8. 誕生パーティの魔法少女
2026年1月1日連載スタートしました。
毎日朝8:00投稿予定しております。
「……黄色だ。」
ひばりは残念そうにぽそっとつぶやいた。
「そうなんだよ。黄色なんだよ、支子家は。」
「そう、黄色なのよ。」
ひばりのつぶやきを聞くと、耀司と洋子が嬉しそうに同意した。
(なんだ……黄色なんだ。もし自分が魔法少女になれるとかいうんだったら、ウソでもいいから桃色がよかったな。)
ひばりは心の中でそう思った。
耀司は、そんなひばりの様子などまったく意に介さずに話を続けた。
「そういえば……近所の薄珊瑚さん家あるだろ? あそこの娘のつかささん。ひばりと同じ歳で、昔一緒によく遊んでたからよく知ってるだろ? 実はつかささんも魔法少女らしい。それで薄珊瑚さん家は代々桃色なんだそうだ。」
「そう、桃色なのよ。」
「えっ!? つかさが桃色!?」
この話は、ひばりにとって自分が魔法少女云々よりもショックだった。
幼少の頃からブレず今に続くまで永遠に桃色推しのひばりであったが、実は幼き頃に、ひばり、つかさ、プル、ミア、ルーシーの幼馴染の五人組で魔法少女ごっこを初めてやろうとなった時に、ひばりとつかさのどちらが桃色の魔法少女をするかで、つかさとケンカになったことがあったのだ。その時は、先ほどのようにひばりが逆ギレして、泣き叫んで、ゴネにゴネたことで、つかさも渋々桃色を譲ってくれて、彼女自身は黄色の魔法少女を演じることになったのだが、実は心の中では、本当は桃色の魔法少女は自分よりつかさの方が似合っているように感じている自分がいて、すごくイヤな気持ちになったのだ。だから今、つかさが桃色の魔法少女だと言われて、どこかその時の答え合わせをしているような気がして、またあの時と同じようなイヤな気持ちになってしまった。
「つかさが桃色の魔法少女だったら……プルやミア達も5色の魔法少女なの?」
ひばりは、こんな作り話もうどうでもよかったが、少し気になったので耀司に聞いてみた。
「いや、薄珊瑚さん家が桃色なのは確からしいんだけど、実はそれ以外は知らないんだ。」
「そうなの。それに、全部で何色魔法少女がいるのかもわからないのよ。」
「ふーん。それでこの話は終わり? そろそろ『子猫の魔法少女マジカルキティ』が始まる時間なんでテレビ観たいんだけど。」
ひばりはこの話題にはもう興味がなくなって、これ以上話もしたくなかった。ひばりには、それよりもこの後すぐ始まる予定の『子猫の魔法少女マジカルキティ』の第1話が、なによりも大事だった。
耀司は何か他に話し忘れたこととかなかったっけ? と、しばらくの間一人考えこんでいたが、やがて何かを思い出したようで、突然言葉を発した。
「あっ! そうそう。一つ大切なことを言い忘れてた。六芒星。六芒星だ!」
「ロクボーセー?」
「そう、六芒星だ。魔法少女になるには、その魔法の石の他に六芒星が必要なんだ。魔法少女が正式に魔法少女になるには、その魔法の石を手に入れて、それから六芒星を空中に一筆書きする必要があるんだ。それが終わると、ひばりは晴れて魔法少女の仲間入りだ。」
「そうそう。だから正確に言うと、今のひばりは魔法少女としてはまだ半人前ね。」
「……わかったよ。それじゃ部屋に戻ったら一応書いとくよ。」
ひばりはとりあえずそう言ってはみたものの、六芒星なんて本当に一筆書きできるのだろうか?
「あっ、それと最後に言っとくけど、魔法少女になったからといって、別に魔法が使えるようにはならないし、特に何も変わらないみたいだから安心しろ。鳩子ちゃんの時もそうだったようだから。……まあ、なんにせよ、ひばりが小さい頃からなりたかった魔法少女に、形だけでもなれたんだからよかったじゃないか。」
「うんうん。それに期待しないでねって言ってたでしょ?」
「うん。確かにその通りだった。」
ひばりは洋子の言葉に激しく同意すると、先ほど耀司から手渡された魔法の石を片手で転がしながら、『子猫の魔法少女マジカルキティ』の第1話を観るため、リビングへと向かった。
「お姉ちゃん、ドンマイ。」
万智は台所から少しさびしげな姉の後ろ姿を目で追いながら、今はそれだけ言うのが精一杯だった。
ひばりはリビングのテレビが一番いいポジションで観ることができるソファに腰掛けると、テレビのリモコンのスイッチを入れた。その後、テレビからは2、3分の間、関係のないCMが流れて続けたが、その間に、万智、洋子、そして耀司の順で、家族全員がリビングに集まった。先ほど魔法少女の話をしていたばかりだから、皆やはり少しは気になるのだろう。
そして7時ジャストになると、
『5色の魔法少女:子猫の魔法少女マジカルキティ』がとうとう始まった。
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次回 「誕生!! 魔法少女」




