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70. 2週目

 緋色さんみたいな日乃彩さんが、先週からなぜか校内で飼うことになった子猫にそっくりな長い尻尾の子猫と一緒に、5色の魔法少女を探している。それに、出てくる場面の景色も、よーく見ると、その場所は――まあどこにでもありそうな景色ではあるけど――宝箱市だといわれれば、そう見えんくもない。それからストーリーが進み、番組の後半になると、実は日乃彩さんが、二人が春休みをかけてずっと探し求めていた赤色の魔法少女だったという感動のシーンを挟んで、その後、日乃彩さんが通う宝石女学園で起きた光景は、まさしく先週ゆかりが宝箱女子高校2年の初日の放課後に体験した奇妙な夢と、奇妙なくらい一致していた。


 その日の放課後、宝石女学園のグラウンドで、日乃彩さんのクラスメイトの奈野原なのはらホタルさん――いや、奈野原ホタルて……これも同じ学校の花蛍はなほたるさんにそっくりで、しかも名前もほぼほぼ一致してるんやけど――が子猫と一緒に、日乃彩さんの帰りを待っていると、グラウンドに突如一本の光の線が天高くまで伸びて、学校にいるすべての生徒の時間が停止した。そして光の中から、子猫の親猫いう猫の形をしたロボットが現れると、子猫を彼女の生まれ故郷の惑星に連れ返そうと直々に交渉を始めた。それから交渉が決裂すると、光の中から新たにロボットが一体飛び出してきて、子猫を捕まえようと追いかけ始めた。そして子猫がロボットに捕らえられて、光りの中に連れて行かれそうになると、奈野原さんが黄色の魔法少女イエローキティに変身し、そのロボットを倒したところで1話が終了となった。


 ゆかりは、先週の出来事について、あんなに明晰な百中夢はなかったが、それでもあえて夢だと思うことにして、あの時の奇妙な記憶を頭の中から消し去ろうとしていた。彼女にはもう、精神的にも肉体的にも、実家のお好み焼き屋以外の厄介事について考える体力は残されていなかった。


 それと、マジカルキティに出てきた惑星から来た宇宙猫のミカについてだが、天才の常磐さん――多分同じクラスのはずなんやけど……教室にいるの、いまだに見たことないんやけど――が飼い主とかいう、生徒会室で飼っている子猫にそっくりで、クラスメイトに、かわいいから休み時間に生徒会室まで一緒に見に行こうと誘われたものの、なぜかイヤな予感がしたので断っていた……が、なぜかそのうち、子猫は校内を自由に歩き回るようになっていた。ゆかりは校内で子猫の長い尻尾を見かけると、あの時の奇妙な体験が記憶から蘇ってきそうになるトラウマで、条件反射的に自分の視界から外れるところまで逃げるようにしていた。


(あえて聞かんようにしとったんやけど……あの子猫の名前も……確か……ミカとかいうんやなかったっけ……?)


 それが、たった今テレビを観てしまったことで、ゆかりは、あの時の奇妙な記憶が鮮明に蘇ってくるとともに、その時の出来事がアニメになって放送されるという、さらに説明のつかない奇妙な事態が脳内に上書きされると、その日は完全に頭がショートしてしまった。


 しかし、ゆかりの仕事に対する強い責任感が、彼女にわずかな理性を残して、その日は閉店まで仕事を全うすることができたのである。


 そして、最後の客を見送って、入口に掛けてある店の暖簾を外したその瞬間、ゆかりは完全に燃え尽きて、そのままスロオモーションで地面に倒れこんでしまった。しかし、カウント9.9のところで、なんとか地面から立ち上がると、そのままよろよろと壁にもたれながら、なんとか正気を保ちつつ、ふらふらしながら自分の部屋に入った。それから、背中に黒字で大きく江戸と書かれた紫の作務衣から普段着に着替えると、再び力尽きて、そのまま布団の上にうつ伏せに倒れこんでしまった。


「……あかん。うちだけおかしなってる。」


 ゆかりは、先週の件は自分が働き過ぎで、一時的に軽いノイローゼになって、意味のない幻覚でも見てしまったのだと思いこんでいた。責任感の強い人間であればあるほど、そういう病気になりやすいとかいうし……つまり、あれはそういうことだったんだろうと、強引に自分の中で片付けようとしていた。……だが、本心ではどう考えても納得していなかった。


 それに店の営業中、ゆかりがテレビの画面を見て一人パニックになっていたにもかかわらず、一方店内を見回しても、マジカルキティの舞台が地元の宝箱市かもしれないだとか、緋色さんや菜の花さん、それと、うちらと同業で洋食屋を経営してる緋色さんのおとんとかおかんとかが、ほぼ登場人物なことに気づく人がいてもぜんぜんおかしくないはずなのに……誰もそのことを話題にしてなかったし、それどころか、そのことにまったく気づいている様子もなかった。しかも店内でアニメの放送中、テレビを食い入るようにずっと観ていた小さな子供や大きな子供が複数人いたというのに……

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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