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61. 惑星JAIA

 その日の深夜、自宅で就寝中だったクスは、部下からその報告を受けると、急いでQLタワーの下層階にある「惑星ジャイア猫型ロボット実現室」指令室へと向かった。


 指令室への移動の道すがら、クスはそれが何かの見間違い、もしくはコンピュータのエラーか機械の故障とかであってほしいと切に願った……が残念ながら、同時にそれは絶対に起こりえないだろうことをよく理解していた。


 ロボットには、そもそも人間でいうところのヒューマンエラーという事象が存在しない。


 ロボット達が惑星を支配して500年以上、彼らは自身、そして設備に対しての定期的なメンテナンスを一切怠っておらず、また状況に応じて、必要なアップデートやバージョンアップなども随時実行している。そのため、機械から誤ったデータやメモリーを受け取ったり、部下が間違った報告をする可能性は、余程の偶然が重ならない限り、ほとんど0に近かった。


 また、深夜に指令室に急行したところ、「本当は惑星になんか到着してませんでしたー。」みたいな部下からのドッキリ――だった方がどれだけありがたいかわからないが――そんなオチャメなことをする機能が搭載されたロボットなんかも、もちろん存在しないのだった。


 故にクスが今から行うことは、部下の報告が正しかったこと、ただそれを確認するだけの簡単な仕事だったのである。


 では、ここからは現在の惑星ジャイア、そして現在の支配者層であるヒューマノイドについて説明することにしよう。


 惑星ジャイアが、かつて惑星ウラニャースと呼ばれていた500年ほど前、ロボットがウラネコに対して反乱を起こした前後、実は惑星はとっくに科学技術の進歩のピークを超えていて、それからゆるやかに下降線を下っている最中だった。つまり、あの時点でも、この惑星の文明は進歩する余地はまったく残されてなくて、後は退化のスピードをいかにして遅らせるか、それくらいしか手段は残されてなかったのである。


 そのためロボットが惑星の支配を開始して、それからの500年、彼らはこの惑星ジャイアの文明レベルができる限り退化しないこと、維持することだけに注力し続けてきた。


 そして彼らが維持に励んでいたのは、何も科学技術の分野だけに限らなかった。


 彼らは、主たる5つの部門の一つに惑星の生命体の活動維持を目標とする部門を設立し、惑星の水資源や大気、鉱物などの自然環境に対する維持活動に懸命に従事するとともに、惑星に生息する野生の動植物、その他生息するすべての生命体の保護活動にも積極的に取り組んでいた。しかし彼らの活動は、それだけにとどまらなかった。その他にも、彼らは自分達ロボットにとってまったく不要である畜産業や農産業などにも従事し、日常的に牧場で家畜の世話をしたり、魚の養殖場を運営したり、大規模農園を管理し、定期的に農作物の収穫を行ったりさえしていた。


 では、なぜロボット達は、そんな彼らにとって、まったく意味のないことに長年従事し続けてきたのだろうか? それはロボット達が遥か昔、人類とある約束を交わしていたことが関係するらしい。そしてその約束がどういうものであったかというと、昔の話になるので詳細はかなり朧気だが……人類と猫類との戦争があった最中、人類が猫類に敗れて、万が一に人類が惑星からいなくなってしまうような事態になったとしても、いつか人類が再びこの星で暮らす日が訪れるその日に備えて、それまでは自然や科学あらゆる分野において、人類が生命活動を維持できる環境を整備し続けておく……というような、どうもそんなことを人類と約束していたらしい。


 そのためロボット達は、名誉ヒューマノイドのパタパが、人類を救ってくれるといわれる伝説の五色の魔法子猫達を探すため、娘のミカを一人宇宙船に乗せて旅立たせたという、一見するとこの荒唐無稽にしか思えない行動は、彼らにとっても、それは至って正しい行動だと判断せざるを得なかったのである。


 では、次にジャイアで暮らすロボット、そしてヒューマノイドを見てみることにしよう。


 なるほど……確かに社会のどこを見渡してみても、そこには必ずロボット達の姿があって、どのロボットも何かの作業に従事しているように見える。高度な演算能力が必要とされる業種、純粋にその力のみが求められる業種、各現場の用途に応じて、大小多種多様なサイズ、形状のロボットがいて、彼らは、まさにその現場に特化して造られたロボットといった感じである。


 そして、ヒューマノイド達はどうなのかというと……


 少しジャイアの街を見回してみることにしよう。すると、どこを見ても直ちに彼らを発見することはできない。しかも、街を歩いているのは人類と思わしき『人』ばかりである。これは一体どういうことなのだろう? 惑星ジャイアにいた人類は、すでに滅亡してしまったはずではなかったのか? それとも、この500年の間に、どこかから戻ってきたのだろうか? もしくは、どこか別の惑星の人類が移住してきたとか? ……いや、一見すると人類に見えるこの存在こそが、まさにヒューマノイドなのである。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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