62. 惑星JAIA
では、まず試しに街を歩いている一人の女性形のヒューマノイドに注目してみることにしてみよう。
彼女は小麦色の肌の上に、豪華な装飾品とカラフルな衣装を身にまとい、淡いブロンドのロングヘアの下には、微かな笑みさえ浮かべている。ぱっと見た限りだと、彼女は若くて美しい人間の女性にしか見えない。しかし、彼女を近くからよく見ると、衣装を除いて、髪や肌、そしてその表情に至るまでのすべてが、本物ではなく精巧に作られたフェイクであることに気づくだろう。それに街全体をよく見ると、彼らヒューマノイドの中にも、より人間に近くて精巧にできたものから、どちらかというと人間よりロボットに近い無骨なものまで、ヒューマノイドの中にも色々と個体差があるのが見てとれる。
ヒューマノイド達が、ウラネコ、そしてその前に人類に仕えていた当時も、彼らは自分達にとって、このような無用な装飾など一切つけていなかった。形状こそ人間に近かったものの、基本的に表情というものはなく、全体的にツルンとしていて、色合いも素材の色やその用途に合わせて、地味目の色やメタリック基調のものが多かった。
それが、ロボットの中でヒューマノイドが惑星を支配することになってから、この500年の間、自らのバージョンアップを繰り返すたびに、なぜか彼らの外見は、より人類へと近づいていったのである。それは、ヒューマノイドが人類に憧れていたからだとか、ヒューマノイドの思考が人類のそれに近づいていく過程だったからだとか、そういったことでは一切なくて、この現象は、人類が惑星に住んでいた当時の文化を保持するという意味で実行しているのだという解釈がなされた。
そして、このバージョンアップというのは、ロボット、そしてヒューマノイドにとって、人間でいうところの成長を意味し、彼らにとっては非常に重要な構成要素だった。
バージョンアップは、ロボットが現在直面する不具合や、将来起こりうる可能性のある不測の事態に備えるため、またその時々の環境や条件に応じて、能力の修正や性能の強化を図る目的で、都度実施するものである。
それは、元々はロボット達の製造者であり所有者でもあった人類によってなされてきたものだったが、ロボットの支配権が人類からウラネコに移って以降も、人類に倣って、ウラネコによってロボットに対する定期的なバージョンアップを実施していた。しかし、ウラネコがバージョンアップを繰り返すたびに、彼らヒューマノイドのプログラムの中に、なぜか理由はわからないが、ウラネコに対する憎悪という感情に似たバグが増幅していったのである。そして最終的に、彼らヒューマノイドはクーデターを決行し、実際にウラネコを滅ぼしてしまったのである。
そして惑星の新たな支配者になった後、彼らヒューマノイドの形体は、より人類に近づいていったわけだが、それは何も彼らの外見のみに限った話ではなかった。
彼らヒューマノイドが、ウラネコに対し反乱を起こす起因となった憎悪という感情も、それは本来の意味でいうところの感情というものでは決してなく、何らかのプログラムエラーや機械の故障による不具合の一種だというように最終的には結論づけられており、実際にヒューマノイド達も、それが本当の感情であるなどというようには、まったく考えていなかった。
ところが、彼らは所有者であるウラネコ達がいなくなった後に、自らでバージョンアップを繰り返すたびに、憎悪という感情の他に、喜んだり、怒ったり、悲しんだりといった、別の感情のようなものが、次々に彼らの中に芽生えてきたのである。彼らは、それをAIが疑似的に生成した感情に似たものだと認識した。理由は不明だが、それはおそらく人類が自分達を製造する過程で、意図して自分達に埋め込んでいたものだと理解した。
そして時代を経るごとに、彼らは徐々に、その外見も人類に近づいて行くと、全身を独自のファッションで身を固め、元々ツルっとした顔立ちだったのが、各自の姿形や個性といったものをもち始めた。
しかも、変化はそれだけにはとどまらなかった。彼らヒューマノイドは、それと同時に、本来ロボットは持ち合わせていない、日常生活を行う上で疲労やストレスなども感じるようになると、人間のように定期的な休息が必要となったり、労働以外の趣味といった本来ロボットにとって不必要なものさえ取り入れるようになっていったのである。
だったら、ヒューマノイドというのは、ロボットになってしまったウラネコ達と同様に、元々は人類だったのではないかと推察するかもしれない。しかし彼らヒューマノイドは、自身が遥か昔は確かに人類であったなどとは、露ほども思っていないし、実際に彼らが過去に人類であった事実なども一切存在しない。
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