79. 2週目
「……あっ! そうだ。こんなことしてる場合じゃなかった。……よし、ミカ行くよ!」
「うん、わかった!」
南美とミカは、再び目を閉じてお互いが強く願うと、次の瞬間、南美の首元のペンダントの赤色のプレシャスストーン(PS)とミカのリボンについた赤色の石が真っ赤に光り輝いた。そして二人の周囲を温かな赤い光が包み込むと、ミカは尻尾で空中に星を描いた。するとミカの尻尾の先から、蛍の時と同じスカラベに似た猫のアクセサリーが出現し、ミカが尻尾を振り下ろすと、南美の首元の赤色のプレシャスストーン(PS)にがっちりと収まった。
――よし! 変身できる!
南美はそう確信して目をパッチリ開けると、自分の周りが鮮やかに赤く光り輝いて、自分が今、確かに赤色の魔法子猫の祝福を全身で受けとっているのがわかった。それから南美は、蛍と同じようにその場からくるくると回りながら高くジャンプすると、とうとう南美は赤色の魔法少女レッドキティに変身した。
そして地面にピタッと着地すると、
「世界中のみんなを笑顔にしたい。5色の魔法少女レッドキティ!」
南美は左手を折り曲げて、右手を大きく空中に突き上げると、蛍の時と同じように、自然と口からはセリフと決めポーズが飛び出した。
南美は、それからしばらく、噛みしめるようにそのポーズをキープしたままだったが、やがてゆっくりと右手を下ろすと、両方の手のひらをまじまじと見つめた。
「へえ、魔法少女ってこんな感じなんだ。体の奥底から、信じられないくらいものすごい力が溢れ出しているのが感じられるよ。」
南美は今、自分が人類ではあり得ないほどの驚異的な力を得たことを実感した。これだったら、自分一人でも世界の一つや二つは簡単に救うことができる。比喩でも誇張でもなく、5色の魔法少女には本当にそれだけの実力があることを南美は感覚で理解した。
「……うん。やっぱり南美がこのコスチュームを着ると、かわいらしさの中にかっこよさが際立って、すごくいい感じ。このコスチューム、元々南美が着るのをイメージしてデザインしたものだから、やっぱり南美が一番似合うね。」
蛍は、うれしそうに小走りして南美の元に近づくと、赤色の魔法少女姿の南美を様々な角度から観察しながら、うれしそうににっこり微笑んだ。
「ありがとう蛍。……でも、思ったより簡単に魔法少女に変身できたね。」
南美は、思ったより呆気なくレッドキティに変身できたので、少し拍子抜けした。
「そうね。案外簡単だったわね。」
横から三玖の声が聞こえてきたので、南美が三玖の方を振り向くと、三玖の方もすでにグリーンキティに変身を済ませていた。
「……あれ? 三玖も変身しちゃったの?」
南美は、キョトンとした表情で三玖に確認した。
「ええ。せっかくなんで、ついでに変身しておいたわ。」
それに対し、三玖は普段通りの落ち着いた感じで答えた。
「あれ? ……だったら、変身する時のポーズとセリフはちゃんと言った?」
「うーん……くるくる回りながら空中を飛んでいる時に、頭の中でセリフやらポーズやら自然と湧いてきたんだけど、なんか今の私にはしっくりこない感じがしたので……だから、今回はあえてパスすることにしたわ。まあそれについては、次回までに考えておくことにするわ。」
「そう? わかった。それじゃ、セリフとポーズは次回までの宿題ね。……それと、次回からは変身する時は変身するって、ちゃんと言ってから変身してね。もう、勝手に変身されると困るんだけどなあ。」
南美は少し不満げに、三玖に指示を出した。
「でも、三玖がこのコスチュームを着ると、気品があってきれいな感じに見えるのに、猫耳とか尻尾が意外なアクセントになってて、これはこれでありって感じ。」
蛍は三玖の魔法少女姿をじっくりと観察しながら、うれしそうに三玖に感想を伝えた。
「あら、そうかしら? ……ところで、この猫耳にはなんの意味があるのかしら? 尻尾の方はいずれ何かの役に立つのかもしれないけど……いずれにしても、私達に耳が4つも必要なのかしら?」
三玖は自分の魔法少女姿を確認しながら、自分の猫耳を何度も上下したり、尻尾を曲芸のように動かして、いろいろな形を描いていた。
「あ、あの……そ、それはマジカルキティの一番のアクセント……というか……」
蛍は三玖に真顔で聞かれると、再び顔を真っ赤にしながら下を向いて小声でつぶやいた。
「ねえ、みんな。それよりも、そろそろ光の方に向かわないと!」
その時、ミカが思い出したように、みんなに注意した。
「あっ、そうだった! よし、みんな急ごう!」
南美が言うと、4人はグラウンドに向かって、改めて駆け出した。
教室で異変が起きた当初は、深刻な表情で廊下を駆け出した4人だったが、正面玄関で5色の魔法少女に変身することに決まった辺りから、気づくと、異変が起こる前のような、まったりとした空気にすっかり変わってしまっていた。
南美を先頭に校舎を出た4人は、左に向きをとると、グラウンドの奥から、前回と同じように光の塔が天高く伸びているのを確認した。それから、校舎の脇をまっすぐに駆け抜けると、間もなくグラウンドの前に到着した。
「……あれ?」
南美はグラウンドに目をやるやいなや、思わず、場に合わない素っ頓狂な声を出した。
南美達がグラウンドを見渡すと、前回と多分同じ位置、グラウンドの奥辺りから、光の塔が一本天高くまで伸びていたが、対面のグラウンドの手前側に――教室の窓から見た時は死角になって見えなかったが――光の塔がもう一本、天高く伸びていた。
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