11. 「誕生!! 魔法少女」
2026年1月1日連載スタートしました。
毎日朝8:00投稿予定しております。
「あれ? 猫? なんで?」
ナミは想像していた宇宙人的なものとはあまりにもかけ離れた、地球にもいるかわいらしい生き物が中に入っていたので拍子抜けしてしまった。ナミは宇宙船の中になんで猫が入っているのか理解不能だったが、とりあえず子猫の様子をじっくり観察し始めた。
「寝ているのかな? それとも……もしかして?」
子猫はじっとしたままで、呼吸をしている気配もなかった。ナミは一瞬恐ろしいことを想像して少しぞっとしてしまったが、勇気を出して右手を伸ばすと、子猫にそっと触れてみた。
子猫はひんやりとしていた。
「冷たっ。……それに、猫にしてはちょっと硬いみたい。こういうのってコールドスリープっていうんだっけ? 多分……だけど、生きてる。でも……どうしたらいいんだろう? うーん。……わからないんだったら、とりあえずしばらくはそっとしておこう。」
――それにしても、本当に美しい毛並み。この子、地球にいるアメリカンショートヘアにしか見えないけど、本当はどこか遠くの宇宙から来た宇宙猫なのかな? まだ生後2、3カ月くらい、かな? それと首元に添えられた水色のリボンがよく似合ってる。この子、本当に家族に大切に育てられてきたんだろうな。いつまでもずっと見てられる。
「あれ?」
ナミは子猫の目をよく見ると、閉じた両目の周りだけが少し凍っていることに気がついた。もしかするとこの子猫は宇宙船に乗る時にすごく悲しい出来事があったのかもしれない。それで宇宙船の中でもずっと泣いていたので、その周りだけが凍りついてしまったのだろう。
「きっと悲しいことがあったんだね。でも、もう大丈夫だから。」
ナミは子猫を見つめながら、これからは何があってもこの子のそばにずっといてあげようと決心した。
――ナミが子猫の様子を見てしばらくすると、ようやく子猫に変化が起きた。まず始めに体のあちこちがピクピクと痙攣すると、次は体全体がリズムよく波打ってきた。どうやら生命活動を再開し始めたようだ。呼吸を開始し、体全体にも血液が巡って血色もよくなったように見える。
ナミは、その様子を間近で眺めながら、だんだんうれしくなってきた。次は目を開けるかな? とか思って、ワクワクしながら見ていると、突然クッションの奥から長い尻尾が空に向かってピョコンと真っすぐに伸びた。それにしても長い尻尾だ。普通の猫の軽く2倍はあるように見える。
「わあ! すごい尻尾!」
ナミは子猫の長くて立派な尻尾を見て感心した。
――この子、やっぱり宇宙から来た宇宙猫なんだ。
ナミがピンと張った長い尻尾に注目していると、突然尻尾が動き始めた。子猫の長い尻尾は、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、とにかくせわしない動きを繰り返した。まるで尻尾で何かを掴もうとするかのようで必死の様子だった。
「何か夢でも見てるのかな?」
ナミは子猫の尻尾を目で追いかけながら、その動きを温かい目で見守った。
しばらくすると、それまでバタバタ動いていた子猫の尻尾が突然空中でピタッと止まると、クッションの上にぽとりと落ちた。それと同時に、子猫の目がグワッと大きく見開いた。すると子猫は、自分のことをじっと眺めているナミと思いっきり目が合った。それから数秒間、二人は無言でじーっと見つめあった。
「……なーんだ。また夢だったんだ。じゃあもう一回寝―よおっと。」
子猫は独り言を言うと、目を閉じて再び眠りに入ろうとした。
「夢じゃないから!」
子猫が目をつむると、耳元から大きな声が返ってきた。
(あれ? 夢じゃないの?)
子猫は宇宙船の中で永遠に感じるほど無数の夢を見続けていたので、今回もそんな夢の一つかと思ったが、念のためもう一度目を開けてみた。すると先ほどと同じように、猫でもロボットでもない故郷では見たことのない生物――あれ? この生物なんていうんだっけ? ――が、自分を見てニコニコ微笑んでいる。
「ここはどこ?」
子猫はクッションに寝転んで少しウトウトしながら、目の前の生物に聞いた。
「ここは地球よ。」
「ち、きゅう?」
「そう、ここは地球よ。ようこそ地球へ。かわいい子猫さん。」
「地球……あなたは誰?」
「私? 私は日乃彩ナミっていうの。あなたは?」
「私? 私はミカ。パパとママは科学者で、パパはロボットが専門で、ママはロケッ……」
そこまで言った瞬間、子猫の記憶が鮮明に蘇った。つい先ほどパパとママと悲しいお別れをしたことを。あれから、実際にどれくらい時間が経過したのかわからない。でも彼女にとって、それはつい5分程前に起きた出来事であった。あれはやっぱり夢じゃなかったんだ。
「あーん! パパー! ママ―!」
目を覚ましたと思ったら、子猫は突然泣き出してしまった。
ナミは突然の出来事に最初は戸惑ったが、すぐに気を取り直すと、自身も涙を流しながら子猫をそっと持ち上げた。
「大丈夫だから。もう大丈夫だから。ねっ。」
ナミは励ましながら、やさしく子猫を抱きしめた。子猫も泣きながら長い尻尾をナミの背中にぎゅっと絡みつけた。
その時、子猫の首元の水色のリボンに装飾された、左右に並んだ小さな5色の石の一番端っこの赤い石が薄っすらと光り輝いていたが、目を閉じて泣いていたせいか、二人ともそのことにはまったく気づかなかった。
それからしばらく、その場で抱き合ったままの二人だったが、やがて子猫は少し落ち着きを取り戻すと、『伝説の五色の魔法子猫』に会うため故郷の惑星ウラニャースを代表してはるばる地球まで来た自分が、その立場も忘れて、初めて会った地球の人の前で見境なく泣いてしまったのが、とても恥ずかしくなった。今さらながら、使者としてしっかりしたところを見せなければと思い、彼女の手からスルッと抜け出すと、地面に行儀よくピタリと着地した。
子猫は姿勢を正してコホンと息を整えると、
「ごめんなさい。失礼しました。大変お見苦しいところをお見せしてしまいました。私は惑星ウラニャースというところからやってきました、誇り高きウラニャースショートヘアのミカと申します。実は、ウラニャースがロボット達の反乱で今ウラネコ達がとても大変なことになってまして――あっ、ウラネコっていうのはウラニャースに住んでるネコ類のことをいいます。それで私のパパとママ――あっ、私の両親は科学者で、パパはロボット工学が専門で、ママはロケット工学が専門なんです。それとDr.ネコボットさん――あっ、Dr.ネコボットさんはロボットなんですけど、パパとママの助手で家族の一員なんです。――が宇宙船を作ってくれて。……それで私を乗せて、ウラネコを救ってくれるといわれる『伝説の五色の魔法子猫』を探しに地球まで来たんです。あの……すみませんが、あなたは『伝説の五色の魔法子猫』が地球のどこにいるかご存知でしょうか?」
ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、
【ブックマークに追加】
【ポイントを入れて作者を応援しよう】
に、あなたの評価『★』をお願いします。




