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50. お好み焼き屋の少女

「ま、とりあえずは、あの光のところにでも行ってみることにしよか。」

 ゆかりはその場をUターンすると、学校に向かって、のそのそと歩き出した。


 それから再び正門をくぐって、校舎脇を歩いていると、やがてグラウンドが見えてきた。


 ゆかりがグラウンドの前まで来ると、やっぱりグラウンドもすべてが白黒で、グラウンドで熱心に部活動をしていた女の子達も全力で止まっていた。そして、グラウンドの奥には、この灰色の世界には不似合いな一本の光の線が、白い雲の遥か上まで伸びていた。


(まあ、しゃーないな。だいたいこんなもんやと思っとったし……)

 ゆかりは、グラウンドをさっと見渡すと、とりあえず教室にでも戻ろうかと思って、その場を回れ右した。


(……うん?)

 その時、グラウンドに自分と同じ彩り(カラー)がある人が一瞬見えたような気がした。


(……えっ? ……あれは……もしかせんでも、はなほたるさんやないんか?)

 ゆかりはその場を再び回れ右して、その色がある人が見えた辺りを、もう一度目を凝らして確認した。すると色があったのは、ゆかりが1年の時にクラスメイトだった菜の花蛍だった。


 ゆかりは、自分以外にも色のある人がいたので少しホッとした。


(でも……自分と同じ色があるんが、なんで菜の花さんなんやろ?)

 ゆかりは1年の時、確かに菜の花さんとは同じクラスだったが、それほど親しかったわけでもなかった。

(うちと菜の花さんが似たような感じやからやろうか?)

「……いや……まあ、それはないか。」


 ゆかりは、とりあえず菜の花さんの方へ向かってゆっくりと近づいていった。そして遠目から、「おーい! 菜の花さーん!」と声を掛けようとしたが、菜の花さんの方を見ると、真剣な顔で何やら取り込み中の様子だった。


(あれ? 一体誰としゃべってんのやろ?)

 ゆかりは、菜の花さんの声が聞こえるくらいまで、こっそりと近づいてみた。


「……えっ? なんなん?」

 ゆかりが菜の花さんの方に近づくと、実際にしゃべっていたのは、菜の花さんではなくて、菜の花さんの隣にいる猫だった。


(うわっ!? なんで菜の花さんやなくて猫がしゃべってんねん。……まあ夢やし、別にしゃーないか。……でも……あのしゃべってる子猫、確かアメリカンショートヘアいうんやったっけ? ……そうすると……グラウンドにいる猫の方もおんなじなんか? するとあの二匹……親子かなんかなんか? ……でも、あの親猫の方、気のせいか、ものすごくメカメカしないか? ……いや、それにしてもどんな夢やねん。ぜんぜん意味わからんわ。)


 ゆかりは、ここからだと猫達の会話を聞き取ることはできなかったが、何やら深刻な話をしてるような雰囲気だったので、邪魔したら悪いと思い、とりあえず二匹の話が終わるまで、近くの水飲み場に隠れることにした。


 それからしばらくすると、突然グラウンド奥の光の中から、小学1年生が描いたようなロボットが出現して、子猫を追いかけ始めた。菜の花さんを見ると、子猫のことが心配でしょうがないが、どうやら怖くてその場から動けないようだった。


(なんや……この夢って……菜の花さんの子猫をうちが助けなあかんとか……もしかするとそういう類の夢なんか? 相変わらずぜんぜん意味がわからんねんけど……うーん……しゃーないなぁ。ようわからんけど……よっしゃ! こうなったら、もううちがあの子猫助けに行ったろか。)


 ゆかりは、まったく事情は飲み込めないが、あまり深く考えず、グラウンドで逃げ回っている子猫の救助に向かおうと、その場からすくっと立ち上がった。


 その時、目の前にある水飲み場に、コツンと何か小さなものがぶつかった。

 どうやら、かなり上から誰かが小石か何かを水飲み場に落としたようだった。


(うん? なんや?)

 ゆかりは、校舎の方を振り向いた。


 すると、屋上には露草詩叙つゆくさしのが立っていた。露草さんは、ゆかりと目が合うと、無表情のまま人差し指をそっと唇に近づけた。


(えっ? なんや、黙っとかなあかんのか?)

 ゆかりは、よくわからないが、とりあえず露草さんの指示に従うことにして、再びその場にしゃがみこんだ。


(……てゆうか、確かに露草さんとも1年の時は同じクラスやったけど……ほとんど話したこともないのに、なんで自分の夢に登場してるんやろ?)

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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