13. 「誕生!! 魔法少女」
2026年1月1日連載スタートしました。
毎日朝8:00投稿予定しております。
二人が丘を下って学校のグラウンドに戻ってくる頃になると、今日の清々しい空の青は、気づくとすっかり橙色に変化していた。
「ミカ。お願いがあるんだけど……。家に帰るまで、私のバックパックの中に入っててもらるかな? それと……バッグに入ってる間は、できるだけしゃべらないでいてほしいんだ。」
「えっ? なんで?」
「うん。さっきも言ったけど、地球の猫はしゃべることができないし、それに電車にも一人では乗れないの。だから……申し訳ないんだけど……」
「ううん、ぜんぜん平気だよ。」
ここはウラニャースではない。地球に入っては地球に従えだ。
「――よいしょ。じゃあ行くよ。何かあったら遠慮なく言ってね。」
「うん。」
ナミは学校を出ると、今朝登ってきた桜並木の綺麗な坂道を通るルートでなく、クラスメイトとできるだけ会わないよう、今回は少し遠回りのルートを選択した。
――ミカは少し開いたバッグの隙間から、こっそりと外の世界を眺めてみた。ナミの通う宝石女子学園は平べったい山の山頂辺りに位置し、そこからは遮るものが何もなかったので、宝石市の街並みをほぼ一望することができた。日が沈み黒くなりかけた街は、所々から明かりがちらほらと漏れて、うっすらと街の輪郭を映し出していた。全体的に薄ぼけてはっきりと見えないけど、ぱっと見た限りだと、地球という星はウラニャースとあまり変わらないように見える。――最初はそう思ったりもしたが、帰り際に、灰色の、明らかに公害をまき散らす車という乗り物を何台も見た。それから多くの人を一度に乗せて運ぶ電車というのにも乗った。確か、これらはウラニャースでも昔は主要な交通手段だったはずだ。図鑑か何かで見たことがある。
(……やっぱり。地球の文明はウラニャースより数百年は遅れている。だからといって、魔法も使えないっていうし。……本当に五色の魔法子猫達がいる星は、この地球って星で合ってるのかな?)
ミカはバッグの中で一人不安になってきた。
「ねえ……ミカ、起きてる?」
その時、ミカの耳にナミの小さな声が届いた。ナミの声を聞いたとたん、ミカは元気が出てきた。
「うん、起きてるよ。」
「うん。今周りに誰もいないから少ししゃべるね。……どう? 苦しくない?」
二人は駅を降りて、今はどこかの通りを歩いていた。
「ううん、ぜんぜん問題ないよ。」
「そう? ……よかった。それでね、もうすぐお家なんだけど……ミカはどんなものを食べるのかなって思って。」
「食べ物?」
「そう。遠慮しないで言ってね。」
「――うん……。乾燥フードみたいなもので大丈夫だよ。」
本当はお魚やお肉が大好きなのだが……。今の自分は居候の身、贅沢は言ってられない。
「……そう? うーん……だったらキャットフードとかでいいのかな? でも、キャットフードっていっても色々種類があるしな。」
ナミは近所のコンビニに寄って、一番おいしそうなキャットフードを選んだ。
それから少しして、二人はナミの家に到着した。ナミはバックパックからミカをやさしく地面に降ろした。
「ようこそミカ! 私の家へ!」
笑顔のナミがミカに見せたのは、白を基調としたシンプルモダンの綺麗な二階建ての住宅だった。
「さあ上がって。」
ナミは玄関のドアを開けると、ミカを家の中に招き入れた。ミカはドアを通って家の中に入ると、玄関から廊下に上がるのを躊躇した。
「あの……足拭きは?」
「足拭き?」
「うん。だって、そのままお家に上がったら汚いでしょ? だからお家では、お外から帰ってきた時は、いつも玄関の足拭き機かネコロバさんとかに拭いてもらってたの。」
「ネコロバさん?」
ナミは聞きなれない単語に一瞬不思議な顔をしていたが、すぐにミカの足をタオルでキレイに拭いてあげた。
それから二人はリビングに入ると、三人掛けソファの上にミカを座らせ、ナミは奥の一人掛けのソファに座った。
「ふふ……このソファは普段はパパの指定席なんだけど、今日はミカが私の指定席ね。実は私の両親は洋食屋さんをやってるの。すごくおいしいって、地元でも評判がいいんだよ。」
「ようしょくや?」
「うん。ハンバーグとかビーフシチューとかオムライスとか……とにかくなんでもおいしいものが食べられるお食事屋さんなの。ミカにも近いうちに食べさせてあげるね。」
「ありがとう……。」
「それで、今日はママが料理当番だから……もうそろそろ戻ってくる頃だと思うんだけど……。私が当番の日もあるんだよ。料理には少し自信あるんだ。パパやママみたいに上手じゃないけど……ミカにも食べてほしいな。」
「うん……。楽しみにしてる……。」
ミカは生まれて初めて地球の人の家に上がらせてもらったので、少し緊張していた。
「――じゃあ、私の部屋に行ってお話しようか。」
「うん……。」
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