52. 宝箱女子高校の少女
宝箱市内にある宝箱女子高校の始業式の朝、2年A組の緋色南美は、人生で初めての大遅刻をすると、実は自分が、春休み中にずっと探し続けていた5色の魔法少女(五色の魔法子猫)のレッドキティだったことが判明し、放課後になると、ミカを学校に連れてきているのをクラス委員の若葉三玖にバレて、生徒会室に連れて行かれると、世界は突然白黒になってその動きを停止し、その頃グラウンドでは、グラウンドに生えた光の塔からミカのパパとロボットが出現し、ミカを故郷に連れ去ろうとするも、土壇場で菜の花蛍が黄色の魔法少女イエローキティに覚醒し、これを撃破した。
すでに、これだけのことが起こった、緋色南美、菜の花蛍――それとついでに江戸紫ゆかりのことも一応加えておくと――彼女達にとって、まさに激動のスタートとなった高校2年の初日だったわけだが、世界が元の彩りを取り戻し、そんなことはまるでなかったみたいな顔をして通常運転を再開し始めると、南美、ミカ、蛍の3人は、昼休みに屋上で話していた通り、これから南美の家に行って、5色の魔法少女、それとミカの故郷ついて、改めて話し合うことにした。
南美は、やさしくミカをバックパックの中に入れると、学校から自宅までの道のりを、注意深く周囲を見回しながら歩を進めた。そして世界は、色を失う前と後で、特に何も変わりはないみたいなのを確認すると、少し安心した。
家に帰る道すがら、バッグの中からはミカのすすり泣く声が微かに聞こえてきた。南美は、自分がいない間にグラウンドで起きたことを蛍から聞いていたので、ミカのことを不憫に思いながらも、今はそっとしておいてあげるしかなかった。
南美の家に到着すると、南美はバックパックを床に降ろしてチャックをゆっくりと開いた。すると、中からミカが元気よくピョーンと飛び出してきた。ミカはバッグの中で泣いてたのを南美達に勘付かれないよう、無理くりに元気を装ってでもいるのかもしれない。
それから南美の部屋に入ると、3人は早速、放課後に起きた謎の異変、光の塔から現れたミカのパパとロボット、ロボットになってしまった故郷のウラネコ達、そして5色の魔法少女について話し合うことにした。
しかし、今日一日で予想外の出来事が起こりすぎた割に、南美は異変の最中、ほとんど若葉さんと二人で生徒会室にこもりきりで、光の塔からミカのパパが現れたり、蛍が黄色の魔法少女イエローキティに変身してロボットをボコってたところなんかも、もちろん見てなかったので、実のところ、まったくと言っていいほど状況を飲み込めていなかった。
一方、蛍も目の前で突然異変が起きて、世界が白黒になって部活の女の子達の時間が停止して、それからグラウンドに、光の塔、ミカのパパ、ロボットの順で立て続けに現れた、そのすべての現場に実際に立ち会っていたものの、その間、自身は完全にパニックになってオロオロするばかりだったし、イエローキティに変身したといっても、自分でも気づいたらそうなってた感じだったので、実は彼女もあまりわかってなかった。
なんといっても、こういう時に頼りになるのは、やはりミカだった。
ミカは、おもむろに立ち上がると、もったいぶって二人の周囲をくるっと一回りした。
「コホン……では、まずは私から説明させてもらうね。まず惑星ウラニャースから、私のパパとロボットが突然私達の前に現れたことなんだけど……実はウラニャースには、巨大なエネルギーの塊が地底深くから湧き上がって天空に向かって常時飛び出している、ウラニャースの光の塔っていう象徴的な光の現象があって……それで私達ウラネコは、自分達に必要なエネルギーのすべてを、その光の塔から賄ってるの。……それで今回ロボット達は、どうやら以前から、その光の塔の莫大なエネルギーを、物体を異次元に転送するためのエネルギーに転換することに成功してたみたい。そして今日、パパはその光の塔を伝って、ウラニャースから直接地球までやってきたようなの。……ただ、それと世界が白黒になったり、時間が停止したことと、何か因果関係があるのかはわからないんだけど……」
「へえ。やっぱりすごいんだね、ミカの故郷は。でも……なんでロボット達は、そこまでしてまでミカのことをずっと捜してたんだろう?」
「ロボットにとって約束っていうのは絶対で、ロボットの方からは絶対に約束を破ることはできないの。それは可能性が完全に消滅しちゃわない限り永久に有効で、その機能は基本的にすべてのロボットに備わっているものなの。……パパがさっき地球に来た時、ロボット達と家族全員をロボットにするような約束をしたって言ってたから……私がウラニャースを脱出した日から、ロボット達はずっと私のことを監視してたんだと思う。それで今から二週間前に、ようやく私が地球に降り立ったのを確認できたので、ロボット達は、以前から用意していたウラニャースの光の塔の力を使って、今日私を連れ返すために地球までやって来たんだと思う。」
「うーん……でも、なんでミカのパパは、ロボット達と家族全員をロボットにするなんて約束をしちゃったんだろう? ……何か理由でもあったのかな?」
「うーん……なんでなんだろう?」
「あっ……ごめん……ミカ、こんな話したくないよね……」
「ううん、大丈夫。……パパとママは、私がウラニャースを発つ前、ロボットには絶対にならない。そうなってしまったら、私達はもう家族じゃないって……確かにそう言ってた。……だから、私も最初はそんなこと絶対にないって思ってた。……でも、パパが言った通り、ロボットはウソをつくことができないっていうのも、約束と一緒で、ロボットにとっては絶対なんだ。……だから、もし本当にそんな約束をしてたとしても、多分、パパなりに何か理由があったんだと思う。……あっ! もしかしたらそういうことなのかも。」
「えっ? どういうことなの?」
「うん。これもパパが言ってたことなんだけど……実は、私がウラニャースを出て地球に降り立つまで、500年以上も掛かったそうなの。」
「えっ!? 500年!?」
南美はその時、ミカが地球に来るまでに、途方もない年月を旅していた事実を初めて知って驚愕した。
「パパとママは、私が伝説の五色の魔法子猫がいる惑星を見つけるまでに、もしかすると何十年も何百年も掛かるかもしれないってことが、最初からわかってたんだと思う。それで自分達がウラネコのままだったら、私と再会できなくなってしまうので……あえてパパとママはロボットになるという道を選択したのかもしれない……」
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