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73. 2週目

 ――それから次の授業が終わると、4人は再びひばりの元に集結した。


「ねえねえ、ひばり。イエローキティのホタルってすごくかわいいね。でも……ホタルがナミより先に魔法少女になっちゃったからビックリだよ。」


「そうだね。……そういえば、ホタルっていえば、A組の菜の花さんに少し似てない? すごくかわいいし、髪型とか雰囲気なんかも似てるし。それに名前も同じホタルだし。」


(いやいや、苗字も含めてほとんど同じ名前やし……あの娘、絶対菜の花さんやろ。)

 ゆかりは心の中で、再び同じつっこみを入れていた。


「おーよ。……そういや、菜の花さんも雑誌でモデルやってるし。俺、先週たまたま菜の花さんが載ってる雑誌を見たんだけどさ……菜の花さんも黄色のプレシャスストーン(PS)みたいなのを首から掛けてたりして……気のせいだけど、なんか似てる気もすんな。」


(いやいや……雑誌でモデルやってて、プレシャスストーン(PS)を首から掛けてるんやったら、それは気のせいとかやなくて、もう菜の花さん本人確定でいいやろ。……てゆうか、なんでお前が菜の花さん載ってる雑誌読んでんねん。)

 ゆかりは、机に突っ伏して全身をプルプルさせながら、心の中でさらにつっこみを入れた。


「いや、ぜんぜん似てなかったね。ふん、完全なる他人のそら似だね。奈野原と菜の花ってところで、苗字がまるっきり違うし……それにホタルって名前の女の子なんて、日本中探せば1万人はいるよ。イエローキティのホタルだったら、菜の花さんよりも、むしろ私……じゃなくてつかさの方が100倍近かったと思うよ。」

 ルーシー達の漠然とした感想を、ひばりは自信満々にすっぱりと否定した。


「……なるほど。確かに。」

 ひばりの話を聞いて、3人は納得したようにうんうんとうなづいた。


(一体なんやねんお前は!!)

 他の3人がナミやホタルについて少し不思議に思っても、自信満々にそれを一蹴するひばりのせいで、話がまるで核心部分に進む気配がない。


(それに、ホタルっていう名前の女の子なんて、日本中探してもそんなにおらんやろ。……まあ、ホタルとお前がぜんぜん似てへんっていう部分はぜんぜん間違ってへんけどな。あと……つかさって誰やねん?)


 ゆかりは、机に突っ伏したまま、疲れたように息をはいた。

 ――ふーっ……いや、それにしても、この4人組以外に、クラスメイトの中にも、他にマジカルキティを観てた娘がいるはずや。それに、学校全体でいったら、かなりの数に昇るはずや。やのに、あの4人以外、誰も昨日のアニメの話題なんかしてへん。まあ、高校生にもなって、学校でするような話題やないけど……。でも、内容が内容やっただけに、誰も話題にせん方が絶対におかしいやろ。……ほんまおかしな話やけど、マジカルキティに出てた日乃彩ナミと奈野原ホタルが、同じ学校の緋色南美や菜の花蛍に見えてるんは……どうもうちだけみたいなようや。そうなると……やっぱりうちは病気いうことなんやろか?


 ゆかりは一人絶望的な気持ちになった。


 ――それから、本日の授業がすべて終了すると、放課後4人は再びひばりの元に集結した。


「ウラニャースから来た子猫のミカってすごくかわいいね。私もあんな猫飼いたいな。」

「そうだね。……そういえば、緋色さんが毎日学校に連れてきてるミカもすごくかわいいね。」

「おーよ。なんつーか、あの長い尻尾がちょっとかっけーよな。」


(……いや……放課後もやんねや……)

 ゆかりは、もうつっこむ気力がなかった。


「うん、やっぱり時代は猫。今時家で犬を飼うなんて時代遅れも甚だしいね。私がもしもこれからペットを飼うなら断然猫。犬なんてのは論外だね。」

 ひばりが言うと、なぜかそれがフラグにしか聞こえないから不思議だ。


(……あれ?)

 ゆかりは、アホらしいからもう帰ろうと思って、机から顔を上げて教室をさっと見渡すと、自分以外にも、ひばり達4人の会話をちらちらと横目に聞いている生徒がいることに気がついた。


 その生徒とは、先週異変が起きた時に、屋上からゆかりにいちいち指示を出していた露草詩叙つゆくさしのだった。


 露草さんといえば、授業が終わったら、いつも教室からすぐにいなくなってしまうのに、授業が終わっても、ずっと教室に残ってんのって珍しいな……ってこの下り、先週もやったような気がするわ。


 ゆかりは、この際やから、いっそ露草さんに直接聞いたろかな……と思ったが、露草さんとは1年の時にクラスメイトだった時から、ほとんどと言っていいほど親しくはない。それに、普段から私にしゃべりかけないでのオーラが強めの娘や。


 ゆかりは、聞きに行こうか行くまいか、どうしようか自分の机でしばらく迷っていた。すると、詩叙はすっと自分の席より立ち上がって、気づくとゆかりの前に立っていた。


 ゆかりは真剣に迷っているところ、急に机の端をトントンと指先で叩かれたので、ハッとして思わず上を向いた。

「……へっ?」

 すると詩叙しのが、無表情でゆかりを見下ろしていた。


「あの……」

 詩叙は、聞こえるか聞こえないかわからないくらいの小さな声で、ゆかりに話し掛けた。


「えっ?……な、なんや?」

 ゆかりは、まさか詩叙の方から話し掛けてきてくれるとは思わなかった。

(なんか……聞きたくない気もせんでもないが、ピンチはチャンス……ともいうし……)


「今日……あるから……」

「……えっ? あ、あるって……な、何がや?」

「異変……」

「……い、異変て?」

「うん……」

「えっ? そ、それって……まさか、先週と同じやつか?」

「うん……それで……」

「えっ? ……そ、それでなんやねん?」

「しばらく……教室から出ないでほしいの……」

「えっ? な、なんでや?」

「えっと……死ぬ……かもしれないから……」

「ふぐわっ!?」

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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