37. 「誕生!! 魔法少女」
ホタルがそっと扉を開けると、二人は屋上に出た。
二人は辺りを見渡すと、自分達以外に屋上には誰もいないようだったので、ようやくバックパックからミカを出して、三人での昼食タイムとなった。だが、屋上の片隅で、二人と1年の時のクラスメイトだった遊草シノが、一人パンを食べながら、ナミ達の姿をボーっと眺めていたことに、ナミ達はまったく気づかなかった。
ナミは、お互いの弁当をミカに分けながら、今朝学校を遅刻した理由をホタルに説明した。
「そっか……。ミカはナミの家から出て行くつもりだったんだ。私も、ナミが学校を遅刻するなんて初めてだったから、多分そんなことじゃないかって思ってた。でも、ミカがお家にいられるようになってよかったね。」
ホタルは、うれしそうな表情でミカを見た。それから、ナミの方を心配そうな表情で振り返った。
「でも……ナミが五色の魔法子猫だったなんて……」
「魔法子猫じゃなくって、魔法少女だからね。」
ナミはホタルにツッコミを入れると、ミカは一人、う〜〜んと、なにやら真剣に考えこんでいた。
「あれ? ミカ、どうしたの?」
二人は、ミカのことを心配そうに見つめた。
「多分……なんだけど、ホタルも五色の魔法子猫の一人だと思う。」
ミカは、ホタルをじっと見つめると、そう断言した。
「えっ!? 私も!?」
ホタルは、ビックリした顔でミカに聞き返した。
「うん。……だって、私としゃべることができたのって、結局ナミとホタルの二人だけだったでしょ? 多分、地球上で私としゃべることができるのって、伝説の五色の魔法子猫だけなんだと思う。」
ミカは、とうとう伝説の五色の魔法子猫達を探し当てる法則を発見したのだと確信した。
「でも……私とミカが一緒にいた時も、ミカのリボンは光らなかったし……えっ? そんな……私が? まさか……」
ホタルは、自分が五色の魔法子猫だという自覚がまったくないのに、いきなりミカにそう決めつけられて、どうしたらいいのかわからなかった。
「私もミカとずっと一緒にいて、今まで一回もリボンが光ることがなかったのに、なぜか今朝、リボンの赤い石が突然光り輝いたの。だからホタルも、いつか何色かの石が光ることがあるかもしれない。」
ナミも、ミカの言う通り、もしかすると、ホタルも自分と同じ5色の魔法少女なのかもしれないと思った。
「でも……急に私も魔法少女だって言われても……私、ぜんぜん魔法なんて使えないし……特に何も変わったこともないよ。……それに私、本当に魔法少女だったら……そんな……私……どうしたらいいの?」
ホタルは、二人から自分が魔法少女かもしれないと言われて、少しパニックになった。
「ホタル、安心して。私も別に魔法が使えるようになったり、強くなったりしたわけじゃないみたいだから。実は、ミカのリボンが光ったからといって、私自身、特に何も変わった感じがしないんだ。だから、5色の魔法少女になって、それからどうするか、とりあえず今日学校が終わってから、三人で一緒に考えてみようよ。」
「えっ? ……そうなんだ。ナミも何もわかってないんだ。……だったら、そうするしかないかな……」
ホタルは、魔法少女になったからといって、すぐに何か変わるわけでもないことがわかって、少しホッとした。と同時に、もし自分が魔法少女になったら、これから自分の人生はどうなってしまうんだろうと不安にかられた。しかし、それは自分が本当に魔法少女になってから考える他なかった。
ナミ達は昼食を済ますと、ホタルは、はっと急に何かを思い出したようにバッグを開けると、中から一冊のスケッチブックを取り出した。
そのスケッチブックは、ホタルが洋服やアクセサリーのデザインなんかを考える時に使っているデッサン帳だった。中には、美術が得意なホタルが手書きした、ドレスやジュエリーなどのデザインが数多く書き込まれているのをナミも知っていたが、恥ずかしがり屋のホタルは、その中を今までナミにも見せたことがなかった。
「あのね……実は私、この前二人の話を聞いて……それで、もしも五色の魔法子猫の一人がナミだったらいいのになって……そう思って書いてみたんだ。」
そう言うと、ホタルは二人にスケッチブックに書かれた一枚のデッサンを見せた。
そこには、鉛筆で書かれたナミが、魔法少女のコスチュームに身を包んで、ミカと並んでポーズしている姿が描かれていた。
魔法少女のコスチュームは、ホタルがデザインしたオリジナルのもので、白を基調とした制服と膝上のブリーフスカート、そしてロングタイツという組み合わせの、定番に近い魔法少女のコスチュームで、首元にはミカとお揃いのリボンが着けてあった。
ホタルのデザインコンセプトは、子猫のかわいらしさを表現しつつも、着る人がただかわいくみえるだけでなく、着る人によっては、かっこよくも、美しくもみえるように、考えてデザインされていた。コスチュームのベースの白以外の、黒色で描かれた部分が、おそらく各色の魔法子猫の色になるみたいで、ナミの場合だと赤色になるのだろう。
そして魔法子猫らしく、頭の上に猫耳と、スカートの後ろにミカと同じような長い尻尾がついていて、ナミにはそれがかなり恥ずかしかった。
「……どうかな?」
ホタルは、恥ずかしそうにナミに感想を求めた。
「うん。全体的にはすごくいい感じなんだけど……でも、猫耳と尻尾は却下かな。」
(えっ? むしろ、そこが一番のアクセントなのに……)
ホタルは心の中で思った。
そうこうしていると、昼休みの終了時間が近づいてきたので、ナミ達は、そろそろ教室に戻ることにした。遊草さんは、知らないうちに屋上からいなくなっていた。
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