45. 誕生?? 魔法少女
「ふふ……すごいわね……」
ホタルとミカの様子を、最初から一人屋上で観察していた遊草シノは、かすかに笑うと、安心した表情で静かに屋上から立ち去った。
『子猫の魔法少女マジカルキティ』の1話が終了し、テレビの画面からはエンディングソングが流れ始めた。
「なんか……いきなり出ちゃったな。黄色。」
「そうね、出ちゃったみたいね……」
燿司が一応残念そうな顔をすると、洋子も燿司の調子に合わせた。
「まあ、そんなもんだよ。」
万智は普段通りの顔で、エンドロールを眺めていた。
「えっ!? なんで黄色が出ちゃうの!?」
一方ひばりは、信じられないといった面持ちで、一人大きなショックを受けているようだった。
支子家の反応は、上記のように、まさに四者四様だったわけだが、燿司は、そんなひばりの気持ちなどまったく意に介さず、お気楽にひばりに話し掛けた。
「まあ、仕方ないじゃないか。あっちの黄色の魔法少女はかわいい娘なんだし。」
「そうよ、ひばり。諦めるのはまだ早いわ。ひばりは黄色の魔法少女の補欠とか、2軍の補欠とかかもしれないし……それに、5色の魔法少女とは違う集団の魔法少女……だっていう可能性もまだまだ否定しきれないわ。」
幼少の頃より5色の魔法少女になりたいと心から願い続けたひばりの夢が、儚くもまさに今、潰えてしまったこの瞬間に際してもなお、
(相変わらず余計なことを言ってんな、この二人は。)
万智は心の中で思った。
「もう! うるさいなー!」
ひばりは、そんな両親の心づかい?を、面倒くさそうにはねのけた。
ひばり以外の、燿司、洋子、万智の三人は、ひばりが一応黄色の魔法少女になったからといって、『子猫の魔法少女マジカルキティ』に、これから5色の魔法少女のイエローキティとして参加することになるとは、はなから思っていない。まあ当然だよねという反応だった。
そして実はひばりも、自分が5色の魔法少女イエローキティじゃなかったことは、別にショックでもなんでもなかった。
自身の誕生パーティーという記念の日に、両親からいきなり黄色い石を渡されて、黄色の魔法少女になったんだよ、おめでとうなんて言われても、そんなデタラメな話、いくらひばりといえど、まったく信じてはいなかった。(だが、『子猫の魔法少女マジカルキティ』には、いまだ桃色の魔法少女ピンクキティとして参加する予定ではいたが……)
では、なぜひばりはマジカルキティの1話を観てショックを受けてしまったのだろうか?
実は、それとはまったく違う理由からだった。
これまで観てきた5色の魔法少女シリーズ、『RO-Qの魔法少女』から『音色の魔法少女』までの全29作品の中で、1話で主人公が5色の魔法少女に変身しなかったことも、代わりに主人公以外の少女が1番最初に5色の魔法少女に変身するという展開も、シリーズでは初めてのことだった。
まさに予想外のシリーズのスタートに、ひばりのテンションは一気にマックスになった。
(マジカルキティは絶対名作になる。)
ひばりは心の中でそう確信した。
ひばりは、急いで自分の部屋に駆け上がると、それからしばらくは、プル、ミア、ルーシーの仲良し三人組と、マジカルキティの1話について、長時間わいわいと語り合った。
自分の誕生パーティーの後に、両親に不愉快なサプライズを仕掛けられたが、もうそんなことは気にならなかった。
それからプル達とのグループチャットも終わって、やがて興奮が少しずつ冷めてくると、ひばりは急に何かを思い出したように、やにわにポケットの中をゴソゴソとあさり始めた。そして、先ほど耀司からもらった魔法少女の証とかいう黄色の石を取り出した。
「は〜〜……やっぱり黄色か……」
そう言って、ひばりは長いため息をついた……が、しかし何も石の色を確認するためだけに、ひばりはその石を取り出したわけではなかった。
ひばりは、その石を手の平の上で転がしながら、じっくりと観察した。
色には不満があるが、確かにその石は、『5色の魔法少女シリーズ』を通して、5色の魔法少女達が必ず持っていて、そして彼女達が5色の魔法少女であるという証でもあるプレシャスストーン(PS)に奇妙なくらい一致していた。
ひばりは、おもむろに机の上に置いてあったピンクの小さなケースを手に取った。
そのケースは、ワイヤレスイヤホンの充電ケースだった。
ひばりがピンクのケースを開けると、左右のイヤホンのちょうど真ん中には、桃色のプレシャスストーン(PS)が入っていた。
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