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72. 2週目

 ひとまず無事に学校に到着すると、ゆかりはどさっと自分の席に深く腰掛けた。今日の夕方からの店の営業に備えて、できるだけ体力は温存しておきたかったのに、学校に来るのに余計な体力を使ってしまった。それに、なによりも今は一刻も早く5色の魔法少女のことを忘れてしまいたい。


 ……だが、残念ながらまったくそういうわけにはいかなかった。なぜなら、同じクラスには支子くちなしひばりがいるからである。その日、ひばり、プル、ミア、ルーシーの仲良し4人組は、授業が終わるごとにひばりの席に集合しては、その度に昨日の「子猫の魔法少女マジカルキティ」の1話ついて熱く語り合った。


「ねえねえ、ひばり。ナミってすごくいい娘だね。私、これで今回もレッドキティのナミ推しが確定したよ。」

 幼少の頃より赤色の魔法少女推しであるプルが、ピョンピョン跳ねながらしゃべっている。


「そうだね。……そういえば、ナミっていえば、A組の緋色さんに少し似てない? 美人だし、髪型も同じポニーテールだし。それに、名前も同じナミだし。」

 緑色の魔法少女推しであるルーシーが、なんの気もなしに言った。


(いやいや、苗字も含めてほとんど同じ名前やし……あの娘、絶対に緋色さんやろ。)

 ゆかりは授業が終わるとすぐ、心身の疲労から、机に突っ伏して休息をとっていたが、教室の反対側から、聞きたくなくとも4人のキャッキャした会話が、いやでも耳に入ってきてしまうため、心の中で一人つっこみを入れていた。


「おーよ。……そういや、緋色さんの実家も近所で洋食屋やってんな。俺、この前緋色さんの洋食屋に行ったんだけどさあ……緋色さんのオヤジもあごひげなんか生やしたりして、なんつーか緋色さんの両親の方にも、ちょっぴり似てた気もすんな。」

 青色の魔法少女推しであるミアが、ルーシーの意見に同意すると、情報を追加した。


(いやいや……それやったら、緋色さんのおとんとおかんも含めて、もうそれは緋色家とちゃうんか。)

 ゆかりは、机に突っ伏して全身をプルプルさせながら、心の中でさらにつっこみを入れた。


「いや、ぜんぜん似てなかったね。完全な他人のそら似だと、私ならそう断言できるね。そもそも緋色と日乃彩って、苗字からしてぜんぜん違うし……それに、ナミっていう名前の女の子なんて、日本中にいっぱいいるよ。レッドキティのナミだったら、緋色さんよりも、むしろプルの方が100倍近いと思うよ。」

 ルーシー達の漠然とした感想を、ひばりは自信満々にすっぱりと否定した。


「……確かに。」

 ひばりの話を聞いて、3人は納得したようにうんうんとうなづいた。


(ちょちょちょ……なんでやねん!!)

 ゆかりはすくっと立ち上がって、4人の輪に割って入り、「おい! あれはどう見ても緋色さん本人やろ。それに……このプルって娘のどこがナミと似てんねん。ちんちくりんで、何から何までがまったくの別人やろ。逆に、似てるとこ探すことの方が難しいっちゅうねん。」と、つっこみを入れに行きたくて仕方なかったが、そんなことをしたら、4人組だけでなく、教室にいる他のクラスメイトからも、絶対に引かれてしまうので、全身をよりプルプルさせながら、泣く泣く断念して席にとどまった。


 というのも、あの4人は昨夜のマジカルキティの1話を始めから終わりまで、しっかり観ているはずなのに、物語の舞台が、自分達が今住んでいる宝箱市だとか、ここ宝箱女子高校かもしれないとか、日乃彩ナミが、実は緋色南美本人であるという認識が、なぜかまったくないのである。


 ――あと、それとあの4人組についてなんやけど……始業式から傍目で見ている感じやと、今日うちと一緒に坂道を登っていたひばりという娘が、どうやら4人の中のリーダー格みたいやな。4人の中で一番アホっぽいにもかかわらず、あの娘が無茶苦茶な理屈でも、そうだと断言してしまうと、なんか妙な説得力があるようで、他の3人はすぐに納得してまうみたいや。



 それでは、ここでひばりの仲良し4人組について紹介しよう。


 この4人は、小学生の時にいち早くグループから抜け出すことに成功した薄珊瑚うすさんごつかさも入れて、家が近所で幼少の頃からの親友である。そしてこの4人は、幼少の頃から5色の魔法少女好きで繋がっており、その絆は、高校2年生になった今でも揺るがないものとなっている。


 まずはプル。


 ひばりにレッドキティ本人である南美よりナミに似てると言われ、素直にキャッキャ喜んでいた女の子。先に断っておくと、ゆかりがつっこみを入れたくなったのも理解できるくらい、レッドキティのナミとは似ても似つかない。まず背がものすごく低い。実はプルはクラスで一番背が低くて、背が低い方であるひばりやゆかりより、さらに一回りくらい低い。それに、髪も前髪を眉毛の上の方で短く整えているので、全体的に子供っぽく見えて、たまに小学生と間違えられることもあるみたいだ。しかし、性格はポジティブで、幼そうに見えても、実は結構しっかりしていて、学校の成績も比較的優秀で、その外見に反して、中身はかなり大人なようである。

 彼女の推しは、もちろん赤色の魔法少女である。


 次にミア。


 彼女は、プルとは逆で背は高い方で、髪型はウルフカットで、その顔立ちや仕草を含め、見た目はかなり男っぽく見える。初見だと、彼女はなぜか怒っているように見えるが、元々がそのような顔立ちなのである。オレっ娘で、性格は、自分では冷静で理論派だと分析しているが、実はこれは何代か前の青色の魔法少女に寄せようと、常日頃から意識しているせいであり、そのため普段でも、彼女の口癖だった「おーよ。まあ、なんつーか、そこんとこよろしくだぜ。」というセリフを無理に多用する傾向が見て取れる。彼女は、プルとは逆で、外見は大人だが、中身はまだまだ子供のようである。学校の成績は、まあ下の方である。

 彼女の推しは、もちろん青色の魔法少女である。


 最後にルーシー。


 彼女は、身長もクラスでちょうど真ん中くらいで、学校の成績も真ん中くらい。そして4人の中で一番普通に見える。くるくるふんわりとパーマをおしゃれにまとめ、全体的に愛くるしい顔立ちをしているので、彼女だったら、別に好き好んでこのグループにいなくてもいいのに……と思わなくもない。だが彼女自身は、この場所にいるのが一番居心地がよいのだそうだ。

 彼女の推しは、もちろん緑の魔法少女……といいたいところだが、実は緑色の魔法少女にそんなに想い入れがあるわけでなく、幼い頃、薄珊瑚つかさも含めて5人で魔法少女ごっこをしようとなった時に、たまたま緑色の魔法少女が最後まで残ってしまったので、控えめで平和主義な彼女が残った緑を選んだに過ぎなかった。そして、そんな状態がいまだに続いているのである。


 それと、ひばりの父親の耀司から桃色の魔法少女だといわれた薄珊瑚つかさ。


 彼女は、ひばり達と同じ2年D組のクラスメイトだが、今はひばり達とは別のグループに所属しているので、この場で紹介する必要はないだろう。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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