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58. 宝箱女子高校の少女

 若葉さんは、ほのかに光っているリボンの緑色の石を確認すると、

「へえ。なるほど……やっぱり私は緑色の魔法子猫だったみたいね。」

 当たり前のように、その事実を受け入れた。


「えっ? やっぱり?」

 南美達は、何がやっぱりなのか、さっぱりわからなかった。


 すると若葉さんは、カバンを開けて中から緑色の箱を取りだすと、中を開けて南美達に見せた。

「ええ、ほら。」


「……あっ!」

 南美達は、それを見ると、思わず大声を出してしまった。


 その緑色の箱は、実はワイヤレスイヤホンのイヤホンケースで、ケースの真ん中には、緑色のプレシャスストーン(PS)が光り輝いていた。


「多分、そういうことなんでしょう? 私、こんな幼稚なイヤホンケースを買った記憶がぜんぜんなくて……もしかすると、誰かにもらったのかしら? ……まあ、それはともあれ、なぜか自分でも奇妙に愛着が湧いてしまってね。それで、毎日これを持ち歩くようになってたんだけど……これでその理由が、なんとなくだけど、わかった気がするわ。」


「なるほど……」

 南美達は、なぜか自分達より若葉さんの方が段取りがいいので、若葉さんのペースについていくことにした。


 それからミカは、昨日放課後に生徒会室で南美と若葉さんが二人きりでいる時に、ミカと蛍がグラウンドで遭遇した一連の出来事――グラウンドに光の塔が出現し、光の中からミカの故郷からミカのパパとロボットが現れると、ロボットがミカを光の中に連れ去ろうとして、黄色の魔法少女イエローキティに変身した蛍によってロボットが撃破されたこと――なんかについて、若葉さんに話した。


「――そう……実はあの時にそんなことが起きていたなんて……だったらあの時、私も緋色さんを引き留めちゃったりして……本当に悪いことをしてしまったわね。……そうか。私的にあの時間は、ずっと24時間+αのボーナスタイムか何かなんだと思ってたけど、あの白黒になって時が止まるってことには、ちゃんと別の意味があったのね。」


「ううん、若葉さんは何も悪くないよ。あの時は、結局私も何もできなかったし。」


「そう……だったら、私もこれから緑色の魔法子猫として、あなた達と行動をともにすることにするわ。時が止まってるんだったら、別に時間を気にする必要もないし、私としては特に問題はないわ。……それにここ数年、家族から毎年、どこか遠方まで習い事に行かされたりして、個人的にものすごく忙しかったの。緋色さんには話したけど……昨年なんか東北の音楽学校までフルートのレッスンに通わされたりしていて……でも、この4月からは、久しぶりにそういったことが一切なくなったの。……だから、今は比較的時間には余裕があるの。だから緋色さん達も、私の力が必要だったら、いつでも言ってね。」


「……えっ、いいの? あ、ありがとう、若葉さん。すごく助かる。」


 それにしても……やっぱり今日の若葉さんは、何から何まで、こっちのありがたい方に動いてくれるな。南美達は、なぜこんなにも話がスムーズに進んだのか理解できなかったが……ともあれ、自分達が一番望んでいた結果になったので、とりあえずはそのことを素直に喜んだ。


 若葉さんは、クラス委員で、しかも5色の魔法少女で、責任感があって、常識があるかどうか正直怪しくなったけど……やっぱり、すごくいい人だった。


「あら、別にいいのよ。それと……だったら私のことは、これから若葉さん……じゃなくって、三玖みくって呼んでもらえる? 私もあなた達のこと、これからは南美って下の名前で呼ぶことにするから。……ね! そういうことなんでしょう?」


 若葉三玖わかばみくがごく当たり前のように言ってきたので、南美達は、(えっ、どういうことなんだろう?)と一瞬戸惑ったが、

「えっ? ……う、うん、そう。そういうこと。」

 なぜかよくわからないが、多分そういうことなんだろうと思って、とりあえず適当に返事した。


「さて……だったら、次はミカの問題ね。私も昨日、知り合いの動物病院に行って、ミカのことを毎朝預かってくれるって約束を取り付けたばかりだったんだけど……でも、ミカがただの猫じゃないんだとしたら、まったくそういうわけにはいかないわね。……それに、ロボット達がいつ襲ってくるかわからないのに、ミカが一人家で留守番なんて、とてもそんな危険な真似をさせるわけにいかないわね。……確かに、南美のしたことは間違ってなかったわね。」


「……うん、ごめんなさい。……でも、そういうことだったんだ。」

「うーん……そうね。そうなると……どうしたらいいのかしら?」


 三玖みくは、しばらく席に座って考え込んでいたが、やがて何かを思いついたようで、やおら席から立ち上がると、教室の反対側で、かにすきを一人堪能している常盤さんの元へ向かって一人歩いていった。


「あの、常磐さん。お食事中のところ申し訳ないんだけど、少しいいかしら?」


 それから三玖みくは、常磐さんと少し会話を交わすと、すぐに南美達の元に戻ってきた。

「ええ、よかった。これで大丈夫だから。」

「えっ!? 何が!?」


 こうして南美は、ミカを毎日学校に連れてくる許可を学校側から得るという、実現が困難に思えたミッションを、なんなくコンプリートすることに成功したのだった。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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