12. 「誕生!! 魔法少女」
2026年1月1日連載スタートしました。
毎日朝8:00投稿予定しております。
「で……伝説の……魔法……子猫?」
ヒノイロナミという、種族でいうところの人類の、性別でいうところの女の子が、キョトンとした顔で聞き返した。
「そうです。『伝説の五色の魔法子猫』です。ご存知でしょうか?」
ウラニャースでも『伝説の五色の魔法子猫』は絵本になっていて、知らない子猫がいないくらい有名な物語だ。だったら、彼女達の地元である地球でも有名に違いない。ミカは期待に胸を膨らませながらナミの返事を待った。
「いえ、知らないけど。」
「え―っ!? なんで!?」
ミカは大声で叫ぶと、目が飛びでるかというくらい驚いた。
(どうしよう。『伝説の五色の魔法子猫』というくらいだから、彼女達の住んでいる惑星でも、ものすごく有名なんだと思ってた。だから惑星に降り立って、その星に住んでいる猫達に彼女達のことを聞いたら、すぐに彼女達の居場所を教えてくれるものばかりだと思ってた。)
「どうしたの? 大丈夫?」」
「……い、いえ、少し取り乱してしまいました。……一応、もう一度確認しますけど……あ、あの、赤、青、緑、黄、桃色の5色の魔法が使える女の子の子猫のことなんですけど……」
「……ご、ごめんなさい。聞いたことないかな。」
「うっ。」
(どうしよう。こうなってしまったらもはやノープランだ。それに……よく考えてみると、今話しているのは猫類じゃない。ウラニャースにもかつて生息していたといわれる人類だ。そういえば、この惑星に猫はいるのだろうか?)
ミカは、おそるおそるナミに聞いてみた。
「あの……この地球に猫はいるのでしょうか?」
「うん。いるよ。」
ナミの返事を聞いて、ミカはぱっと笑顔になった。
(なんだ、やっぱりいるんだ。心配して損した。じゃああとで猫達に聞こう。)
「でも……あなたみたいにしゃべらないわよ。」
「え―っ!? なんで!?」
ミカは驚きのあまり四本の足を真っ直ぐにしたまま、ピョーンと空中に跳ね上がった。
(どうしよう。地球の猫達は、もしかするとウラネコほど進化してないのかもしれない。)
「あのー……」
(言葉がしゃべれないんだったら、地球の猫達とどうやってコミュニケーションを取ったらいいんだろう? それに交渉事ならパパとママが得意だけど、私はそんなことやったことがないし……)
「あのー……」
(それに、この地球を支配しているのは、猫類ではなく、どうやら人類のようだ。だったら猫達はどこで暮らしているんだろう? とにかく猫達が生息している猫コミュニティを発見して、『伝説の五色の魔法子猫』の情報を手に入れなきゃ……)
「あのー!!」
「はい!?」
ミカはナミの大声に気づくと、思わずビクッとした。
「あの……ごめんね。あなたが地球に着いたばかりで、何かその、色々とすごく驚いているの、私にもすごくわかるよ。でもね……私もすごくビックリしてるんだよ。今朝、隕石みたいなのが学校の裏庭に落ちたのが見えて、それで裏庭に行ってみたら、見たこともない宇宙船みたいなのがあって。やっと中が開いたと思ったら、子猫のあなたが眠ってるでしょ。それで目が覚めたと思ったら、猫なのにあなた急にしゃべり出すし。さっき言ったけど、地球の猫はしゃべらないんだよ。それに……『伝説の五色の魔法子猫』だっけ? 私の方もあなたの話についていくので精一杯なんだよ。」
「……ごめんなさい。」
ミカはパパとママに叱られている時と同じような感じがして、少しシュンとした。
「ううん、別に謝る必要なんかないよ。あなたも地球に着いたばかりなんだし、とにかくまずは少し休んだ方がいいよ。それからゆっくりとお互いのことについて話しましょう。ね! そうしよ。それに……こんなところじゃなんだし、とりあえず私のお家まで一緒に帰ろ。」
「えっ? いいの?」
