35. 「誕生!! 魔法少女」
「えっ? なんで……」
ミカは、驚いた顔でナミを見た。ナミは今朝学校に行ったはずなのに、なんでここにいるの?
「なんでじゃないよ! ミカ、外に出ちゃダメだって、何度も言ったでしょう!」
「でも……」
「でも……じゃないよ……ミカ、お願い……出てっちゃダメなんだから……」
ナミは、そこから先は、涙が溢れ出して止まらなくなってしまった。
ナミは今日、家族が全員外出し、家に誰もいなくなったら、ミカは絶対に出て行ってしまうだろうと思って、今朝、学校に行ったふりをして、実は家を出てすぐの角で、ミカが出るのをずっと待っていた。
「でも……でも……行かなきゃ……」
ミカも、地球に来てから、ずっと我慢していたはずなのに、涙が止まらなくなった。
「ミカ、お願い……お願いだから行かないで。」
「ナミ……」
ナミはその場でしゃがむと、ミカに向かって両手を大きく広げた。
「おいで。」
すると、ミカも我慢できずに、ナミの胸に勢いよく飛びこんだ。
「ダメ……行っちゃダメなんだから。あなたみたいに小さくてか弱い子が外に出たりなんかしたら、絶対に誰かに捕まっちゃう。それに……あなたにとって、外はすごく危ないところなんだよ。心無い人や野生動物なんかに襲われることがあるかもしれない。」
「でも……」
「ごめんね……。でも、あなた一人だけを行かせるわけにはいかないの。あなたはもう、私にとって、かけがえのない大切な妹なの。だから、私が成長して、あなたについていくことができるようになったら、そしたら二人で世界中に伝説の五色の魔法子猫を探しに行こう。だから……だからね、お願いだから、それまでは待ってほしいの。……ごめんね。私、わがままばっかり言って。」
「ナミ……私もナミのこと大好き。私もナミのこと、本当のお姉ちゃんだと思ってる。……私、出ていきたくない。本当は、ナミと……ナミのパパとママと……ずっと、ずっと一緒にいたい。でも……でも……」
「うん。わかってる。ごめん……ごめんね。」
二人は涙で目をつむりながら、ずっと抱きしめ合ったままだった。
ナミは、自分が五色の魔法子猫だったら、ミカは、ナミが五色の魔法子猫だったら、二人は同じことを強く願った。
すると、ミカの首元のリボンについた5色の石の一番端っこの赤い石が、突然真っ赤に光り輝いた。
ナミは閉じた瞳の上から、その光に気がつくと、そっと目を開けてみた。
「……あれ?」
ミカも、耳元でナミの変な声が聞こえたので、そっと目を開けてみた。
「……あれ?」
これまでなんの反応も示すことがなかったミカのリボンの五色の丸い石が、二人の前で初めて光っていた。
「えっ? どういうことなの?」
ナミは、もしかしたら自分達の近くを、たまたま五色の魔法子猫が通りかかったのかもと思って、辺りをキョロキョロと見回した。
「つまりは……」
ミカは、ナミの腕からスルッと抜け出すと、地面にピタリと着地した。
「やっぱり、ナミが五色の魔法子猫の一人だったんだ。」
ミカは、驚いた表情から一変して、コホンと息を整えると、冷静に状況を分析した。
「えっ!? 私が!?」
ナミは驚いた様子で自分のことを指さした。
「うん、間違いない。ナミが赤色の魔法子猫だよ。」
ミカは、うれしそうにそう断言した。
「えっ? ……でも、本当に私だったら、魔法子猫じゃなくて、魔法少女だね。」
ナミは、自分が本当に5色の魔法少女の一人だったことにビックリしたが、それ以上に、これで、これからもずっとミカと一緒にいられることの方がよっぽどうれしかった。
それはミカも同じだった。二人はうれしくて、再び抱き合った。
それからしばらくして、ナミはおもむろにバックパックを整理すると、ミカも、さも当たり前のように、その中に入った。
「……よし。それじゃ、学校に行こうか。」
「うん。」
ナミは生まれて初めての、しかも無断での大遅刻となった。
ナミは、これで晴れて赤色の魔法少女になったわけだが、魔法が使えるようになったとか、身体が超パワーアップしたとか、その内面も、外見も含めて、今のところ、特になんの変化も感じなかった。でも、自分の春休みが終わったら、ミカが日乃彩家から出て行ってしまうかもしれないという一番の問題が、これでひとまず解決したみたいなので、そんなことは今の彼女にとっては些細なことだった。学校が終わって家に帰ってから、ミカと二人でゆっくり調べよう。
それよりも、今は一刻も早く学校に向かわないと……
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