4. 魔法少女になりたい少女
2026年1月1日連載スタートしました。
毎日朝8:00投稿予定しております。
ひばりは高校2年が始まってから一週間、ずっと幸せであったが、明日はさらに最高に幸せな一日となる予定だ。
一つは、『5色の魔法少女』シリーズの記念すべき30作目にして最新作にあたる『子猫の魔法少女マジカルキティ』の第1話が、いよいよ明日の夜から放送されることだ。
そしてもう一つは、明日の夕食で、ひばりの16歳の誕生日を祝って家族で誕生パーティーを開いてもらう予定になっていることだ。
実をいうと、先日の4月2日をもってひばりはすでに16歳になっていたのだが、父親の耀司の勤務する会社の仕事の都合で明日まで先延ばしにされていたのである。それと実はもう一つ理由があった。このひばりの16歳の誕生日に際して、両親からひばりに大切な話がある。けどあんまり期待しないでね、と言われていたのである。
だがひばりにとって、それはどうでもいいことだった。毎年の誕生日プレゼントは『5色の魔法少女』の最新作、今回でいうと『子猫の魔法少女マジカルキティ』の、それも桃色の魔法少女のグッズと決めてあり、その商品が販売されたら、その時に買ってもらうことにしていたので特に問題はない。それに親友のプル、ミア、ルーシーの三人から、すでに誕生日プレゼントをもらってお祝いもされていたし、つかさからも、バスケ部の遠征先のお土産だとのことで、現地で有名だという和菓子を、家族で食べてと言って渡されていた。
このように、一見するとひばりはこの上ない幸先の良い高2スタートダッシュを決めたかのようにも見えるが、実は彼女の中には大きな焦りがあった。
「――高2になってしまった。」
ひばりは通りを一人歩きながら思わずぽつりと呟いた。
そうなのである。ひばりにとって高2となった本年度こそが、彼女が幼少の頃よりなりたいと夢に願っていた5色の魔法少女になれるどうか、その可能性がもしかしたらあるかもしれない実質的なラストイヤーだったのである。
『5色の魔法少女』は、明日から始まる『子猫の魔法少女マジカルキティ』を含め、今までシリーズとして全30作品が発表されてきたが、実際に物語で5色の魔法少女になった少女は、全員が同学年かつ、中学2年から高校2年生までの少女に限定されていた。そして毎回どの学年の少女が5色の魔法少女になるのか、特に決まった法則があるわけでもなく、中2の少女が5色の魔法少女だった翌年も中2の少女が5色の魔法少女だった時もあれば、高1の翌年が中3だったり、中3の翌年が高2だったりとバラバラで、運が悪いと、中2から高2にかけて自分と5色の魔法少女の学年が一度も同学年にならない少女なんかも確実に存在していたのである。
ひばりは運がよかったと言っていいのかわからないが、中2、中3、高1と、3年連続で自分と同じ学年の少女が5色の魔法少女に選ばれるという幸運に恵まれたにも関わらず、結局いずれの年も5色の魔法少女になることができなかった。ひばりは今まで見たことも会ったこともないが、なぜか5色の魔法少女の存在を確信しているため、いずれの年も自分が5色の魔法少女になれないとわかった時は、かなりのショックを受けた。
特に中2のファーストイヤーの時は、物心がつく前から中2になるのをずっと待ち続け、ようやく中2になって、自分は絶対に5色の魔法少女になるものだと思っていたのに、いつまで待ってもひばりに使者が訪れることはなく、物語が進行し5色の魔法少女が出揃ってしまい、自分が絶対に5色の魔法少女になれないことが明らかになると、ひばりは信じられない気持ちでいっぱいで、なかなか現実を受け入れることができなかった。中2で5色の魔法少女になるという幼少の頃より描いてきた自身の人生設計が、早くも音を立てて崩れてしまったせいか、あの時は将来を絶望視する程の失望を味わってしまったものである。
だがしばらくして、ひばりはショックから立ち直ると、翌年中3でのチャンスを待つことにした。5色の魔法少女になれるのは、基本的に中2から高2までの間の一回きりで、基本的にある魔法少女が翌年もしくは違う年にもう一度魔法少女を務めたというケースは今までに一度もない。実は自分は中2ではなく中3で5色の魔法少女になる運命だったんだと信じたひばりは、まずは翌年の5色の魔法少女が自分と同じ中3になるかどうか、それが第一関門であったが、そこは運よく突破したものの、その後の展開は中2の時と同じような感じで、結局一年目と同様の悲しみを味わうことになったのである。そして翌年に高1になった時も大体似たような感じになって、なんだかんだいって、毎年同じくらいの期待と絶望を交互に味わってきたのである。
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