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67. 最初の7日間

「あら? なぜ常盤さんが生徒会室に来たのかしら?」

 生徒会の副会長である三玖が、同じ生徒会の相談役である常盤さんにするには、非常におかしな質問だった。しかし、常盤さんが生徒会室に来るなど、生徒会の方からお願いでもしない限りなかったことだったので、三玖の質問も、あながち的外れな質問とはいえなかった。


「ふふふ……名目上だけなのかもしれないけど……若葉君、僕は君と同じく、れっきとした生徒会の一員だったりするんでね。それに……子猫の所有権を有する者の一人として、僕が今生徒会室にいるのは、極めて自然なことだと思うんだけど……はてさて……いかがだろうか?」

 常盤さんは、不敵な笑みを浮かべながら、少し意地のわるそうな顔で三玖を見た。


「あら……そ、そうね。そう言われると、確かに常盤さんの言う通りね。ごめんなさい。自分でもおかしな質問をしてしまったわ。」

 三玖は、慌てて常磐さんに謝った。


 南美は、こんな余裕がない三玖を見るのは初めてだったので、少し驚いた。


「いやいや……別に若葉君が謝る必要なんてないよ。実際に、僕が生徒会室に来たのは、1年生の時も3回きりだったんだからね。確かに君の言う通りだ。ふふふ……申し訳ない。朝一番の軽いモーニングジョークくらいに思ってよ。……いやあ実はね……僕の認識だと、学校や社会のルールとか、曲がったことなんかが人一倍嫌いな若葉君に、昨日、実にらしくないお願いをされてしまったので……ならば、よっぽどのことがあったに違いないと思って、こうして朝早く学校に来て、君達が来るのをこっそり待っていた……というわけだよ。」


(……だったら、今日早く学校に来なくても、昨日科学教室にいる時に聞いてくれればいいのに……)

 南美は心の中でつぶやいた。


「いやいや……昨日はかにすきの方が第一プライオリティだったんでね。それで、子猫のことは、残念ながら後回しになってしまったんだよ。」


「えっ!?」

 南美は、常磐さんに心中を見透かされて、思わずドキッとした。


「ほうほう……ふむふむ……なるほど……これは……へえ確かに……」

 常盤さんは、ミカの間近まで顔を近づけると、ミカの頭から長い尻尾の先まで、じっくりと観察し始めた。


 ミカは、常盤さんにあちこちをジロジロと見られて、少し居心地の悪さを感じながらも、とりあえず常磐さんに挨拶した。

「おはよう、常磐さん。」


 すると常盤さんは、納得したように、ミカにうんうんと深くうなずいた。


「ふむふむ……なるほど。確かに、これはとても興味深い。猫類の中において、この子猫は、まさに突出した存在だといえよう。でも……残念ながら、僕は猫類の研究にはまったく興味がなくってね。それに……どちらかというと、僕は猫派ではなくて、どうやら犬派みたいでね。……よし。ではでは、この子猫の長い尻尾は、僕の研究の賜物……ということにでもしておこうか。その方が生徒達への説得力にもなるだろうし、面白いだろう?」


 そう言うと、常磐さんは一人納得したような顔を浮かべて、南美達の方を振り返った。


「あの……常盤さん。もしかして……ミカが何かしゃべってるってわかるの?」

 南美は、常盤さんの反応が今一つ掴みづらかったが、もしかすると常盤さんはミカがしゃべってることを理解しているのかもと思った。


「……ふむふむ。確かに……昨日科学教室にいた時も、そして先ほどこの教室に来た時も、僕には、緋色君と若葉君がこの子猫と普通に会話してるかのように見えたよ。それと……さっきこの子猫が、僕に対して何か話しかけてきたみたいだけど……少なくともニャーと言ってないことだけは確かなようだ。」

 常盤さんは、南美の質問に要領を得ない回答を繰り返した。


「あの……常盤さんは、私がしゃべってることを理解してるの?」

 今度は、ミカが不審そうに少し首を傾げながら、直接常盤さんに聞いてみた。


 すると、常盤さんは再びミカの方をくるりと振り返ると、真剣な表情でミカをじっと見つめた。

「ふむ。……おそらくだけど、君は今、僕に対して、猫である君と人間である僕の間で会話が成立するのか? そんな質問をしたんじゃないかな? ……では、ここは君に敬意を表して、僕も単刀直入に答えるとしよう。答えはノーだ。君がニャーと言ってないことだけは確かなようだけど……残念ながら、僕は君が何を言ってるのか理解することはできないし、緋色君や若葉君のように、君と会話するのは不可能のようだ。」


 常盤さんは再び南美達の方を振り返った。

「……でも、安心してほしい。先ほども言った通り、僕は猫類の研究にはまったく興味がないんだ。だから、たとえこの子猫が特定の誰かと会話できるのだとか、普通の猫類でない何者かであったからといって、僕は決してそれを誰かに他言することはない。それだけは約束するよ。……まあ、なんにせよ、僕もこの子猫……うんうん、そういえばミカって言うんだったね。……ミカの所有者の一人として、校内にいる時は責任をもって、ちゃんと世話をするから。……じゃあ、僕はこの辺で失礼するよ。いやあ、おじゃましたね。」


 ひとまず目的を果たすと、常盤さんは生徒会室から出て行った。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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