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9. 「誕生!! 魔法少女」

2026年1月1日連載スタートしました。

毎日朝8:00投稿予定しております。

 ――ここは宝石市ほうせきし。都心からは大体電車で30分くらいの場所にあって、ぱっと見た限りだと、日本の郊外のどこにでもあるような街の一つ、っていった感じ。でも、宝石市は劇場があったり美術館があったり、昔から芸術家が数多く生まれる文化の街として有名なんだよ。画家に作家、音楽家に俳優、それに映画監督やゲームクリエイターだったり、本当に多くの芸術家が、ここ宝石市から生まれてるの。


 ――あっ! そうそう。私のママも、パパと結婚する前までは宝石市で舞台女優をやっていて、けっこう人気だったみたい。街中でママと一緒に歩いている時なんかに、今でもたまにファンだったという人から声を掛けられることもあるし、ママは今でもすごい美人なんだ。


 ――クンクン。……ほら、街の匂いをかいでみると、そこかしこから、なんだかおいしそうな芸術の甘い匂いがしてくるでしょう? えっ? 私の気のせいだって? そんなことないよ。ほら見て。ここにもかわいらしい子猫の彫刻が飾ってある。私、宝石市が大好き。もちろん宝石市に住んでる家族も友達も、みんな大好き!


 季節は春。桜はすでに9分咲きで、あともう少しで満開だ。冬の寒さもやっと和らいできて、過ごしやすくなってきた3月の後半。街の景色は、空の晴れ晴れとした青と、桜に染まった街並のピンク色が、くっきりと色鮮やかだ。


 そんな気持ちのいい街の香りと陽気な風に誘われて、いつもより早く家を出て、学校に向かって朝の桜並木を楽しげに歩いている少女。


 髪は綺麗な黒髪で、その髪を頭頂部でひとまとめに結んでいる。いわゆるポニーテールでまとめた後ろ髪が、彼女が歩いてると背中のあたりで小気味よく左右に揺れている。小さな顔に、大きくてきれいな瞳とまっすぐに整った鼻、口は一文字にキュッと締めているが、口角は常に少し上向きで、クラスメイトの話によると、彼女の不機嫌な顔は一度も見たことがないそうである。背は平均より少し高いくらいだろうか。


 それと彼女が今着ている高校の制服。彼女が通う地元の宝石女子学園は、制服がかわいいことで有名で、上半身は紺のブレザー、ホワイトのブラウスの首元に水色のリボン、下半分は水色と白のチェックのスカート、白のハイソックスに足元はローファーにまとめた服装が、いかにも自然で、それでいて彼女のかわいらしさをより一層引き立たせている。


 彼女が街を歩いていると、男女に関わらず、100人いれば99人は振り返って見とれてしまう、それくらい彼女は魅力的なのである。だが彼女自身はそんなこと全然気にしていない。困った人を見つけると自然に手を差し伸べる。それが彼女――


 ――えっ? 私が誰って? あっ! そういえば自己紹介してなかったね。


 ――私の名前は日乃彩ひのいろナミ。宝石女子学園に通う高校1年生の女の子。


 ――春って出会いの季節でもあるけど、別れの季節でもあるよね。だから春ってだんだん暖かくなってきて、すごくワクワクした気持ちになるけど、同時にすこし悲しい気持ちにもなるの。高校に入学してからもう一年。お世話になった3年生の先輩達はみんな卒業しちゃったし、今日の終業式が終わったら、明日からは春休み。そして春休みが終わったら、もう高校2年生だ。今年の春は、私にどんな新しい出会いが待ってるんだろう?


 彼女は、外の空気があまりにも気持ちよくて、それに時間もあったので、学校の最寄りの駅の一つ手前の駅で降りて、今はそこから歩いて学校に向かっているところだった。彼女は、いつもだと前を向いてしっかりと歩くのに、どこまでも続く空の青と、頭上を彩る満開に近い桜のコントラストがあまりにも綺麗だったので、今朝は少し上を向いて景色を楽しみながら歩いていた。それと彼女の通う宝石女子学園は少し低い山を登った頂上附近に位置し、学校に行くまでに20分程の緩やかな坂道を延々と登っていく必要があるため、彼女の視線は自然と上空に注目することになった。


 ――そして、それは彼女が坂道を登り始めてから10分ほどした時のことだった。


「あれ?」

 ナミが空を見てると、雲の上の方から、なんか小さな隕石のようなものが学校に向かって落ちてくるのが見えた。


――えっ!? もしかしたら学校にぶつかるかも?

