56. 宝箱女子高校の少女
(若葉さんも、常磐さんだったら別に問題ないのかな?)
同じ生徒会の若葉さんが問題ないと言ってるので、南美達は常磐さんとは反対側の席に座ると、机の上に弁当を並べた。
「えっと……それで緋色さん。なぜあなたは、今日も学校に子猫を連れてきたのかしら?」
若葉さんは席に座るやいなや、いつも通りの落ち着いた口調で、南美に話し掛けた。
南美は、約束を破ってミカを学校に連れてきてるのに、意外にも若葉さんに怒ってるような気配がなかったので、少しほっとする……というか、余計怖く感じた。
「えっと……あの、ごめんなさい。若葉さんには昨日色々と気を遣ってもらったのに……」
「ええ……でも、あなたなりに、何か特別な事情があるんでしょうね。……それに、バッグの中にずっと閉じ込めたりしてたら、子猫がかわいそうだわ。とにかく、早く外に出してあげることにしましょう。」
それにしても……何から何まで、こっちのありがたい方に動いてくれるな、今日の若葉さんは……それはさておき……
(……とうとうこの時が来たか。)
南美はゴクリと唾を飲み込むと、机の上に乗せていたバックパックのチャックをゆっくりと開いた。
「ミカ! お願い、出てきて!」
…………
南美がバックに向かって呼びかけてみたが、バッグからはなんの反応もなかった。
「……あれ?」
もしかして、まだ寝てるのかな? そう思って、南美がバッグの中を覗き込むと、ミカはすでに起きていたが、なぜか緊張でカチコチに固まっていた。
「どうしたの……ミカ? 何かあったの?」
「……う、うん、大丈夫……。ちょ、ちょっと待ってね……うん……よし……」
ミカは、いわゆる若葉さんの無意識に醸し出される高貴なオーラを前にして、土壇場になって緊張でガチガチになってしまったが、なんとか決意を固めると、バックの中から勢いよくピョーンと飛び出した。そして机の上に着地すると、若葉さんとじっと見つめ合った。
「あら、なんてかわいらしい子猫。……それに、立派な尻尾つきね。」
若葉さんは、ミカのかわいらしさに思わず笑顔になると、そのピーンと垂直に伸びた長い尻尾を見て感心していた。
ミカは、南美と顔を合わせて、お互いウンとうなずくと、若葉さんに話し掛けた。
「こここ、こんにちは……は、はじめまして若葉さん。私は惑星ウラニャースというところからやってきた、誇り高きウラニャースショートヘアのミカといいます。きょ、今日は、猫の身ながら、昨日に引き続き、無断で学校に来てしまって、ほ、本当にごめんなさい! じ、実をいいますと、私の故郷のウラネコ達が今、ロボットの反乱によって、大変なことになっていまして……あっ、ウラネコっていうのは、うらぶれた猫……じゃなくて、ウラニャースに住む猫のことをいいます。そ、それで私は、故郷のウラネコ達を救ってくれるといわれる伝説の五色の魔法子猫達を探すために宇宙船に乗って地球に来たんです。それで……実は昨日、五色の魔法子猫の内、赤色の魔法子猫は南美で、黄色の魔法子猫は蛍だというのがわかりました。……えっと、それで、昨日の放課後に突然異変が起こって、ロボットが現れたり、みんな時間が止まって白黒になってしまったのに、その時に若葉さんだけは大丈夫だったという話を南美から聞いて……もしかしたら、若葉さんも魔法子猫の一人なのかなと思って……校則違反とは知りつつも、失礼は承知で……えーっと、それを確かめるため、猫ながら今日も学校にきてしまいました。……えーっ、ところで、若葉さんは実は魔法子猫ではないのでしょうか?」
若葉さんは、最初いつも通りの落ち着いた様子で、ミカの話を聞きながら冷静にウンウンとうなずいていたが、徐々にそれが怪訝な表情に変化していくと、それから何か考え事でもするかのようにずっと上を向いて、そして最後は驚いた表情でミカを見つめていた。
南美は、ミカがあの若葉さん相手に、なんとかがんばって最後までしゃべりきってすごいなと思いながら、驚いた表情のままでいる若葉さんに確認した。
「あの……若葉さん。もしかして……ミカがしゃべってるのがわかった?」
すると、若葉さんはすぐに普段の落ち着きを取り戻して南美の方を見ると、一言だけ言葉を発した。
「ええ……驚いたわ。」
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