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34. 「誕生!! 魔法少女」

 春休みが終了し、今日からナミの高校2年の学生生活がスタートする。空は昨日から引き続いての快晴で、ナミはカーテンを開けると、朝の心地よい日差しが部屋一面に入りこんだ。ナミがミカのベッドを覗き込むと、ミカはまだスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。しかし、ナミが部屋で学校に行く準備をしていると、ミカもようやく目が覚めたようだ。


 二人揃って階段を降りると、台所ではすでに朝食の準備も終わって、パパとママが、二人が来るのを待っていてくれた。パパもママも、ミカの顔を確認すると、少しホッとした表情をした。ナミ達家族は、普段と変わらないように朝食をすますと、まもなくナミが学校に行く時間になった。


「ごめんね、ミカ。悪いけどお留守番お願いね。私も学校が終わったら、すぐに帰ってくるから。」

「……うん。」


 ナミは、ミカをこっそりバックパックの中に入れて学校まで連れて行こうか、家を出る直前まで悩みに悩んだ。そもそもミカを学校に連れて行くこと自体、立派な校則違反になってしまうが、それ以上に、小さいミカをバックに入れて、もしもミカの身になにかあったら、それこそ取り返しのつかないことになってしまうので、最終的には断念せざるを得なかった。


「ミカ、ママ、いってきます。」

「いってらっしゃい。」

 ミカはママに抱きかかえられながら、玄関の前でナミが家を出るのを見送った。


 それからしばらく、ミカはパパとママと一緒に過ごしたが、やがてパパとママも洋食屋へ行く時間になった。


 ミカは、ナミの時と同じように、二人を玄関の前で見送った。

「ミカ、悪いけどお留守番お願いね。夕方になったらナミも戻ってくると思うから、それまではお家でお利口にしててね。」

「それとミカ。危ないから絶対外に出ちゃダメだぞ。それに、誰か来ても絶対に出ちゃダメだからな。」

「ニャン。」

 二人はミカに外に出ないよう何度も釘をさすと、後ろ髪を引かれる思いで家を出ていった。


 ミカは二人を見送って、すぐ階段を上がってナミの部屋に入ると、二人が乗った車が遠くに行くのを窓からずっと眺めていた。


 ――うん。これでみんな出ていった。よし……それじゃ、自分も出発しよう。


 ミカは、ナミの部屋をずっと記憶にとどめておこうと思い、ゆっくりと部屋中を見渡した。


 自分を最初に見つけてくれたのがナミで本当によかった。地球に初めて来た日の夜、暗闇の中でナミの部屋を見渡した時は不安しかなかったけど、今はまるで我が家にいるような安心感がある。


 振り返ってみると、地球に降りたって、ナミと出会って、ナミの春休みが始まって、ナミに自分の伝説の五色の魔法子猫探しを手伝ってもらって、それからどこへ行くのも、ずっとナミと一緒だった。


 地球に来てから、家族のこと、故郷のことを忘れたことは一度もなかったけど、ナミと一緒にいると、その悲しみを一瞬でも忘れることができた。ミカは一人っ子だったが、ナミは彼女にとって、昔からずっと一緒にいる、本当のお姉ちゃんみたいな存在だった。

 もしも故郷のウラニャースがこんな状況じゃなかったら……


 ミカは、名残惜しそうにナミの部屋をゆっくりと後ずさりしながら出ていった。それから、家中の部屋を一部屋一部屋丁寧に見回りながら、ナミの家族との思い出を振り返った。


 ナミのパパとママも、地球の猫とかけ離れたウラネコの自分を、ぜんぜん怪しまずに、家族の一員として温かく迎え入れてくれた。パパとママは自分としゃべることができないのに、自分のことを、故郷のことを、親身になって考え、そして自分が伝えたいことを必死に理解しようとしてくれた。


 ナミにも、そしてナミのパパとママにも、すごくお世話になったのに、感謝の言葉も別れの挨拶もせずに出ていくなんて、なんて自分は恩知らずなウラネコなんだと思った。本当は、ナミにも、パパとママにも、ちゃんと挨拶して、感謝の想いをいっぱい伝えたかった。でも、ナミ達に引き留められでもしたら、決心が鈍りそうな気がしたので、結局、最後の最後まで、そうすることはできなかった。何かお返しできればいいんだけど、残念ながら今の自分にはお返しするようなものが何もない。


 それから自分が乗ってきた宇宙船は、地球上のどこにでも移動できると思うけど、宇宙船の中に入ったら自動的にコールドスリープされちゃうし、そもそも一度入ったら、どうやって外に出たらいいのかわからない。それにこの宇宙船は、宇宙船の上に乗って移動できるような設計になっていないので、そんな乗り方をしちゃうと、多分移動中に落ちて死んじゃうか、寒さで凍え死んでしまうことになるだろう。だから、とりあえず今は、自分の足で世界中を歩いて、伝説の五色の魔法子猫達を探す他に道はない。宇宙船の地球での運用方法については、いいアイデアが浮かぶまで、それまでは申し訳ないけど、ナミの家で預かってもらっておくことにしよう。多分、次にこの宇宙船に乗る時は、自分が故郷のウラニャースに帰る時だ。


 ――そうだ! この旅は希望の旅なんだ!


 次にナミの家族に会う時は、伝説の五色の魔法子猫達と一緒に、たくさんのお土産と笑顔とともに訪問することにしよう。


 ミカはそう決心すると、リビングの窓の前に行って、尻尾を使って窓のロックを解除した。そして窓を少し開けて外に出ると、そっと窓を閉め、魔法を使って外側から窓を再びロックした。


 ミカは家の外に向かってゆっくりと歩き出した。それから、門をひょいと乗り越えて家の外に出てみると、まず最初に、左に行けばいいのか、右に行けばいいのか、どっちに行けばいいのか悩んだ。いつもだったらナミが決めてくれたんだけど……

 でも……どちらに行こうが、結局はそんなに大差はない。


 じゃあ、とりあえず左に向かおうと決めて、左を向いて数歩歩いた時だった。


「こら! 外に出ちゃダメって言ったでしょう!」

 ミカの向かった反対側から大きな声が届いた。ミカが振り向くと、そこには怒った顔のナミが立っていた。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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