46. 誕生?? 魔法少女
実はこのイヤホンは、『子猫の魔法少女マジカルキティ』の前作にあたる『音色の魔法少女マジカルクイン』で、5人の少女が5色の魔法少女になる時に使用するプレシャスストーン(PS)が入ったイヤホンケースを模した、5MGIRLS公式のワイヤレスイヤホン(ピンククインバージョン)だった。
ひばりは、ケースに収納されていた桃色のプレシャスストーン(PS)を取り出すと、先ほど燿司から受け取った黄色の石と見比べてみた。
確かに、2つは形やサイズなんかはまったくといっていいほど同じように見えたが、なぜか重さや質感がぜんぜん違った。
桃色のプレシャスストーン(PS)は、ガラス製の安っぽくて軽量なものだったが、それに対して黄色の石は、不必要なくらい高価に見えて、なんの材質かわからないが、大きさに対して少し重すぎるように感じた。
ひばりは、耀司から黄色の石を受け取った時、最初はその黄色の石が、元々それのイエロークインバージョンのワイヤレスイヤホンのケースに入っていたプレシャスストーン(PS)だとか、400円のガチャガチャで、同じ黄色がダブったので不要になったプレシャスストーン(PS)だとか、駿河屋とかのジャンクコーナーとかで、安価に売られているグッズか何かだろうと疑ったが、どうもそんな類のものとは違うみたいだ。
ひばりは、試しに黄色の石をピンクのイヤホンケースの真ん中にはめてみた。
すると黄色の石は、そのイヤホンケースが元々その石専用に作られた宝石箱であるかのようにピタリと収納された。
そしてその瞬間、黄色の石がなぜか黄金色に光り輝いた。
でも、だからといってひばりは別に驚いたりしなかった。これは、単にこのケースにそういうギミックが入っているだけだった。
ひばりは、なんかこの黄色の石いやによく光るな……とか、他にも色々あったが、特に気にせずに、とりあえずイヤホンケースに付属の桃色のプレシャスストーン(PS)を戻すと、黄色の石を左手に握った。
それからひばりは、耀司に言われた通り、六芒星の一筆書きに挑戦することにした。
車や電車に衝突したり、過労死だとか、突然誰かに刺されたり、そんな悲惨な目にあって異世界に転生するみたいなよりは、よっぽど楽ちんで安全だし、それに他にすることもなかったので、とりあえずやってみようと思ったのである。
「――なんだよ、この六芒星って! こんなの本当に一筆書きできるんか? 一筆書きするんだったら、せめて普通の星にしてくれよ!」
それからしばらくすると、ひばりはイスの上に行儀悪くしゃがみながら、一人マジギレしていた。
どうやら六芒星の意味は理解したようだが、どうしたら一筆書きできるのかさっぱりわからず、ひばりはしばらくの間、一人で悪戦苦闘していた。その後、一時間くらいがんばって、奇跡的になんとか一筆書きできるようになったみたいだったが、自分にも黄色の石にもなんの変化もなかった。その後何度もやってみたが、やはり変化はなかった。
ひばりは、変化がなくて正解なのか、一筆書きがうまくできてなくて不正解なのか、そのどちらかさえもわからなかった。
「もう! なんなんだよ! コンチクショー!」
ひばりは、魔法少女にはあるまじき言葉遣いで叫んだ。
それからひばりは、ものすごい時間と労力の無駄遣いをしたという実感が湧いてきた。
「……疲れた。……もう寝よ。」
ひばりは寝る前に、スマホのメールを確認した。
果たして、今回で何十回目になるのだろうか?
そこには、5色の魔法少女シリーズの制作会社である宝石プロダクションの『子猫の魔法少女マジカルキティ』の制作チームの代表からの返信メールが入っていた。
Re: 問合せ
支子ひばり様
いつも5色の魔法少女シリーズを応援いただき、誠にありがとうございます。
5色の魔法少女シリーズは、長年に渡りあなたのような熱心なファンの皆さまのご声援に支えられ、今年で無事に30周年を迎えることができました。
お問合せの件ですが、子猫の魔法少女マジカルキティは、4月からの放送を純粋に楽しんでもらうため、公式で発表している以外の情報につきましては、一切公開することができません。申し訳ありませんが、放送が開始するまで、それまでしばらくはお楽しみにお待ちください。
さて、もしも5色の魔法少女が本当に地球にいたりしたら、それはとても素敵なことでしょうね。残念ながら、私達はまだ彼女達と会ったことはありませんが、もしかするとこの世界のどこかにいて、いつかあなたとも出会うことがあるかもしれませんね。
そしていよいよ今月から、5色の魔法少女シリーズの記念となる30作目になる『子猫の魔法少女マジカルキティ』がスタートします。我々制作一同、放送開始に向けて、みなさんに楽しんでもらえる作品になるように、すべての情熱をかたむけて作品の制作に取り組んでいるところです。
新作の『子猫の魔法少女マジカルキティ』、そして新しい5色の魔法少女達も、きっとあなたの新たなお気に入りになっていただけると、そう信じております。
これからも5色の魔法少女の応援よろしくお願いします。
宝石プロダクション
ひばりは、5色の魔法少女の新しいシリーズが始まると、定期的に公式の問合せフォームに、
――魔法少女は本当にいないんですか? 実は本当はいるんじゃないですか? もしいるんだったら、こっそり私にだけ教えてもらえませんか?――
という謎のメールを送っているため、その度にアニメの制作会社より、上記のような定型文のメールを受け取っていた。
だがそれゆえに、実は宝石プロダクションの中では、ひばりはちょっとした有名人であるということを彼女自身は知る由もなかった。
ひばりは、いつものように少し期待してメールを開いてみたが、やっぱりいつも通りのメールだったので、いつものようにがっかりして、それと、なぜか少しホッとすると、部屋の明かりを消してベッドの中へ潜り込んだ。
ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、
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