表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/41

3. 魔法少女になりたい少女

2026年1月1日連載スタートしました。

毎日朝8:00投稿予定しております。

 ここは宝箱市たからばこしといって、都心からだと電車でだいたい30分くらいの場所に位置し、市中にこれは推せるといった特色が特にあるわけでもないので、ぱっとみた限りだと、日本中のどこにでもある郊外の街の一つといった感じである。実は宝箱市には芸術家やクリエイターを数多く輩出する文化の街という側面もあるにはあるのだが、多くの市民にとってそれはあんまり関係のない話なのである。とはいえ、都心へのアクセスは良好で、色がないということは、逆にいうとそれ程ゴチャゴチャしてないということであり、比較的静かでおっとりした街なので、エリアではそこそこに人気だそうである。


 季節は春で、日本人にとっては、1年の中で最も希望にあふれた季節といっていいのかもしれない。桜の花はすでにほとんど散ってしまったが、落ちた桜の山がピンクの絨毯になって、そこを歩く人達の、これから訪れるであろう輝かしい未来を祝福してくれているかのようでもあった。


 地元の宝箱市にある宝箱女子高校の新学期がスタートしてから、すでに一週間が経過しようとしていた。そして、そこに通う2年の支子くちなしひばりにとっては、まさに平和で幸せな一週間だった。


  週末の土曜、ひばりは学校帰りに、親友のプル、ミア、ルーシーの三人と別れると、今は一人家路に向かって帰宅中だった。ひばりは幸せだった。まさか2年になって、アニメ『5色の魔法少女』シリーズの共通のファンであり、幼少の頃より幼馴染でもあるプル、ミア、ルーシー、それと薄珊瑚うすさんごつかさも入れると、四人と同じクラスになれるなんて夢にも思わなかったからである。小さい頃は、よく五人で公園に集まって5色の魔法少女ごっこをしたものである。プルは赤、ミアは青、ルーシーは緑、つかさは黄、そしてひばりは桃色の魔法少女というのが定番だった。残念ながら、つかさは小学生の頃から始めたバスケットボールの方に夢中になって、次第に四人とは疎遠になってしまったものの、家は一番近所にあり、別に仲が悪いわけではない。ちなみに残った四人は、今でも定期的にどこかに集合しては本格的なコスチュームに身を包んで魔法少女ごっこを続けているという噂だ。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 では、ここで『5色の魔法少女』について少し説明しよう。


『5色の魔法少女』とは、今から30年前に突如として始まったTVアニメシリーズで、制作は業界でも大手のアニメーション会社『宝石プロダクション』が務めている。放送は、毎週日曜夜の7時からで全50回。4月から第1話がスタートし、週1回およそ1年をかけて放送される。『5色の魔法少女』は放送開始当初から人気が爆発し、放送開始から30年が経った今でも国民的定番アニメとして認知され、シリーズ全体の平均視聴率は20−30%とかなり高い。特に小学生までの女子に限ると、視聴率はほぼ100%に近いともいわれる。


 物語の舞台は日本にある架空の都市で、基本的には日本のどこにでもあるような郊外の街がすべてのシリーズを通して共通で設定されている。そして舞台となっている都市は、ありふれた街並みに、全国の北から南まで様々な都市の外観やエッセンスやらが何十にもミクスチャーされており、一部そうだと思われる場所を特定することは可能だが、一つの都市に絞ることは不可能とされている。その点では、いわゆるご当地アニメとは一線を画している。


 5色の魔法少女は、タイトルの通り、赤、青、緑、黄、桃色の5色の魔法少女で構成され、各自が人智を超える圧倒的な物理的パワーを有すると共に、赤色が炎属性、青色が水属性、緑色が自然属性、黄色が雷属性、それと桃色がなんでもありともいわれる最強の魔法が使える。


 物語は、ある惑星が侵略者によって滅亡の危機に瀕し、惑星の使者が地球にいる5色の魔法少女に助けを求めにくるというのが、ありきたりだが、だいたいデフォルトの設定になっている。魔法少女になる少女は、なぜか知らず知らずのうちに、自身が魔法少女の証である各色のプレシャスストーン(通称PS)を所持しており、魔法少女と使者の想いが合わさると魔法少女に変身することができるようになる。


 ちなみに『5色の魔法少女』は、好評を博し先月に放送が終了したシリーズ第29作目の『音色の魔法少女マジカルクイン』が現時点での最新作となる。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


『5色の魔法少女』ついてはこれくらいにして、話を支子くちなしひばりに戻そう。


 この支子くちなしひばりという少女、幼少の頃から筋金入りの5色の魔法少女好きで、それで一体どれくらい好きなのかというと、高2になった今でも、コスプレして親友達と共に5色の魔法少女ごっこに本気で興じるくらいに好き、というだけには留まらず、5色の魔法少女は本当に実在して、一年に一度、新たな5色の魔法少女が誕生しては、自分達の知らないところでどこかの惑星の人々を救ってるんだと信じて疑わないくらい、痛々しい程に清々(すがすが)しくも5色の魔法少女、特に桃色の魔法少女のことを愛してやまないのである。そんな彼女の将来の夢は、もちろん5色の魔法少女、それも桃色の魔法少女になることである。


 そんな彼女が背中に背負っている5MGGIRLSという大きなロゴの入った派手なピンクのバックパックは、アンオフィシャルながらも、もちろん5色の魔法少女のバックパックで、バッグには、こちらはオフィシャルの、缶バッジやらキーホルダーやらのグッズがそこら中につけてあって、彼女が歩くたびに、それらがぶつかり合ってガチャガチャと音を鳴らしていた。


 そして彼女の容姿はどうかいうと、背は小柄な方で、おそらく背の順もクラスでは前の方だろう。自然に少し茶色がかった髪は、短めながらも髪の毛の左右をピンクのゴムで留めており、そこから肩口辺りまで髪がチョコンと左右に飛び出している。顔立ちも、高2にしてはまだまだ幼さが残っているものの、全体的にバランスはまとまっており、かわいいと言えなくもない。


 それと彼女が通う宝箱女子高校の制服は、地元でもかわいらしいことで有名なのだが、あいにく彼女は5色の魔法少女以外のことにはほとんど関心がないので、こげ茶のブレザーに、学校指定のあずき色のセーター、ホワイトのブラウスの首元にワインレッドのリボン、えんじと紺のチェックのスカート、足元は黒の靴下にローファーと、すべてが少し大きめであること以外は、至って校則に沿った格好で、素材の良さをそのまま活かしていると言った方がいいのか、宝の持ち腐れと言った方がいいのかわからない。


 彼女の内面については、その外見と同様、依然子供っぽさを多分に残しているように見える。そして彼女が街を歩いていると、男女に関わらず100人いれば100人は振り返らないと言っていいくらいの普通さが彼女にはある。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

【ブックマークに追加】

【ポイントを入れて作者を応援しよう】

 に、あなたの評価『★』をお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