あげたがり義妹の歌~あげたがりが千里を走りスパダリに届く件
はい、私には義妹がいます。名をメアリーと言います。今回、お茶会に出席させなかったのはとても小賢しいからですわ。
とても、生意気で『あげたがり義妹』ですわ
「『あげたがり義妹』ですか?」
「ええ、殿下、例えば・・・」
☆☆☆回想
「お義姉様、あげたいの~!蝶蝶のブローチあげるの~」
「まあ、もらえないわ。幼稚だわ」
「ウワ~ン、お義姉様に物をあげて精神的優位性を感じたいの~!」
「まあ、何ですって!」
生意気にとんでもないことを言いますので、私のドレスや宝石をあげました。
「うわ~ん。お義姉様の方が圧倒的精神的強者なの~!」
「フフフフフ、思い知ったかしら」
それだけに留まりませんわ。
あることないこを言いふらしますの。
門から外に向かって、オモチャの太鼓を叩いて野良猫と一緒にとんでもない嘘の歌を歌うのです。
トンコドン♩
「あ~、お父様とお母様が事故にあってから♩伯父様達が来たの~、今までの食事は伯父様一家にあげたの~♩私とニケちゃんはお粥なの~♩伯父様たちにお肉とお魚をあげたの~♩」
「ミャン!ニャー!」(そうよ!おかしいわ!)
ドンドコドンドン♩
「おい、やめさせろ!」
お父様が大慌てでやめさせましたわ。
それから、お食事を元に戻しましたわ。
元々は新たに家門を継ぐのはお父様ですわ。お父様が嫡子でしたもの。それが今回の事故であるべき姿に戻っただけですわ。
でも、メアリーの悪口は止りませんわ。
♩ドンドコドンド♩
「お父様とお母様が事故で亡くなって伯父様が来てから家庭教師をお義姉様にさしあげたの~!メアリーはあげたがり義妹なの~」
「ミャー!ニャン!ニャー!」(狩りの仕方を私がおしえあげるわ!)
ドンドン♩
メアリーはメイドになるのですから、高等教育は不要とお父様が家事手伝いをさせました。
それを、さも、自分があげたように宣伝をしたので、家庭教師を戻しましたわ。
メアリーの父は亡くなった当時、メアリーは6歳なのに、専用の御者と馬車を用意していましたわ。溺愛じゃなくて甘やかしですわ。
ええ、使用人達を解雇し、新しい使用人達を入れメアリーを監視させましたわ。
それから、2年たち。殿下がこうして園遊会をお開きになる年に、メアリーは監視の目を盗んで不吉な歌を歌いましたわ。
ドンドコドン♩
「お義姉様に総領娘の座をあげたの~!お義姉様は平民から貴族になりたいの~!殿下に気に入られようとしているの~!でも、戸籍上は平民なの~」
「ミャン、ニャニャー!」(猫として抗議するわ!)
ええ、ついにお父様の堪忍袋の尾が切れて
「屋敷を出て行け!山小屋に行け!」
と領地の猟師小屋に追い出しましたわ。
・・・・・・・・・
「殿下、安心して下さいませ。私こそが正統なジータス伯爵家のエレナでございます。一度、領地に来て頂ければ、幸いでございます」
「・・・うむ。そうなるであろうな」
「キャ、本当でございますか?父に知らせますわ!」
「では、また、エレナ嬢」
・・・・私はエレナ嬢と別れ、母上の元に訪れた。
東屋で、メイドとともに我の行動を監視していた。
「これ、マーカスよ。感心せぬな。あれは、平民エレナ嬢、ジータス伯爵の兄の娘ではないか?確か、公金横領で伯爵家を廃嫡になった男の娘だと調査にでておるぞ」
「さすが、母上、このわずかな時間で調べられましたか。実は、当人達はそう思っていないようです。今、一度、貴族院に問い合わせてみせます」
「それも良いが、早く婚約者を見つけて、母を安心させてもらいたいのう」
「申訳ございません」
今日の園遊会は私の婚約者を見つける催しだった。
私は16歳、下は8歳下の8歳までの女子は参加が必須だったが、招待状ではメアリー嬢で送ったが、代わりに義姉と名乗るエレナ嬢が来たから話を聞いたのだ。
「おそらく、乗っ取りであろうな」
私はエレナ嬢との約束どおり領地を訪れた。
もちろん、兵と調査官を連れてだ。
伯爵邸に赴く前に、メアリー嬢が住んでいるという山小屋に向かった。
途中池があり。毛糸を池に投げ込んでいる幼女を見かけた。
猫が傍らにいる。
釣りのごっこ遊びか?
あれがメアリー嬢であろう。
私は一人で前に進み声をかけた。
「ご令嬢、釣れましたかな?」
「王子がつれたの~」
「ほお、分かっていたか・・・」
後ろを振り向かずに答えた。
私は残酷な事実を述べた。
伯父夫婦が伯爵夫妻を殺害した。金の無心をしていたそうだ。
その後、後見人と偽り屋敷に入った。
「エレナお義姉様は知らないと思うの~」
「そうはいかん・・・修道院にいってもらう」
「分かったの~、っと、釣れたの~!」
「ミャアー!」(やったー!)
遊びで釣りのふりをしていたのではないのか?
毛糸の先に針がついている。エサはついていない。毛がついているようだ。
「フライフィッシングなの~、メアリーはニケちゃんのお母さんなの~、ご飯をあげるの~」
「ふらいふっしんぐ?」
「でだ、これから屋敷に行き伯父夫妻を拘束する。メアリー嬢もついてくるのだ」
「分かったの~」
屋敷についたら、すぐに、エレナ嬢に修道院に行くように命じたが、
メアリー嬢が気に入ったから伯爵家の総領娘にしたと思ったようだ。
少なくともエレナ嬢はそう信じたようだ。
「そ、そんな幼女趣味ですの?メアリーはいつも私をいじめるわ!殿下目を覚まして!」
罪状を話したが理解していないのか、それとも信じたくないのか、とかく話を聞かない。
エレナの父母は刑務所だ。
メアリー嬢は解雇になった使用人を呼び寄せ。8歳なのに領地経営を始めた。
その派手そうな容姿と裏腹に実直に領地経営をする。
それから数ヶ月後、兄上に男子が生まれた。スペアとしての我は王宮には居場所がなくなった。
だから、時々、メアリーの領地を訪問することにした。後見人としてか、兄としての心持ちか分からない。
また、メアリーが釣りをしている。
「メアリー嬢、釣れましたかな?」
「自分が釣れそうなの~」
「そうか・・・」
「ミャン!」
ここは居心地が良い。
我はまだこの領地に通っている。
最後までお読み頂き有難うございました。