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60. 惑星JAIA

 惑星ジャイアの現在の首都であるイエブは、大陸の東端にある小さな島全体を指し、惑星統治の拠点となっているのが、その小島の中央にそびえ立つ高さ1000mを超える巨大なビル「QL(クーエル)タワー」である。


 惑星ジャイアは、500年前のクーデターが収束した後、ロボット達の代表者「G」という存在をピラミッドの頂点にし、5人の部門別長官――いわゆる5大長官――によって統治されている。


 その日の朝、5大長官の一人であるクスは、QLタワーの上層階の廊下を一人歩きながら、今朝のイエブの空模様と同様、灰色で憂鬱な気分にとらわれていた。


「惑星ジャイア猫型ロボット実現室」の長官であるクスの仕事は、「G」や他の4人の部門別長官とは違って、質的にも量的にも比較的相当に軽いものだった。彼の業務内容は、その肩書通り、惑星に住まうすべてのウラネコを一人残らず猫型ロボットにすることだった。だが今から500年以上前、ロボットがウラネコに反乱を起こしてから1年も経たずして、惑星に住むすべてのウラネコは捕獲され、順次ロボットにされていった。そして現在の惑星ジャイアには、生身の猫など、とっくの昔から一人も存在しなかったのである。


 しかし惑星の外で、ウラネコでありながら猫型ロボットになっていない猫が一人だけいたのである。とはいっても、すべてのウラネコを猫型ロボットにするというのは、あくまでロボット達の中の努力目標であり、必ずしも絶対目標ではなかったので、惑星から出ていってしまった猫のことなど放置しておいても特段構わないのでないかというのが、当時のロボット達の大多数の合理的な意見だった。だが、かつてはウラネコの一人であり、現在は猫型ロボットでありながら名誉ヒューマノイドの一員となったパタパと、ロボットの代表者である「G」が、事前にある約束を交わしてしまったがために、その後500年以上も渡って、その猫ミカの捜索を続けることになってしまったのである。


 パタパの説明によると、ミカを乗せた宇宙船は、惑星に古くより伝わる「伝説の五色の魔法子猫達」を探す旅に出たのだという。


 伝説の五色の魔法子猫というのは、かつてこの惑星に名前もなかった遥か昔、この惑星に生息していたと伝わっており、猫類が支配する魔法国家ウラニャースと、人類が支配する文明国家ジャイアの、永らく二国間の平和と共存の証とされてきた。


 だが数千年前、伝説の五色の魔法子猫達が、突如としてこの惑星から姿を消してしまってから、ウラニャースとジャイアのパワーバランスは徐々に崩れていった。そして両者の疑心暗鬼が深まって緊張関係が限界に達すると、とうとう猫類と人類との間で戦争が始まった。


 戦況は、次第に魔法が使えない人類の方が劣勢となって、人々は人類が存亡の危機に陥った時に、自分達を救ってくれるといわれる伝説の五色の魔法子猫達が、再び自分達の前に現れてくれるのを切に願った。だが結果は歴史の知る通り、惑星に住んでいた人類は一人残らず地上から消え去ってしまった。その後、惑星で唯一の支配者となったウラネコ達に仕えることになったロボット達は、実はヒューマノイドタイプも含め、元々人類に仕えていたロボットが多かったのである。


 そのパタパが、自分達ヒューマノイドが、かつて仕えていた人類を救ってくれるといわれた伝説の五色の魔法子猫を探すため、彼の娘であるミカを宇宙船に乗せて、遥かなる宇宙への旅に向かったというのである。確かにパタパの言う通り、伝説の五色の魔法子猫がこの惑星にいなくて、もし本当にいるのだとすれば――極めて0に近しいながらも――どこか別の惑星ということになるのであろう。しかしながら、すでに惑星からいなくなってしまった人類を救ってくれる存在を、今さら探すといわれても、まったく意味のないこととしか思わなかったが、かつては自分達の主人であった人類のためということでもあったので、ヒューマノイドとしても、その行為を無理に否定することはできなかったのである。


 それにパタパとは、彼がウラネコであった時に、ロボット達の代表者である「G」と、彼と妻であるママメト、そして娘のミカ、家族3人揃ってロボットになって永久に一緒にいさせてあげるという約束をしていたのである。


 ロボットにとって約束というのは絶対で、それにウソをつくという機能も備わっていない。


 そのためミカが宇宙に旅立ってから、あらかじめ宇宙船につけてあったレーダーからミカの位置を把握することだけが、基本的にクスの部門の唯一といっていい任務だったのである。


 それから500年以上、ミカを乗せた宇宙船は、どの惑星に着陸することもなく延々と宇宙を彷徨い続けた。それは当然のことだった。確かに伝説の五色の魔法子猫達は、数千年前に惑星から完全にいなくなってしまった。しかし、だからといって、彼女達が他の惑星にいってしまったとか、今もどこかの惑星に存在するという可能性は、ほぼ0%――つまり0.000014%以下――に過ぎなかったのである。


 そのためクスとしては、いつか宇宙船が隕石か何かと衝突し、爆発してミカもろとも木っ端微塵となって宇宙デブリとなるか、もしくは、それまでに宇宙船が故障し、信号を一切発信しなくなって探索打ち切りとなるか、たとえ故障しなかったとしても、それまで永久に宇宙を彷徨い続けるか……いずれにしても、それを見届けるだけの簡単な仕事だと思っていたのである。


 それが地球時間でつい2週間程前のこと、クスの元に、ミカを乗せた宇宙船がどこかの惑星に着陸したという報告が入ったのである。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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