「もちろん。歓迎するよ。明日から春休みだし、しばらくはずーっと一緒にいられるよ。……でも、その前にこの宇宙船どうしようかな? パパの休みの日にお願いして車で運んでもらおうかな? ……でも、それだと明後日になっちゃうし。……でも、それ以外他に方法がないかな? うーん……」
ナミは宇宙船の前で何かぶつぶつと独り言を言っていた。
「ちょっと待ってね。」
ミカは、そんなナミの様子をしばし不思議そうに横から眺めていたが、今度は自分で宇宙船を調べ始めた。
「――なるほど。」
ミカは、そう言って少し顔を上げると、ミカの目の前には透明なスクリーンが浮かび上がった。それからミカは、長い尻尾を使って、そのスクリーンにパチパチとタッチし始めた。
「えっ?」
ナミは目の前で繰り広げられている信じられない光景を前にしばしあっけにとられた。
(さっきまでおしゃべりができるかわいらしい子猫にしか思えなかったのに……。でも、考えてみたら当然だよね。こんなコンパクトな宇宙船を作って地球まで来れるくらいなんだから、ミカの故郷は、地球なんかより全然文明が進んでるんだろうし。)
そう思いながら、ミカの様子を後ろから見ていると、突然宇宙船が1mくらい空中に浮かび上がった。
「うん。この宇宙船操作できるよ。」
ミカは当たり前のような顔をして後ろを振り返った。
「……そうみたいね。」
「それじゃ、行こうか。」
「……ええ。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ナミとミカは、ナミを先頭に裏庭の小高い丘を下っていった。ミカの後ろには空中に浮いた宇宙船がフワフワとついてきた。道中、ナミは何度も後ろを振り返っては宇宙船を確認すると、どうしたらいいか困った顔をした。それからしばらくすると、急にその場に立ち止まった。
「ごめん! ちょっと待って! やっぱり早い! 早すぎるのその宇宙船! 私達には!」
「えっ? 何が?」
「実はね、地球はあなた達の故郷ほどには発展してないの。だから……今あなたと一緒にその宇宙船をつれて街を歩けば大騒ぎになるわ。」
「えっ? そうなの?」
ミカは意外に思った。ここは『伝説の五色の魔法子猫』がいる星だ。当然科学文明も、最低でもウラニャースくらいには発展しているのだと思っていた。だったらこの地球という星は、その代わり、かつてのウラニャースのように魔法文明が栄えているのだろうか?
「それと……言い忘れてたけど、地球に魔法なんてないよ。」
「え―っ!? なんで!?」
ミカは驚きのあまり四本の足を真っ直ぐにしたまま、ピョーンと空中に跳ね上がった。と同時に、ミカの目の前にあった透明のスクリーンがプツンと消えると、宇宙船が地面にドスンと落ちた。制御不能になった宇宙船は、そのままゴロゴロと斜面を転がり落ちていった。
「危ない!」
ナミはすぐにそれに反応すると、宇宙船を追いかけようと坂道を駆け下りた。
「えいっ!」
その時、後ろからミカの叫び声が聞こえると、地面を転がっていた宇宙船は突然ぴたりと動きが止まった。それから再びフワフワと浮かび上がると、ゆっくりと二人の元へ帰ってきた。
「ふー、危なかった……。」
ナミは、この子としゃべる時はあまり驚かせちゃいけないと思った。
「――そんなわけで、この宇宙船は人前に出すわけにはいかないの。だからこの宇宙船は、パパの休日にでもお願いして改めて引取りに来よう。それまでは……申し訳ないけど、一旦どこかに隠しておくことにしよう。」
「うーん……。じゃあ夜になったらあなたのお家から宇宙船を遠隔操作するから。そしたらあなたのお家のお庭にでも置かせてもらっていい?」
「もちろんいいよ。それと......これから私のことはナミって呼んで。」
「うん、わかった。そしたら私のことはミカって呼んで。」
「うん、わかった。」
二人はお互い顔を見合わせると、フフッと笑いあった。
ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、
【ブックマークに追加】
【ポイントを入れて作者を応援しよう】
に、あなたの評価『★』をお願いします。




