42. 「誕生!! 魔法少女」
「……パパ……私……ロボットになっちゃうの?」
「そうだ。その通りだ。」
「……そう……約束した?」
「そう、約束通りだ。」
「……嘘だ。」
「いや、決して嘘じゃない。……ミカ、さあ帰ろう。ママにも会いたいだろう。ママもミカのことを待って……」
パパがそこまで言いかけた時、ミカの感情が爆発した。
「嘘だ! パパもママも、そんな約束絶対にしない! ロボットさん……私のパパとママを返して……お願い……お願いします。」
ミカは叫びながら、涙がポロポロと瞳から溢れ出した。
パパは、そんなミカを前にしても、無機質にミカを見つめるだけだった。
「やれやれ……やはりウラネコというのは、所詮感情というものがついているから、果たしてどうすることが正解なのか、たとえそれがどんな重要な場面であっても、決して理性的な判断を下すことができない。だから、何かと面倒な存在になるのだな。……ミカ、我がままなんか言うんじゃない。さっさと我々の故郷に帰るぞ。」
「……パパ。私、パパとママの約束通り、伝説の五色の魔法子猫を見つけたよ。私の隣にいるホタルも、人類だけど、五色の魔法子猫の一人なんだよ。」
「えっ、私?」
ホタルは、ミカに自分をいきなり五色の魔法子猫だと紹介されても、ミカのパパにどう挨拶していいのかわからなかった。
「伝説の五色の魔法子猫? ……ふむ。確かに、この広い宇宙の中には、そういう存在が、0.000014%の可能性で存在するのかもしれない。しかし、ウラネコどもが滅亡した今となっては、我々ジャイアの民にとって、まったく必要のない存在だ。」
「……ジャイア?」
「うむ。……惑星ジャイアにいたウラネコどもは、すべてロボットになって、永遠の生命を手にすることができたのだ。社会は平等でなんの不満もない。まさに平和そのものだ。それに……」
パパは、瞳に内蔵したカメラで、ホタルをばっちりと観察すると、目の前にスクリーンを出して、尻尾で画面をパチパチと叩きだした。
「……うむ、やはり。……ミカ、残念ながらその人間は、伝説の五色の魔法子猫でもなんでもない。一応分析してみたが、いわゆる人類という種別と、なんら相違点もない。至って普遍的な、この地球という惑星に住む人間の一人のようだ。」
「そんな……」
ミカは、やっと今日わずかに希望の光が見えたと思ったのに……絶望的な気持ちでホタルを見つめた。
ホタルも、自分が本当は五色の魔法子猫でないことが、心の底から申し訳ない想いでミカを見つめた。
「ミカ、これでわかっただろう。いつまでも我がままを言ってないで……さあ、すぐに帰るんだ。」
「……イヤだ。」
「……ふむ。ここまで状況を説明してもダメか。……仕方ない。こうなったら、力ずくで連れて帰るしかないようだ。」
パパは、目の前のスクリーンを操作すると、光の中から一体のロボットが出てきた。
それは3m程の大きさの、全体的にシンプルな構造をしたロボットで、関節の可動域も少なく、地球でも初期にイメージされていた二足歩行のロボット像に近かった。ロボットのてっぺんには四角い顔がつけられて、顔には、お飾りの目とか口のようなものがつけ足されていた。ロボットの右手にはクレーンがついていて、それで対象物を捉えるようである。そして左手には吸盤がついていて、右手で捉えた対象物を保持するために使うようである。そのロボットは、惑星ジャイアの建設現場で使われている、左右のアームの取り替え可能な、一般的な現場ロボットだった。
ロボットは、光から出ると、そのままミカに向かって突進してきた。
ちなみに走るのは、実際に足を使って走るのではなくて、足の底についたローラーで走行していた。また、2mくらいジャンプすることが可能なようである。
「ふーむ……現時点では、これくらいのロボットしか地球に転移できないが……まあ、これでも十分だろう。」
パパは、ロボットから必死に逃げるミカの様子を冷静に観察していた。
ミカはグラウンド中を走りながら、ロボットから逃げ回った。
ロボットは、ミカを追いかけながら、右手のクレーンの狙いをミカに定めると、ミカを目掛けて躊躇なく発射した。
ホタルは、ミカの危機的な状況を前にしても、怖くてただ見ているしかできなかった。
――ナミ、お願い! 早く来て!
ホタルは心の中で必死に祈った。
ぱっと見だと、ミカはロボットのクレーン攻撃を軽やかにかわしているようにも見えるが、実はまったくそうではなかった。
ごく一般的な量産型の現場ロボットといえど、やはりジャイアメイドのロボットだった。
ロボットは、ミカがグラウンドから出ないよう、ミカの逃走経路を常に計算しながらミカを追いかけており、クレーンを闇雲に発射しているように見せながら、実はミカの動きを的確に分析しており、徐々にミカは疲労で動きが重くなってくると、校庭の奥の方へと追い詰められて、ついに逃げ場がなくなってしまった。そして、ロボットからクレーンが発射されると、正確にミカの胴体を掴んで、クレーンが戻った拍子に、ミカは左手の吸盤に完全に固定されてしまった。
「さあ、それじゃ帰ろう。」
パパは、ロボットを引き連れて、光の方に向かって、ゆっくりと歩き出した。
「……助けて!!」
ホタルは遠くからミカの叫び声が聞こえた。
ホタルは、何も考えず、ただロボット達のいる方に向かって駆け出した。
「ミカ!」
ホタルは泣きながら、ミカに向かって大声で叫んだ。
「ホタル……助けて……」
ミカは、かわいそうになるくらい惨めで、悔しそうにシクシクと泣いていた。
パパと現場ロボットは、ホタルが目の前に来ても、まったく関心がないように、真っすぐ光の方へと進んだ。
このままだとミカがウラニャースへ連れていかれる。
ロボットにされてしまう。
――私が本当に伝説の五色の魔法子猫だったら……
ホタルは、そう強く心に願った。
その時、二人に奇跡が起きた。
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