69. 2週目
実は自分が通う宝箱女子高校に突如ロボットが襲来し、同級生に5色の魔法少女が誕生して、それから一週間、3色目の魔法少女が見つかったり、校内で猫を飼うことになったり……一方そういうことには一切かかわりのないまま、至って普通なウィークデーを過ごすと、日曜日には自身の誕生日を家族に祝ってもらって、待望の5色の魔法少女の新シリーズ「子猫の魔法少女マジカルキティ」がとうとう始まった翌日の朝、支子ひばりは、いつものように寝坊すると、妹の万智に必死に起こしてもらって、寝ぼけまなこで家を出ると、急いで駅まで走って、なんとか学校の始業時間にギリギリ間に合う電車に飛び乗った。
今日の朝は親友のプル、ミア、ルーシーの3人と同じ電車に乗って、学校まで一緒に、昨日の「子猫の魔法少女マジカルキティ」の1話について、熱く語り合うつもりだったのに、すごく残念だ。それよりも、今は早く学校に向かわなければ遅刻してしまう。ギリギリの電車に乗れば、なんとか始業時間には間に合うはず……だが、いつもの歩くスピードだと到底間に合わない。駅を降りてから、ほとんど走ってるのと変わらないくらい速足で歩く必要があった。
ひばりは駅を降りると、すぐに学校に向かって必死に坂道を登り始めた。そのため、自分の側でもう一人、同じように必死に坂道を登っている生徒がいることにまったく気がつかなかった。その生徒も、あることが原因で、昨夜からずっと頭が混乱しっ放しで、いちいちひばりのことなど気にかけている余裕などなかった。その生徒とは、ひばりと同じ2年A組の江戸紫ゆかりだった。
元々ゆかりは、ひばりと違って、朝寝坊して学校に遅刻しそうになるとか、そんなだらしないタイプの人間ではない。実は、昨夜目にした衝撃の出来事が原因で、すっかりパニックになってしまい、それから今に至るまで、頭の整理がまるでできていないのだった。
それは昨夜、いつものように実家のお好み焼き屋「元祖大阪お好み焼き江戸むらさき」の手伝いをしている時のことだった。その日もゆかりは、昼のランチタイムの営業開始から、威勢よく店内を元気に動き回っていた。そして夜の時間帯になって、客のアルコールの注文数量が増加すると、店内は増々活気づいていった。ゆかりが、ふと店内に設置されているテレビに目をやると、「5色の魔法少女」の最新作「子猫の魔法少女マジカルキティ」の1話が流れているところだった。その日、「江戸むらさき」は客が一杯で、ゆかりもてんやわんやの忙しさで、時たまテレビに目をやりながら、「そういや……今日から放送開始やったなあ。」などと思っていた。そして、それはゆかりが客の注文した生ビールの大ジョッキを2杯ずつ左右にもって、テーブル席に向かっているまさにその時のことだった。
「……ほへっ!?」
ゆかりが、ふとテレビの画面に目を向けた瞬間、あまりの衝撃で、思わず両手に持っていたグラスを全部床に落としてしまった。
ガッシャーン!!
その時、ガラスの割れる音が店内中に大きく響き渡った。しかし、ゆかりはそれにはまったく反応しないで、マジカルキティの主人公である赤色の魔法少女が大写しになっているテレビの画面にくぎ付けになっていた。
(……えっ? あれって……緋色さん……ちゃうんか?)
「5色の子猫の魔法少女マジカルキティ」の主人公の日乃彩ナミは、アニメ風の作画にはなっているものの、1年の時にクラスメイトだった緋色南美と瓜二つだった。
(それに……名前も日乃彩ナミって……緋色南美とほとんど同じ名前やん。)
ゆかりがテレビの画面を見て、その場で呆然と立ちつくしていると、その横で、ゆかりのおかんが、失礼しゃしたー! と大声で叫んで、「何してんねん、ほんま……どんくさいな、この子は……。ビール代やらグラス代やらもバカにならんゆうのに……」とぶつぶつ文句を言いながら、床に散らばったガラスとビールを片付けていた。
ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、
【ブックマークに追加】
【ポイントを入れて作者を応援しよう】
に、あなたの評価『★』をお願いします。




