしたままの光の塔に向かって、石段を軽やかに駆け下りた。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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