 ナミはハラハラしながらも、その隕石の動きをずっと目で追いかけていると、その隕石は学校まであと50mくらいのところで、なぜか急にピタッと止まると、それからゆっくりと地上に向かって垂直に降下し始めた。


――あの隕石みたいなの、一体なんなんだろう? あの動きからして、隕石……じゃないよね。……ドローンとか? でも、形はまるっぽくて隕石みたいに見えたし……


 どうやら学校の奥にある裏庭の方に降りていったように見える。


 周りを振り返ると、今日は朝早く家を出たせいか、ナミ以外に宝石女子学園の生徒は一人もいなかった。他に通勤途中の会社員が数人歩いていたが、誰も隕石には気づいていないようだった。ナミは思い切って誰かに声を掛けてみようかと思ったが、みんな忙しそうに見えたし、それになぜかこれは絶対に誰にも言っちゃいけないような気がして、とりあえず今日の終業式が終わったら、すぐに裏庭の方に行ってみることにした。


 ――それからは特に何もなく、ナミは学校に着いて教室に一番に入ると、その後教室にはクラスメイトも徐々に集まって、それから終業式もつつがなく終了し、ほぼすべての1年生が来月から2年生になることも決定したみたいだ。クラスメイトも学校から帰る準備をしていて、ナミも帰る準備をしながら、みんなが教室から出て行ったらバレないようにすぐに裏庭の方に行こうと、席に座りながらクラスメイトの様子を伺っていた。そうこうしている間も、「2年もナミと同じクラスだったらいいな。」とか、「春休みどっか遊びに行こうね。」とか、クラスメイトが帰りがけに彼女の席に寄っては、次々に彼女に声を掛けてから教室を出ていった。


 最後に、一人のクラスメイトがナミの席に近づいてきた。


「ナミ、一緒に帰ろう。」

 彼女はやさしそうな笑顔でナミに声を掛けた。


 彼女の名前は、奈野原なのはらホタル。


 ナミとは小学生の頃からの幼馴染で、高校も同じで同じクラス、そしてナミの一番の親友である。背は普通くらいで、明るめの茶髪にふんわりとしたカールボブが、くりっとした瞳の彼女にはよく似合っている。それとさりげなくアクセントにつけた髪留めが、彼女のセンスのよさをよく表している。


 ナミが正統派美人だとしたら、ホタルは男女を問わず庇護欲を掻き立てられずにはいられない、かわいさの極みにある女性とでもいったら正解だろうか。実際に彼女は学校の外でティーン向けの雑誌でモデルのような仕事をして、同世代に非常に人気なのだが、彼女自身は、実は内気で目立つようなことが苦手なので、本当はあまりやりたくないらしい。彼女は昔から絵を描くことが好きで、将来はファッション関係のデザイナーとか裏方の仕事をするのが夢で、その勉強を兼ねてという意味合いで、なかば成り行きでモデルの仕事を始めることになったそうである。


「あっ、ホタル? ……あの……ごめん。今日はちょっと用事があって……一緒に帰れないんだ。」

 ナミは裏庭の隕石のことが気になって、ホタルのことをすっかり忘れていた。


「えっ? そうなんだ……。じゃ、仕方ないね。うん、また帰ったら連絡するね。」


 ホタルは、お互いに用事がない時は、いつもナミと一緒に帰ってて、ナミが今日何か特別な用事があるとか言ってなかったのに、直前に断られたのは多分初めてな気がして、少なからずショックを受けた。でも両手を合わせて本当に申し訳なさそうに謝るナミを見て、本当によっぽどの用事ができたんだろうな、とすぐに納得すると、さびしいけど今日は一人で帰ることにした。

ご読了ありがとうございました。続きが気になった方は、

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